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底辺から掴み取る、自由でおいしい毎日  作者: KAY
第二章 王都ザイオン編
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仲良くなった夜

「ワイバーンの討伐、大儀じゃった。この国の王として礼を言おう」

食事がひと段落したところで、陛下から礼を言われた。

おお、こういう時は威厳を出すんだな。国王っぽい!国王なんだけど。


「ワイバーンが現れた場所に魔力が強いものを派遣しても、現場に着いた頃にあやつはいなくなっておる。いつも国民や家畜がさらわれるのを歯がゆく思っておるだけじゃった。よくぞ倒してくれた」


「リンのおかげです。リンが倒してくれたんで」

これは謙遜でもなんでもなく、事実だ。


「そうか。では討伐報酬でリンにもうまいものでも買ってやってくれ」

そっか!ワイバーンの討伐報酬もでるんだ!


「リンの好きなお菓子と、そうですね……。今日のリボン、似合ってるんで、いろんなリボンを買ってあげようかな」


俺たちのやり取りを聞いていたビクターさんがさっそく食いついてきた。

「リンさんのリボンですか?かわいいですよね~。ぜひ私にもプレゼントさせてください」


「ではわしも。わしからもリボンを」

即座にビクターさんに対抗する大人気ない陛下。


「えー!俺らも!リボンくらいなら俺らも買えるぞ!」

クリストフたちまで加わってくる。

いや、リンは1匹だけだからね。リボンはそんなにたくさん要らないよ。


「さっそくじゃが明日、ワイバーン討伐の報告に王宮の騎士団本部まで行ってくれるか」

あー、報告っていかなきゃダメですかねぇ。


俺の嫌そうな顔を見て陛下が笑った。

「騎士団には話を通してあるし、すぐに終わるようにしておく。素材もその場で国に売ってくれるか」


「ワイバーンの素材は何に使われるんですか?」

そう言えばワイバーンの肉ってキマイラみたいにうまいんだろうか。

俺の疑問にひょっひょっと陛下が笑った。


「ワイバーンの肉はすじだらけで食べられたもんじゃないと言われておるぞ」

そっかー!残念!

魔物の肉はうまいというのが定番だと思ってたよ。

確かに肉々しい体つきではなかったな。


「ワイバーンの主な素材はその強靭な皮じゃ。柔らかい鎧や胸当てに使われる」

貴重な素材だから一人でも多くの兵士に渡るよう、胸当てにしたほうがよいな、そう教えてくれた。

「魔石も楽しみじゃのぉ」


俺は報奨金と買い取り価格が楽しみだよ。

扶養家族が増えたからな!


「サナとユナは、疲れてないかい?今日ザイオンに着いたばかりなのにいきなり連れてきてすまないね」

アイノラがサナとユナを気遣って声をかけた。


「ありがとうございます。皆さん優しくてとても楽しいです」

「到着してからずっとびっくりしっぱなしですが、大丈夫です!」


「そうかい?疲れたら無理せず言うんだよ」

アイノラは俺だけでなく、サナとユナにとってもザイオンの母のようだ。


「サナ、ユナ、今日はドレスを着ているからエイミィの抱っこは無理かもしれないけど、これからはアイノラやモルガンが忙しい時はエイミィのお世話もしてあげてほしい」


俺からそう頼むと、嬉しそうにうなずいた。

「こんなかわいい子のお世話をできるなんて楽しみです」

「私は末っ子ですけど、近所の小さな子供のお世話を手伝っていました。頑張ります!」


アイノラの腕の中でうとうとするエイミィは天使のようだが、3歳児というのは最も目が離せない時期だ。大人の手は多い方がいい。


「それはありがたいね。エイミィ、明日からはこのお姉さんたちが遊んでくれるんだって。よかったねぇ」

アイノラに話しかけられるエイミィを、サナとユナも優しい目で見つめた。


「そろそろ王宮に戻りましょう」

壁側で控えていた側近たちに声をかけられる陛下。

その言葉を合図に、歓迎のパーティーはお開きとなった。

「では戻るとするか」


「カイト殿がお戻りになったので陛下の護衛が増えそうな気がします」

側近の一人がぼそっとつぶやいたが、それ、俺のせいじゃないし。

陛下もそんなにしょっちゅう、王宮抜け出してこなくていいですから!


