ある転生ヒロインへのインタビュー
口の悪い転生ヒロインちゃんが断頭台に送られる前に色々教えてくれます。
設定はふわっと。いつも通り書きたいところだけ。
うーん……なんて言ったらいいのかなぁ。私にはね、みんなには見えないものが見えてたの。ううん、知っていたって言った方がいいかな?
だから、第一王子が本当は王妃様と庭師の間にできた子どもだってことも知ってたし、側近の彼等がそれぞれ悩みとか秘密を抱えていることも、ぜーんぶ知ってた。
どうしてって、知ってたものは知ってたのよ。前世の記憶だとか、この世界は別の世界のゲーム……遊戯?の為の物語で~とか。あなたそういうの、信じてくれる人?
でしょうね。誰も信じないわよこんな話……それこそ、私と同じ転生者じゃなくちゃね。
せっかくだから、ひとつひとつ暴露していこうか?学年主席の彼は実のお姉さんへの恋心を拗らせてて、私の顔がお姉さんに似てるから好きになるの。バッドエンドだと、私もお姉さんと仲良く剥製に……言ってて気分悪くなってきちゃった。
で、護衛騎士の彼は殺人衝動を抱えてる。小さい時のトラウマが原因なんだけど、私が王子ルートを選んだから数年後には破滅しちゃうわね~御愁傷様。
あ、魔術師のショタは本当は千年生きてる大魔道師だから怒らせない方がいいわよ。
なるべく丁重に扱って、この国に長く居てもらえるように頑張ってみたら?
……って、あなたに言ってもしょうがないか。
ん?なんだかあなた美味しそうな匂いがする。クッキー?ふぅん。ねぇ、それ頂戴。いいじゃない、独占取材を受けてあげてるんだから。
ふふ、ありがとう。あーあ、最後の晩餐がクッキーかぁ……これって手作り?あなたのお母さんの?そっか、愛されてるのねぇ。
えーっと……どこまで話したっけ?ああ、第一王子の話?
彼、最初から知ってたのよ。自分が国王陛下の息子じゃないって。だって、王妃様は明らかに庭師のことを優遇していたし、そもそも王子の名前だって庭園に沢山植えられてる花から取られたものなの。
国王陛下がどうだったか?さぁ、でもなんとなくわかるものなんじゃない?愛のない結婚だっていっても、流石に……ねぇ。
私のおかげで無事に知れ渡って、側妃様から生まれた第二王子が王太子になるんだから、感謝してほしいくらいよ。結果第一王子は王族じゃなかったんだから、不敬罪は適用されない筈じゃない?ね、あなたもそう思うでしょう?
……だって彼ってば、私がどれだけフラグを建てようと思っても上手くいかないんだもん。不仲の筈の悪役令嬢とラブラブだし、絶対バグってるわよこの世界。
え?あぁ、公爵令嬢のことよ。そう、第一王子の婚約者のね。
最初はあの人が転生者なのかなーって思って警戒してたんだけど、まさか第一王子がそうだなんてね。失敗しちゃった。
ゲームに忠実に可愛いヒロインしてたから、あっちもギリギリまで気が付いてなかったみたいだけど。ふふ、そのおかげで一矢報えたんだから良しとするわ。
国王陛下と王妃様も参加してる卒業パーティーで、あんたなんて本当は庭師の息子の癖に!ってバラしてやった時のあいつの顔ったら……!今までのどんな表情よりそそられたわ。やっぱり可哀相は可愛いってやつよねー。
でも、もう少し上手い対応があったと思わない?まさかバカ正直に「何故貴様がそれを……!?」なんて言われるとは思わなかった。
一途に婚約者を愛してたのは間違いないんだろうし、私と結ばれたくないって気持ちは本物だったんだろうけど……致命的なくらいバカだったのね、彼。
それともアドリブが苦手なタイプだったのかしら?それにしたって、ねぇ?
──あ。
残念、もう時間みたいね。クッキーありがとう、美味しかった。なんか懐かしい味だったな……昔、私もお母さんに作ってもらったっけ。へ?いやいや違う違う。この世界での母親は娼婦崩れの愛人だもん。手作りクッキーとか無理無理。
結局聞きたいことは聞けた?あは、そうよねぇ……さっぱりわかんないって顔してるもん。
最期に一つだけ教えてあげるわ、隠しキャラの辺境令息さん?
私、あなたが一番の推しだったの。記者になりたくて家を飛び出すつもりなんだろうけど、私との面会に家の力を使ってるようじゃ無理ね。諦めて家を継いだら?
……そう。でも、あなたの夢を叶えてくれるヒロインはもういないのよ。
どこまで足掻けるか、地獄から見ててあげるわね!
ま、案外またすぐに何かのヒロインに転生できちゃうかもだけど。
それじゃ、
死んでくるわね。
なるべく苦しまずに逝けることを祈ってて。
サヨナラ、世界。
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