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底辺から掴み取る、自由でおいしい毎日  作者: KAY
第二章 王都ザイオン編
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ただいま、メイダロン

「くっそぉ、せっかく俺が大富豪になれたんだから、カイト革命なんか起こすなよ!」

「ふっふっふ、甘いなシモン。嫁を貰った俺は、いつまでも大貧民でいるわけにはいかないのだよ」

「関係ねーだろ、現実の嫁はさ!」

「おめーら、晩メシ食うのか食わねえのか!毎晩言わせんじゃねぇ!」


一足先にメイダロンに帰ってきた俺とリンは、戻ってきた日常を過ごしている。


ひと夏越えてクリストフたちの腕も上がり、お互い狩りの結果は上々だ。

冬に備え、俺とリンはスノウラビットやイーストダックを大量に仕留めた。


イーストダックの楽園は、あれほど大量に狩ったのに夏の間に繁殖をしたのかほぼ元の数に戻っていた気がする。今俺の収納にはボアや牛に加えてうさぎと水鳥が大量だ。

これはコリンバースとパララクルで買い取りに出そうと思う。

加工して売りに出せば領の収入にもなるからさ。


狩りの後はこうやってゼットンさんの宿の食堂でカードゲームをして過ごす。

そしてだいたいがゼットンさんに怒られて終了するのだ。


今日の夕食は、酢豚に白飯、かきたまスープ。

俺が持ち込んだ調味料と米を、少しのアドバイスだけでここまで使いこなすゼットンさん。神かよ!あ、魔法使いだったね。


「「「「「いっただっきまーす!」」」」」

「うんめぇ、このボア肉と米の組み合わせ、何杯でもいけるな」

「ホント、ホント。いつも食ってるボア肉が、高級料理になってる!」

「ベレン、野菜のこすなよ」

酢豚と米に食らいつく4人。まあ、酢豚が高級料理かどうかは微妙だが。


「おいしーね!これ、はじめてたべるね!」

リンはこれまで食べた料理を全部覚えているのだろうか。

食欲の権化、恐ろしや。


「初めてなのか?カイトに教えてもらったレシピだぞ?」

不思議そうに俺を見るゼットンさんに、笑ってごまかすしかない俺だった。


夕食後は俺が王都から持ち帰ったつまみで、酒を飲んでまったりするところまでが日課である。今日は魚のすり身を焼いたかまぼこ的なもの。醤油を添えて。


「この黒いのって、前にうちでトウモロコシに塗って焼いたのと同じだろ?」

「え?そうなの?万能じゃん!すげー」

さっきの酢豚にも使ってたぞー、というゼットンさんの言葉に更に驚く4人。

よしよしよし、醤油普及作戦、順調だ。俺の周りの人限定だが。


「カイトは嫁さんと合流したらフィリオーネへ行くんだろ?この冬はフィリオーネで過ごすのか?

「いや、ヨヒトの養鶏場とブラッドの製紙工場が無事に稼働して、冬を乗り切れそうなところまで見届けたら王都に帰るよ。本格的な冬が始まる前に」

「ってことは2、3か月フィリオーネで過ごすのか」

「まあそうなんだけど。ずっとヨヒトん家ってのも微妙だし、ちょくちょくメイダロンに帰ってこようかなって」

そっか、嫁の実家っていうのも気が休まらないもんだよな。


クリストフの言葉にうんうんとうなずく俺。

ヨヒトの家は俺とサナユナが泊まれるように、離れと風呂を増築予定だ。

でも、離れを造ったからと言って、やはりサナユナの母と兄がいる場所だ。

なんというか……、落ち着かないもんだよな。


「俺たちはこの冬、メイダロンで過ごすことにしたんだ」

「真冬に野宿はきついからなー。ここできっちり稼いで、冬の間も温かい部屋でゼットンさんのうまいメシを食う!それが今の俺らの目標だ」

ヨークとシモンがこぶしを握って決意表明する。


いいね、それ!

寒さに凍えず、ひもじい思いをしない。

人が生きていく上での目標なんて、結局はそんなもんなのかもしれない。

そしてその場所がゼットンさんの宿なら最高だ。


クリストフたちがしばらくメイダロンにいるのなら、なおのこと頻繁にこっちに来てしまいそうだ。リンの足ならフィリオーネから2、3時間だし。

いや、サナとユナのことは大好きだよ??

