表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
底辺から掴み取る、自由でおいしい毎日  作者: KAY
第二章 王都ザイオン編
68/78

秋到来

季節は秋。


もう少ししたら俺たちはビルケッシュ領とフィリオーネ領へ行く。

今度はサナとユナも一緒に。


それまでの間、俺たちは王都生活を楽しんでいる。

王都生活と言っても、俺とリンはしょっちゅう狩りに出かけているのだが。

日帰りの時もあれば途中で1、2泊することもあった。


リンと俺が本気で狩りをすると、その直後は王都中の肉屋が活気づくレベルだ。

ブラッドの製紙工場に投資した分は、狩りで取り返さねば。

(いや、投資先から回収しろよ)


魔獣狩りだけではない。秋の味覚、フルーツ狩りも楽しんだ。

通常、山に分け入ったからと言ってそんなに簡単にフルーツが見つかるものではない。

しかしそこは、リンの食い意地、もとい嗅覚がものを言う。


ブドウ、梨、栗、イチジク、そしてリンゴ。

見つけては「ひゃっほい!」と言いながらどんどんもいでいった。楽しい!

サナやユナ、モルガン一家など、お土産を喜んでくれる人がいるというのも幸せなことだ。


そしてこの秋、俺の発案でスペインバルに人気商品が誕生した。

それはスティックパイ。


今までもケーキ屋でカットしたアップルパイは売っていた。

しかし片手で食べられるスティックタイプのパイは存在していなかったようだ。

それをスペインバルで売り出したところ、たちまち人気になった。

飲みに来たお客さんだけでなく、スティックパイだけを買って食べ歩く若者も。


一番人気はもちろんアップルパイ。

秋の味覚、パンプキンパイも人気だ。

その他にカスタードパイ、ベーコンポテトパイなども次々と売り出した。


今では料理人たちがアイデアを出し合い、次々と新作パイが出ている。

それがどれもおいしい。

個人的にはクリームシチューパイが好きだな。


味噌醤油の普及作戦からは少しそれてしまっているが、これはこれで楽しい。

冬になればおでん作戦を展開するつもりだ。


「さすがはカイトさんですね。小皿料理とグラスワインの店というだけでも成功する要素しかありませんでしたのに、新作の人気料理まで作ってしまわれて」

ビクターさんがホクホク顔だ。頭の中でそろばんはじいてますね?

配当金、期待してますよー!


レンタルショップも開店に向けて動き出したが、ファッション分野で俺が役に立つことは何もない。事実、ビクターさんと新店長さんが打ち合わせをしている横で、俺は目をあけて寝てたよ。出資金だけは出すからあとはよろしく!



「栗ごはん炊けたわよ、ねえさん」

「まあ、おいしそう!旦那様とリン様が狩りの途中に食べられるよう、おにぎりにしましょうか」

「いいわね!でもちょっとだけ味見……」

「あ!ずるい!私も食べたいわ!」


どんどん日本食をマスターしているサナとユナは、月のうさぎやスペインバルの手伝いをしながら、厨房を借りて俺とリン用の料理の作り置きをしてくれている。


クリストフたちと合流することを知っているから、大鍋一杯の豚汁など、作る量もはんぱない。リンは目をキラキラさせて、出来上がる料理を見ている。

「リン、これは来週からのお出かけに持っていく分だよ」


えー?!悲しそうな顔で見上げるリン。

「ふふふっ、リン様。味見なさいますか?」

「栗ごはんにします?豚汁にします?」

「りょうほう!」

「「ですよねー」」


さっき昼メシを食べたはずなのに、結局4人で栗ごはんと豚汁の味見タイム。

ほっこりと炊かれた栗ごはん。今世はじめてだ。

少しの塩味とホクホクの栗の甘みが絶妙にマッチしてうまい!


