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底辺から掴み取る、自由でおいしい毎日  作者: KAY
第三章 フィリオーネ編
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イエティ

トップギアで走るリンは、パララクルの街を横目に、一気に北の山脈へと突っ込む。

生い茂る木々をすり抜け、森林限界に到達し、あっという間に氷河の広がる場所へとたどり着いた。


どこだ?どこにいるんだ?イエティは。

リンは迷うことなくさらに奥へと走っていく。

「おじさん!いた!」


イエティ、いる?隠れて見えないけど?!

視界にとらえたのは、三体の土の塊、いや、石?

これ、ゴーレムってやつか?


イエティを襲っていたのは、イエティと同じくらいの背丈の三体のストーンゴーレムだった。三体がイエティを取り囲み、ぼっこぼっこ殴っているではないか。


「このぉ! 3対1とは卑怯な!」

「たすけるよ!」


突撃するリンと、リンの背でコーゲイさんから借りた剣を掲げる俺。

「ゴーレムって剣で切れるのか?まあいい、行くぞ!」

「わるいやつー!」


リンが風魔法を繰り出し、一体のゴーレムの胴体が真っ二つに切られる。

俺も剣を掲げて飛び上がり、もう一体のゴーレムを切り裂いた。

スパッン!

おお!切れた!さすがコーゲイさんの剣。


二体のゴーレムがばさりと倒れると、残りの一体が俺らに気づき、腕をぶんぶんと振りまわして俺らを襲いにかかった。

ギリギリのところでかわす俺。

あっぶねー。こんな固い腕で殴られたらひとたまりもないぞ。


「カイトをおそうなー!」

リンの怒りの一撃が、最後の一体に降り注ぐ。

風が空を切り、縦真っ二つに切られたゴーレム。

どさっと倒れ、そして石の塊となった。

さすが、リン!


「イエティは?」

「おじさん!」


横たわる三体のゴーレムの向こうに、イエティが座り込んでいた。

「大丈夫か!」

「おじさん、だいじょうぶー?」


座り込んだイエティはお腹を覗き込んでいる。

お腹から赤い血が流れているじゃないか!


「どうしよう!」

「リン、落ち着け。薬あるから!って、この薬は魔獣にも効くのかな?」

水晶苔の薬がイエティに効くのかどうかさっぱり分からないが、試さない手はない。


薬の瓶を取り出し、イエティの傷口に振りかける。

と、傷口が泡立ち、みるみると傷がふさがれていった。

おお!魔獣にも効くんだ、この薬!すごいな!


イエティはと言えば、傷口がふさがれていく様を、目を見開いて見つめている。

もともと大きなぱっちりお目目がさらに大きく開かれる。

「もう大丈夫だよ」

「だいじょうぶだよー」


「ぐるるるぅ」

ん?ありがとうって言ってるのかな?


傷口がふさがるのを確認したかのように、イエティがゆっくりと立ち上がる。

なにするのかな?と思ったら、倒れたゴーレムの頭をゴンっと叩き割った。


おぉぉぉ!!

クリックリのかわいい目で、なかなか激しいな!

とっくに倒れ、息絶えているゴーレムに仕返しか?


と、割れた頭から何やら取り出すイエティ。

その手には直径2cmほどのコバルトブルーに輝く石が握られていた。

これって魔石?魔石だ!


全身が石でできているゴーレム。

使える素材はないと思っていたけど、魔石はあるんだな!

「ぐるるるぅ」

俺に魔石を差し出す。


「ありがとう。もらっていいの」

「ぐるるるぅ」


くるりと体の向きを変え、残り二体からも魔石を取り出すイエティ。

もう一つの魔石はターコイズブルー、そしてもう一つはエメラルドグリーンだった。

魔石ってそれぞれ色も違うんだなー。


それらの魔石も受け取ると、エメラルドグリーンの魔石を受け取った瞬間、その石が強い輝きを放った。

俺の体をグリーンの光が包みこむ。

うぉぉぉ!

何だ、何だ?何が起こった?


イエティもその様子を見て、目をぱちぱちさせている。

「これ、3つとももらっていいの?」

何が起こったのかよく分からず、首をかしげながらもイエティに尋ねる。

「ぐぅ」

YES、かな?

持って帰って調べてもらおう。

魔石を収納にしまうと、光も隠れた。

ああ、よかった。ずーっと光っていたらどうしようかと思ったよ。


傷口がふさがったとは言え、傷を負ったばかりのイエティ。大丈夫かな?