だけど、それはそれ、これはこれ。

ヤロー4人と一緒に過ごす気楽さは、また別ものなんだよな!


「部屋はどうするの?俺ら4人が一番広い部屋使っちゃってるけど」

そうなのだ。

ゼットンさんの宿で一番広い部屋、といってもベッドがたくさんあるだけだが、をクリストフたち4人が使っている。


「俺とリンは今までどおり3階の一人部屋を使うよ。サナとユナは二人部屋で」

えー?それでいいの?俺ら、部屋代わろうか?

そう言ってくれるけど、ここはある意味俺の実家。

そんな場所でサナユナと同じ部屋っていうのも、なんかその……、気まずい。

帰る場所が増えたのはうれしいことだけど、あちこちなんだか微妙だなぁ。



「ふわぁぁ、ようやく到着しました!」

「ここがメイダロンですね!旦那様の第二の故郷」


俺たちに遅れること一週間。

サナとユナがメイダロンに到着した。


いらっしゃい、待ってたよ!

サナとユナに紹介したい人がたくさんいる。


ゼットンさんとムーラさんはもちろんのこと、パン屋のジョージさんとルーシーさん、警邏隊のフランクさんとマーティン、武器屋のコーゲイさん。

あれ?誰か忘れてる。

おっと、買い取り窓口のブリックだった。

ま、ブリックは忘れてもいいか。


「はじめまして、サナさん、ユナさん。カイトの親友、マーティンと言います」

自分で親友って紹介するのはどうなんでしょ、マーティン。

とツッコみつつも、悪い気がしない俺。


「初めまして、サナと申します。旦那様がお世話になったそうでありがとうございます」

「ユナと申します。旦那様からお話をお聞きしていました」


うぉぉ、旦那様って!カイトが旦那様って!

なんだよそれ、うらやましいぞ!

マーティンが悶絶している。

悪いな、マーティン。俺はもう嫁を持つ身なのだよ。


それからメイダロンの町を順番にサナとユナを紹介して回る。

警邏隊、パン屋、武器屋、市場。

徒歩1分以内にすべてが集まるメイダロン。

屋台のスープ屋や雑貨屋まで回ったのに、あっという間に紹介が終わってしまった。


「これで全部。小さな町だろ?」

「居心地よくて素敵な町ですね!」

「みなさん、やさしく迎えてくれて嬉しかったです」

どんな状況でも誉め言葉を絞り出すサナとユナ。さすがだ。


「でももう一か所行きたいところがあるんです」

「旦那様が過ごした家を見てみたいです」

え?あそこ?見るべきものもないけど。


翌日。

徒歩2時間かけて元養父母の家に来ていた。


「ここで12年間、旦那様は過ごされていたんですね」

感慨深げにつぶやくサナとユナに、俺はすかさず訂正を入れる。

「いや?俺の部屋はあっち。あの小屋」


俺が指さす方を見てサナとユナが愕然としている。

「あれは……、あれを家というのでしょうか。私たちの実家よりひどいです」

「旦那様は真冬もあそこに……?」

うん、改めて見てみるとやばいな、この小屋。


「ま、終わったことだし。それより山へ行こうよ。湧き水の場所に案内したい」

ということで、俺たちはそこからさらに20分かけて山を登る。


最近はリンの背中で楽々移動してたからなー。

久しぶりにメイダロンと元養父母の家、そこから水汲み場まで歩くときついな。

相変わらずサナとユナは涼しい顔でこの距離を歩いている。

つえぇ。


「おっみずー!」

水汲み場に着くとリンは真っ先に駆け寄り、ぴちゃぴちゃと飲み始めた。


ここの水は水がめに汲んで王都まで持って行っていたけれど、やっぱり湧き出る水をそのまま飲む方がおいしく感じる、不思議。


「本当に、おいしいですね」

「旦那様の収納から出していただくお水も十分贅沢でおいしいと思っていましたけど、それを超えました」

うん、うまい、うまい。


「また水がめいっぱい汲んで帰ろう」

色々な街に行っても、結局はここの水が最高のお土産だな。


町よりも標高が高いこの場所は、紅葉の真っ盛りだ。

色づいた木々を見ながら王都から持って来たスティックパイを片手に、湧き水で淹れたお茶を飲む。

足元にはリン、隣にはサナとユナ。


もう二度とあの日々には戻らない。

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