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底辺から掴み取る、自由でおいしい毎日  作者: KAY
第二章 王都ザイオン編
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200年前

200年前。

まだ隣国との戦争や内戦もあった時代。

ここ、アルダラム国には敗戦国から連れてこられた奴隷に加え、人身売買による奴隷も存在した。


王族と貴族は絶対的な権力を誇り、平民は虐げられ、奴隷の扱いは家畜以下だったという。それが当たり前の身分制度。

理不尽に苦しむ人たちは声を上げることもなく、日々生き抜くことがすべてだった。


そんな中、突如一人の奴隷青年が現れる。

神獣ペガサスを従えた神の使徒、ソウタ。


ん?ソウタ?またもや日本人っぽい名前……。

ここまでの陛下の話を聞き、心の中でツッコみを入れる俺。


それにしてもフェニックスを従えたリョージさんにペガサスを従えたソウタさんか。

どっちも空を飛べたんだな。

ちょっとうらやましいぞ。

まあ、リンのかわいさにはかなわないけどな!


今よりも魔獣の被害が大きかった当時。

ソウタとペガサスは圧倒的な魔力で、その脅威から国民を守った。

魔獣から守ってくれるヒーローの登場に、当時の国民は熱狂した。


しかし、すべての民は自分のために存在する、そう教えられ育てられてきた当時の国王は、感謝や尊敬という概念が欠落してる。ソウタに感謝をするどころか、「そのような下々のものの命など捨て置き、王宮にて世の警護をせよ」と理不尽な命令を下したのだ。


もちろん神の使徒、そして多分前世の記憶持ちであるソウタがそれに従うはずはない。

断固拒否、いや、まるで存在しないかのように国王の命令を無視したそうだ。

いいぞ、いいぞ、ソウタ!

自由、それが神の使徒と神獣が絶対譲れない価値観である。


命令を無視されたことなどない国王は怒り狂い、ソウタとペガサスを討つべしとの命令を下したが、まあ、倒せるわけないよな、普通の兵士にさ。

次から次へと派遣される兵士を軽くかわしていたものの、ソウタと神獣の堪忍袋の緒がぷつんと切れたのだろう。


ある日突然、国王は奴隷の中に放り込まれた。

身ぐるみはがされ、彼の身分など誰も知らない場所で。

マジか。なかなかの荒療治だな!


「世はこの国の王ぞ!不敬であろう!」

なーんて、薄汚れた奴隷が叫んだところで誰も信じない。

「何を言っているのだ、こいつは。奴隷はただ黙って働け!」


放り込まれた直後に殴られ、倒れこんだところをさらに蹴り上げられる。

生まれて初めて受けた暴力とその痛みに、王は一瞬にして恐怖を刷り込まれた。

逆らってはいけない、逆らえば殴られる、と。


うわぁ、身につまされるな、その話。

暴力や恐怖は、人からささやかな自尊心を根こそぎ奪っていくんだよ。


その日から国王は、奴隷たちと共に家畜以下の生活を強いられることになった。


早朝から深夜までの重労働。

手は豆だらけになり、はだしの足は傷だらけ。

どれほどまじめに働いても、理不尽に殴られ蹴られる日々。


食事は野菜くずを煮ただけのスープと、フスマを焼いたパンとも言えないもの。

病気で倒れれば見殺しにされるだけ。

生き残るためだけにただただ働く、そんな日々が1か月すぎ、彼の心も体も壊れかけたそんな時、またもや突然彼は王として王宮に戻された。


「陛下!ご無事で何よりです!」

「心配しておりました!お帰りなさいませ!」


ああ、自分は再び王座に戻ってきたのだな。

世は国王である。もう二度とあのような暴力を受けることはない。

ホッとする国王に、天からの声が降り注いだ。


「1年の猶予をやろう。それまでに奴隷と平民の待遇を改善せよ」

1年?それはさすがに無理だ!貴族たちの理解を得られん!

国王の抵抗に対し、天の声(それって間違いなくソウタの声だよな?)は非情にもこう告げたのだった。

「1年後、今度はお前の妻と娘を奴隷にする。よいな」


それだけは!

それだけは、勘弁してくれ!


この1か月、国王は奴隷たちの待遇を間近でいやというほど見てきた。

少しでも見目のいい女奴隷がどのような仕打ちを受けてきたか。

自分に優しくしてくれた女奴隷が自分の目の前で兵士たちの慰み者にされるのを、何もできずに耳をふさぐしかなかった自分。


自分の妻が、娘が!

それだけは何としても避けなければ!


それからの国王の働きは筆舌に尽くしがたいものだったそうだ。

「奴隷に何の配慮をする必要がありましょうか」

そう言い切る貴族たちに向かい

「神はすでにお怒りだ。明日はそなたが奴隷になると思え」


国の最高権力者という立場を最大限行使し、国王は1年で今とほぼ同等の制度を作り上げたんだって。やればできるじゃん。

まあ、国王も死に物狂いだったんだろうな。


「神は見ている」

それ以降、その言葉がこの国の正義を守っている。


「カイトも、横暴な領主を見つけたら奴隷に落としてよいのだぞ」

陛下にそう言われたけど、俺にそんな力あるのかなぁ。


リンにならできるのか?

このかわいい子がそんなえげつないことをするんだろうか?

もしかしたら、おだやかな今の時代だからこそリンのようなかわいい神獣が遣わされたのかもしれないよな。

うちのリンには、誰かを陥れるなんてまねはさせないよ!


奴隷に落とされた1か月間、当時の国王が最もつらかったのが水だったのだとか。

飲み水となるのはほぼ泥水。


そ、それはきつい。

俺は暴力も長時間労働も残飯以下のメシも経験済みだが、水だけは恵まれていたからなぁ。


奴隷制度の改革に続いて、当時の国王が着手したのが上下水道の整備だった。

全ての民に清潔な水を。それが彼の望みとなっていた。

特別な知識を持っていたソウタに頭を下げ、協力を得て、王都およびこの国の主要都市で上下水道を完備したのだという。その生涯をかけて。


「ねぇねぇ、カイトぉ。オムレツおかわり!」

陛下の話を聞き入っていた俺に、リンが催促をした。

おっと、すまん!


「リンさん、オムレツのおかわりですね?」

いそいそと動き出したビクターさんをユナが即座に制する。

「リン様、こちらにご用意してますよ」


いやぁ、リンがわがままな子に育たないか、パパは心配だよ。


陛下の興味深い話を聞き、王妃様にお初にお目にかかり、リンのかわいいリボン姿と、サナユナのドレス姿を久々に見られて、スペインバルオープン日は幸せに更けていった。


あ、ビクターさんもいたけどね。

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