「ねえ、お腹すいてる?何か食べる?」

「たべるー!ホットドッグがいい!」

いや、俺はイエティに聞いたんだけどね、リンさんや。


と言いつつ、リクエスト通りホットドッグを取り出す俺は相変わらずリンに甘い。

リンとイエティにホットドッグを3つずつ出してやる。


「いっただっきまーす」

がつがつと食らいつくリンと目の前のホットドッグを不思議そうに見つめるイエティ。

そしておもむろに一つつまみ上げ、口に運んだ。


ぱくり。

一口食べたイエティの全身の毛が逆立った。

「ぐぉぉぉぉぉ!」

おお!これはアリかナシか?


大きな目をぱちぱちさせると、ホットドッグを一気に口に放り込む。

続けて残りの2本もバクバクと食べるイエティ。

その顔は……、ああ、初めてホットドッグを食べたあの時のリンの顔だ。

気に入ってくれたようで何より。


この先、魔獣の肉や魔石を持ってイエティがパララクルの街に降り、ホットドッグと交換するようになるなんて、その時の俺は想像もしていなかった。


「さ、リン。帰ろうか」

リンにまたがって歩き始めると、後ろからイエティがついてくる。

「送ってくれるの?」

「ぐるるるぅ」

「じゃあ一緒に行こう」


イエティに送ってもらい山を下りる。

パララクルの街の入り口ではブラッドとロッド、リリーとその両親が待っていた。

俺とリンの後ろにいるイエティを見て固まる全員。


「まさか、本当にいるとは。この目で見られる日が来るとは……」

ブラッドが感慨深げにつぶやく。

「うわぁぁ!真っ白でかっこいい!」

ロッドがきらきらした目でイエティを見つめる。


「三体のゴーレムに襲われていたんだ。もう大丈夫だよ。イエティ、ここまで送ってくれてありがと」

「おじさん、またねー」


イエティは俺たちがブラッドと合流するのを見届け、片手をあげて「ぐおぉぉぉ」と挨拶しては山へと戻っていった。

「ばいばーい!」



「本来、ゴーレムは西に住む魔物だ。この辺りに出没するなんて聞いたことがない」

俺の報告を受け、ブラッドが難しい顔をする。


「何かの理由で西を追われてきたんだろう。しかし三体で一人のイエティを襲うとは許せん!」

俺が怒りを滲ますと「まったくだ、北の山脈の守護神を!」とブラッドも同意する。


俺たちは合流した後、フィリオーネ城に来ていた。

「三体のゴーレムからそれぞれ魔石が出たんだけど、一つだけ異常に光る魔石があったんだよな」


収納から3つの魔石を取り出して、ブラッドに見せる。

やはり取り出した瞬間、エメラルドグリーンの魔石だけ強く光る。


「すごいな!」

そう言って俺から魔石を受け取るブラッド。

その瞬間、まぶしい光がしゅんっと消えた。

あ、あれ?


「やっぱりそうか。この魔石はカイトの魔力との相性がすごくいいんだ」

ブラッドが一人納得しながら教えてくれる。

「え?そうなの?そうしたら、この魔石で剣を作ったら俺って最強?」

「だな、キマイラを倒しても折れない最強の剣ができるぞ」


そうかー。やっぱり魔石との相性が大事だったかー。

「一度メイダロンに戻って、コーゲイさん、あ、メイダロンの武器屋のおやっさんなんだけど、コーゲイさんに聞いてみるよ」


「コーゲイさんか!彼なら確実だな!」

え?あれ?ブラッドもコーゲイさんを知ってるの?


「アーノルドから聞いてないのか?コーゲイさんは元ビルケッシュ領の副騎士団長で、俺とアーノルドの剣の師匠だ」

「だからかー。アーノルドもコーゲイさんには頭が上がらないって感じだったんだよなー。でも何でそんな人がメイダロンみたいなちっちゃな町で武器屋なんてやってるんだろう?」


ああ、それはな、とブラッドが話をしてくれた。

コーゲイさんの奥さんが重い病気になり、副騎士団長の給料より、彼ほどの腕なら魔獣を狩って売ったほうが稼ぎがいいからと、あっさり騎士団をやめたんだそうだ。

奥さんの生まれ育ったメイダロンに居を移し、毎日魔獣を狩っては売り、サマンサさんの店で奥さんの薬を買う日々。


「コーゲイさんの奥さんは毎日コーゲイさんに料理を作って、ラブラブだよ」

「ああ、すっかり元気になったって聞いてるよ。よかった、よかった」

その後も狩りを続け、ささやかに生きていくには困らない稼ぎを得た二人。

今は売れない武器屋を営みながら、二人で寄り添って生きているそうだ。


「謎だったんですよねー。メイダロンで武器屋をやったって、買いに来る人はひと月に一人いるかいないかじゃないかなって」

「売れなくてもいいんだろ、コーゲイさんは」

そんな生き方、それもいいよな。


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