「おいしーね!」

「ホントに。栗ってごはんに合うんですね」

リンの皿には味見とは言えない量の栗ごはんが盛られている。

尻尾フリフリで幸せそうだ。


「フィリオーネにいた頃、秋に栗を拾えた日は幸せな日だったわよね」

「山にある栗の木の場所を覚えてたもんね」

「アルバス兄さんも栗の木の場所を知ってるから、早い者勝ちで」

「そうそう、アルバス兄さんってば夜明け前に取りに行っちゃうんだもの、なかなか勝てなくて」


「アルバス兄さんって?」

サナとユナの会話に初めて出てくる名前だ。


「近所に住んでいるヨヒト兄さんと同い年のお兄さんです」

「兄と仲良しで、重労働奴隷も二人で一緒に行ったんですよ。アルバスがいなかったら耐えられなかったかもしれないってよく言ってました」

そうか、ヨヒトにもそういう友人がいたんだ。

みんな貧しいながらも支えあって生きているんだな。


「私はねえさんとアルバス兄さんが将来結婚するんだと思ってたわ」

ユナの言葉にドキリとした。

サナにはそういう人がいたのか?俺は二人を引き裂いた形なのか?


「ふ、ふーん。サナはその人と結婚の約束をしていたの?」

動揺がばれないよう、出来る限り平静に質問する。


「旦那様?」

サナが俺の眼を覗き込んだ。

「い、いや、その……」


「もしかしてやきもち焼いてくれたんですか?なんてね」

サナの言葉で、俺の顔に熱が集まるのが分かる。やきもち、なのかな?


「単なる幼馴染のお兄さん、ですよ。アルバス兄さんはヨヒト兄さんより先に結婚してますし」

そ、そうか。よかった……。って、何がよかったんだ?


「あれ?旦那様?なんかねえさんばっかりずるいです」

今度はユナが俺の顔を覗き込む。

おおっと、今度はユナがやきもち焼いてくれるのか?これは嬉しいぞ!


かわいい姉妹を嫁に迎えて両手に花のはずなんだが、いつもはサナとユナの仲が良すぎて、むしろ二人がイチャイチャしているように見える。

二人はリンのことも大好きだ。

サナとユナ、可愛いリン、時々俺、という構図である。おっかしーなー。

だからこうやって俺の気をひこうとしてくれるのはちょっと嬉しい。


旅支度と同時に、サナユナと一緒に進めているのが冬支度だ。

自由になって初めて迎える冬。


養父母の下で過ごす冬は寒く、ひもじく、つらいだけの季節だった。

今年の冬は温かい部屋で、おいしいものを食べて過ごせるのだ。

もちろんずっと引きこもりではリンが耐えられないので、狩りにも行けるようにコートやマフラーなど防寒具も買い足した。

サナとユナには自分たちの冬服に加え、実家の家族に持っていくための冬服も用意させている。


「冬が来るのが楽しみだなんてはじめてだな」

サナユナの冬服姿も早く見たい。


「私たちもです。フィリオーネの冬は寒さが厳しくて、薪を節約しながら薄い毛布にくるまって過ごしていました」

「わずかな野菜だけで、お腹をすかせながら春を待ってましたよね」


ポラリスの宿の俺たちの部屋には暖炉がある。

夏の間物置でしかなかった暖炉に、この冬は火をともそう。


「実家にもたくさんご配慮いただきまして、ありがとうございます」

「うん、でもまだこれから準備しないといけないけど」

「はい!頑張ります!」


フィリオーネでは、養鶏場の準備に加えてヨヒトの家も冬仕様にバージョンアップする予定だ。サナとユナの家族にも寒くひもじい思いをさせないぞ。


そうして万全に準備を整え、俺たちは出立する。

サナとユナは乗合馬車で1週間以上かけて、俺とリンは駆け足で一足先にメイダロンへ行く予定だ。


スズランとヒマワリのマジックバッグをそれぞれかけ、胸元には魔よけのネックレス。

カーディガンを羽織った秋服のサナとユナは今日もかわいい。

しばらくお別れだから目に焼き付けておこう。


「着替え持った?お水持った?お菓子持った?」

母親のような俺の声掛けに、サナとユナも苦笑いだ。

「もう、旦那様ったら。ちゃんと何度も確認しましたよ」


街道沿いに街が点在し、食べるものにも宿にも事欠かない旅だ。

それでもせっかく手に入れたマジックバッグ。

旅の必需品と共にロマンも詰め込んで旅を楽しんでもらいたいのだよ。


「じゃあ、メイダロンで会おう!行ってらっしゃい、行ってきます!」

「旦那様も!」

「行ってらっしゃい!行ってきます!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