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底辺から掴み取る、自由でおいしい毎日  作者: KAY
第二章 王都ザイオン編
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幸せの王都生活

「それは不愉快な目にあいましたね。そもそも男爵の部下ごときが、ワイバーンなど倒せるはずもありませんのに。我らがリンさんだからこそですよ!」


山を下りた俺たちはビクターさんの店に来ていた。

先ほどの顛末を聞いたビクターさんは「リンさんの手柄を奪おうとするとは不届きな!」とプンプンである。


「まあ、騎士団がまともで助かりました」

「そうですね、陛下はあんな感じですが、組織はしっかりしています」


そんな話をしながら、店の奥の部屋で俺とビクターさんはスペインバルの出資に関する手続きをしている。リンはビクターさんからお菓子をもらってご機嫌だ。

「リン、すぐに昼メシだからすこしだけだよ」

「はーい」


「お昼はどこにするか決めた?」

「うーんとね、やたい!」

いいね!初めて王都に来たサナとユナに思いっきり海鮮を食べさせてあげよう。


そのサナとユナは、俺からのミッションを受け、今ビクターさんのお店で買い物をしている。以前、男一人には必要ないと見向きもしなかった高級食器たち。

客用のティーポットとカップアンドソーサーを選ぶのが彼女たちの使命だ。


サナユナは高級食器の値段を見て倒れそうになっていたが、これからはこういう買い物も彼女たちの役目になってくる。慣れてもらうしかない。

なによりも、花柄だの金縁だの、俺には違いが分からんからな。選べない。


「ねえさん、これかわいい!」

「ホント、素敵ね。でも旦那様や男性のお客様にお出しするなら、こっちの方が落ち着いているかも」

「確かに。こっちはシックでいい感じ」

最初はビビっていた彼女たちも、なかなか楽しそうに選んでいる。


実際のところ客なんてくることはない。

一緒にお茶を飲む相手は冒険者仲間くらいだから、高級である必要はないのだ。

リンの好きなケーキを買い、サナユナと優雅にお茶を楽しみたいという俺の願望である。


迷いに迷ってサナとユナが選んだのは、ゴールドの縁取りに繊細なブドウの絵が施されたティーセットだった。ピンクの薔薇じゃなくてよかったよ。


ティーポット2つとカップアンドソーサー10客あわせて3200ギル払う俺に、サナとユナが引いている。

俺もちょっと引いてるけどな!木の食器なら全部で100ギルしないよな。


「よし、ちょっと歩くけど、海沿いまで行ってお昼にしよう!」

「やたい~!」


「海!海の近くへ行くんですか?」

「見たいです!海!」


初めての海、初めての海鮮の姉妹と、久しぶりの海鮮屋台のリンと俺。

テンション上がりまくりの3人と1匹。


「海老もホタテも生まれて初めて食べます。旦那様と出会ってから初めて食べるものばかりですね」

「このスープもお魚の骨から出汁を取ってるってお店の人が言っていました。本当に、おいしいがいっぱいの毎日です!」

サナとユナは一つ一つに驚きながら、おいしそうに食べてくれる。


おいしく気持ちよく食べてくれるのが一番だよな。

もっともリンと俺の方がたくさん食べているが。

「たこやき、おかわりする~」

安定の食欲、リン。


「ここなら私もリン様のお世話ができますね」

サザエの身を外してリンに食べさせながら、サナが満足げだ。


「私も!私もリン様のお世話がしたいです!」

負けじとユナはリンのためにたこ焼きを買いに走る。

リンがわがままに育ちませんように!


心ゆくまで海鮮を満喫した俺たち。

さあ、午後はリンとサナとユナへのご褒美タイムだ。


リンにはお菓子とリボンを。

サナとユナには新しい服を。


前回の反省から、服を買うのに高級店街へは行かない。

高ければいいというわけではないのだ。

目指すは庶民街。


庶民街でも、いやむしろ庶民街だからこそ、かわいい洋品店がたくさんある。

「どの店にする?」

俺の問いかけにサナとユナは戸惑っているようだ。

「もう十分買っていただきましたから」


いやいや、あれは応急処置だから。

今度はゆっくり好きなものを選んでほしいんだよ。


「じゃあこれは二人の仕事。サナとユナが着て俺が喜ぶ服を2着ずつ選ぶこと!」

仕事、と言われて目の色が変わるサナとユナ。

「かしこまりました!」「頑張ります!」

そうか、これからはこの手でいこう。


「商家で見習いしていた時にお嬢様が着ていらっしゃったワンピースに似てるわ」

「私たちが着ることなんて一生ないって思っていたのに、いいのかな?」


戸惑いながらも洋服選びを始めるサナとユナ。

だけどそこは、やっぱり女性。

かわいい洋服を見れば必然的にテンションが上がるようだ。


「お揃いにする?ユナ」

「いいね!このワンピースなんてどう?かわいくて動きやすそう」

「旦那様の横に並んでも見劣りしないかしら?」

いやいや、俺の方が見劣りするぞ!