側近にがっちりガードされて食堂を出ていく陛下を見送り、俺たちも帰ることにする。

「デニス、料理人の皆さん、おいしかったです!」

「「ごちそうさまでした」」


厨房に声をかけると、デニスが軽く手を上げた。

「おう、また明日」

明日の朝も楽しみだ。


ぞろぞろと連れ立ってポラリスの宿に戻る俺たち。


「じゃあな、カイト、リン」

「俺ら、明日の朝には旅立つつもりだから」

「サナさん、ユナさん、カイトとリンをよろしく!」

「また会おうぜ!」

クリストフとヨーク、ベレン、シモンはそう言うと上の階にある自分たちの部屋へと戻っていった。


ヒューゴ夫妻も「おやすみ」といって部屋へと引き上げる。


「すぐにお風呂の準備しようかね」

アイノラだけが俺たちと一緒に部屋へ来てくれた。


「手伝います」サナがすぐに駆け寄ったが、

「そのドレスじゃねぇ」と断られ、アイノラが手早く風呂を沸かし始める。


「じゃあ後はたのんでもいいかい」

風呂の準備が整ったところで、アイノラはそう言い残して部屋を出ていった。


パタンとドアが閉じると、部屋に取り残されるサナとユナと俺。

リンはソファーの上で寝ている。


ええっと、どうしよう。

緊張感と沈黙が支配する中で、俺からサナとユナに声をかけた。

「俺はリンと奥の寝室にいるから、二人はドレス脱いで先に風呂に入っちゃって」


「そんな!旦那様より先にお風呂に入るなんて!」

「どうぞ、旦那様お先に」


いやぁ、まあ普通ならそうなんだけど、そのドレス脱ぎたいよな?

「今日は特別。お風呂出たら声かけて」


ここまで来る道中、俺とリンはサナユナと別の部屋を取っていた。

サナの体調も完全ではなかったし、旅の途中は二人をゆっくり休ませたかったからだ。


でも今日からはこの部屋で一緒に寝るんだよな。

って、やばい、緊張してきた。

リンを抱いたままベッドに腰掛け、なんだか落ち着かない気持ちになる。


リビングからはサナとユナの声がする。

「ユナ、後ろむいて。脱がしてあげる」

「ねえさんも。これって背中からしか脱げないのね」

おおぅ。二人の声を聞き、ついつい想像を膨らませてしまう俺。


しばらくして隣の部屋が静かになった。風呂に入ったのだろう。


二人がいなくなったリビングに戻り、部屋を見渡してみる。

基本、俺は収納にすべて入れているから部屋には何も置いていない。

広くて殺風景な部屋だ。

しかし、それではサナユナが暮らしていくのに不便だよな。


俺は作り付けの棚に食器やお茶などを出して並べていく。

部屋の隅に水がめや七輪、炭などを置き、ベッドサイドにピッチャー、机の上に焼き菓子も並べる。

うん、これで多少は過ごしやすいだろう。


すると二人が風呂から出てきた。

早いな。俺より先に入ったから急がせてしまったか。


「お先にお風呂をいただいてしまい申し訳ありません」

「お湯は足しておきましたので、旦那様とリン様もどうぞ」

ドレス姿もかわいかったが、風呂上りの夜着もまたいい。


「この部屋のものは自由に使って。お茶やお菓子も好きに」

「そんな……」二人が恐縮しているが、これから毎日一緒に過ごすのだ。

ある程度の自由がなければ息が詰まってしまう。


寝ぼけまなこのリンを抱いて俺も風呂へ。


ぽちゃん。

リンを抱いて湯に浸かる。

サナとユナが入った後だと思うと、気のせいか湯が柔らかい気がする。

気のせいだけどな!


ドキドキしている分、いつもよりのぼせてしまいそうで素早く風呂から出た。


風呂からあがると、サナとユナは緊張した面持ちでソファーに浅く腰掛けていた。

「リン、みんなの髪を乾かしてくれる?」

「いいよー」


温かい風が巻き起こり、一瞬で俺たちの髪を乾かしてくれるリン。

「ありがとうございます、リン様」

「便利ですね!」


今日の役目は終わりとばかりに寝落ちしそうになるリンに、俺は慌てて話しかけた。

「ねえ、リン。今日からはサナとユナも一緒に寝るよ」

「うん、いっしょ!」


「それでね、俺たちは……、サナとユナと俺は、リンが寝た後に仲良くなることをするんだ」

「もうなかよしだよ?」

「そうだね。でももっと仲良くなるんだよ」

「ふーん。ボクもなかよし?」

「うん。リンはもう俺たちとすっごく仲良しだな」

「なかよしー!」


俺とリンの会話をほっこりと聞いていたサナとユナが立ち上がり、俺たちはリンを抱いて寝室へと入った。


ベッドにリンを降ろすとすでに熟睡モード。

俺に続いてサナとユナもリンの小さな背中をなでる。


「ふふふ。リン様、寝るの早いですね」

「途中で起きちゃいませんでしょうか?」

「魔獣でも襲ってこない限り、リンは起きないよ」

俺たち三人はお互いに目を合わせて笑った。


神獣であるリンは、この世界の(ことわり)を本質的に理解しているように思える。

動物や人間の営みのことも本能的に分かっているのかもしれない。

リン、リンのことも大好きだよ。


リンから離れ、俺はサナとユナをそっと抱き寄せた。

「じゃあ、俺たちも仲良くなろうか」


俺の肩にそっと頭を寄せるサナとユナ。

「はい、仲良くしてください、旦那様」

「よろしくお願いします、旦那様」

50話目です。そしてようやく……、ようやくです!

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