きゃわきゃわと洋服を選ぶサナとユナを見て、俺は不思議な幸福感に満たされていることに気づいた。

誰かを喜ばせられるって幸せなことだな。

サナとユナを幸せにしてるつもりで、俺が幸せをもらってるんだな。


たっぷり時間をかけて吟味し、無地で縁取りのあるワンピースと、ブラウスにチェックのスカートの組み合わせ、それぞれ色違いのものを選んだ二人。


「エプロンはフリル付きで!」すかさず俺からリクエストを出す。

そこは譲れない。絶対かわいい!間違いない!


次はリンの番だよ!

お茶と一緒に楽しむケーキ、狩りの途中でも気軽に食べられる焼き菓子。

もちろん俺たちの分も含め、たくさん購入したい。


リンのためならば、がぜん張り切るサナとユナ。

いくつもの店をはしごして、何種類もの菓子を大量に買ってまわる。


一つ20ギルするケーキの大量購入にはさすがに震えていたが「リン様のため、リン様のため」と唱えながら買っていたよ。

俺から金を預かって支払いをすることも慣れてきたようだ。よしよし。


リンのリボンはちょうどいいサイズを売っておらず、端切れを買ってサナとユナが縫ってくれることになった。

裁縫セットなんて持ってないけど?


「旦那様のお洋服もところどころ破れていますし、裁縫道具をいただければ繕わせていただきます」

ああ、山道を駆け抜けるからどうしても破れるんだよなぁ。

小さい破れだからいいかって思ってたよ。


もちろん購入するとも。

俺の洋服を繕うサナ。

リンのリボンを縫うユナ。

想像しただけで萌えるのはなぜだ。


サナユナにとって王都初日。

ギラギラ男爵のせいでスタートは最悪だったが、サナとユナとリンの笑顔をいっぱい見られた充実の一日になったよ。


もちろん一日の終わりは月のうさぎで。

俺は久々にカレーライスを食うぞ!

と思ったら、今日はメニューにうどんがあるではないか。な、悩む……。


「うどんは明日の朝も出すよー」

おお!デニス、いいね!

明日の朝はうどんで決まりだ。そして今夜はカレーライス!

「ボクも!ボクもカレーにする!」


カレーライスとは?

首をかしげているサナとユナだったが、俺とリンの反応からおいしいものに違いないと確信し、同じものを注文した。チャレンジャーだな。

結果的にサナとユナにも大好評だった。

カレーライス、無敵。


サナは少しだけお酒も飲んでみた。ユナにはまだ早い。

しかし、エールの苦みはあまりサナの口に合わなかったようだ。

今度ワインを試してみようか。



それから何日かは、3人と1匹、王都での生活を楽しんだ。

買い物をしたり、おいしいものを探したり、サナとユナは裁縫をしたり。

時には王都の端まで探検してみたり。


お揃いのワンピースを着たサナユナとモフモフのリンとで、おしゃれなカフェでお茶をするのはものすごい優越感だったよ。

どや!うちの嫁とうちの子、かわいいやろ!ってね。


念願のチョコも見つけた。

板チョコではなくボンボンっていうか、トリュフタイプのもの。

貴族街の高級菓子店で見つけて、思わず万歳しちゃった。


小さな一粒15ギルするチョコを大量購入する俺に、またもやサナユナはドン引きしていたが、食べさせてみて二人も納得。

「これは天国の食べ物です!」

「私たちなんかに食べさせてはダメなやつです!」


そうそう、収納にたっぷり入っていた魔獣や薬草を買い取りに出した結果、俺の資産が4百万ギル(4億円)を超えたよ。

サナユナの契約金とスペインバルの出資金を払ったにもかかわらず、だ。

俺、やばくね?


もちろん夜はサナユナといちゃい……、コホン、仲良く過ごした。


そうして数日が過ぎ、そろそろリンと狩りに出かけようか、そう思っていた時。

「「旦那様」」

真剣な顔をしたサナとユナに話しかけられた。


「「旦那様のお母様に会いに行かれませんか?」」

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