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底辺から掴み取る、自由でおいしい毎日  作者: KAY
第二章 王都ザイオン編
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ドレスアップ

「旦那様、山の上から王都を見渡すことができました!壮大な景色でした!」

「遠くに海が見えました。私、海を見るのは初めてです!近くに行ってみたいです!」


ザイオンの停留所で俺たちと合流したサナとユナは興奮気味だ。

知らない土地にやってきた不安感より、興奮と感動が先行するのならよかったかな。


「今日はもう日が暮れるから、明日ゆっくりザイオンを案内するよ」

「はい、ありがとうございます!」

「楽しみです!」


2番街の大通りを連れ立って歩き、ポラリスの宿へと向かう。

石畳の広い道、立ち並ぶ商店。

サナとユナはワクワクを抑えきれない表情できょろきょろしながら、俺の後ろにぴったりとくっついて歩いている。


宿に帰ったらモルガンやアイノラに、なんて言われるかな。

先に戻ったヒューゴやスーザンから、二人のことはとっくに伝わっているだろう。

からかわれるかなー。はずかしいなー。


そんな俺の重い足取りとは裏腹に、あっという間にポラリスに着いてしまった。

ええい、うじうじしたところで仕方ない!


カランカランとベルを鳴らしてドアを開ける。

「ただいま!」「ただいまー」


俺とリンの後ろからサナとユナも声をかける。

「こんにちは」「お邪魔します」


奥からモルガンと、エイミィを抱いたアイノラが慌てて出てきた。

「お帰り!ヒューゴさんとスーザンさんの予想通りだったな。本当に今日帰ってきた」

「お帰り、カイト、リン。その娘たちがサナとユナかい?」

「たらいまぁ」

エイミィちゃん、君はおかえりって言う側だよ?


「うん、こっちがサナでこっちがユナ。今日からお世話になります!」

二人を紹介すると、サナとユナが頭を下げた。

「サナです。お世話になります」「ユナです。よろしくお願いします」


「こちらこそ、これからよろしくね。って、ゆっくりしゃべってる暇はないんだよ。ごめんよ。スーザンさん、手伝っておくれー!」

アイノラが階段に向かって声を張り上げる。

その声を聞き、2階からヒューゴとスーザンが降りてきた。


「おお!お帰りカイト、リン。サナとユナも」

「お帰りなさい。うちの人の読みが当たってよかったわ。本当に今日帰ってきたのね。さ、サナさんとユナさんはこっちに」


挨拶もそこそこに、スーザンとアイノラがサナとユナを俺の部屋に連れていこうとしている。

何ごと?

サナとユナはキョトンとしつつも、されるがままである。


じゃあ俺も。

「おっと、カイトはこっちだ」

ヒューゴとモルガンにがっちりと肩をつかまれ、俺とリンは別の部屋へと連れ込まれた。


なんでー?あっちが俺の部屋―!

サナとユナは俺の嫁―!


連れ込まれたのはモルガンの私室だろうか。

壁にグレーのスーツがかかっている。

あれ?モルガン、どっかに出かけるところだったのかな?

「モルガン、パーティーにでも行くの?」


「これはカイトのだよ。ビクターさんからのプレゼント」

いやいや、俺スーツ着て出かけるところなんてないし。


「今から着るんだって。はい、脱いだ脱いだ」

モルガンとヒューゴに服を脱がされ、スーツを着せられる。


七五三?よりはましか。

成人式みたいかな。


「こんなん着て、どうするんすか」

「まあ、いいからいいから」

ヒューゴに軽くかわされる。


「カイトのこのぼさぼさの髪、どうします?」

モルガンさんがヒューゴに聞いている。

ぼさぼさで悪かったな!ちゃんと毎日風呂には入ってるぞ!


「とりあえず後ろに流してオイルで押さえつけとくか!」

オイル、いらねぇし!

なんで俺今、この二人にかまわれてるんだろう?


「リンはこのリボンつけようね」

机の上で我関せずと眠っていたリンに、モルガンがグレーのリボンをつける。

俺のスーツの色とお揃いだ。


「なぁに?これ」

「意味はないよ、可愛いだけさ」

「かわいい?」


リボンをつけてもらって嬉しそうなリン。

首輪ではないが首にリボンを付けた神獣ってどうなの?


「ま、カイトとリンはこんなもんか。サナとユナの準備はできたかな?」

アイノラとスーザンに拉致られたサナとユナも、何かの準備をさせられているようだ。

準備、何の?


カウンター前に戻り、二人を待つ。

「やっぱ、女性の方が時間がかかるよな」


しばらくしてアイノラとスーザンに手を引かれ、サナとユナが戻ってきた。


うぉぉぉ!?

どした?どした?

二人ともめちゃくちゃかわいいぞ!


色違いでお揃いのドレスを着た二人。

濃い青色、サファイアブルーのサナ。

鮮やかな緑色、エメラルドグリーンのユナ。


光沢のある生地でたっぷりのドレープが足元まで広がるスカート。

肩から手首まではレースで覆われ、露出は少ないが色っぽい。


長い髪のサナは髪をアップにしてもらい、セミロングのユナはハーフアップに。

髪にはこれもまたお揃いで、薔薇を模した金の髪飾り。

耳にも同じモチーフのイヤリング。

サナには小さな青い石が、ユナには緑の石が複数ついている。

とても似合っているが、あれ、まさか本物のサファイアやエメラルドじゃないよな。


言葉が出ない俺を、モルガンがつつき、ヒューゴが背中をたたいた。

「うぁぁ、きれいだねぇ」

……、結局最初に言葉を発したのはリンだったよ。


「二人ともすっごくきれいだよ」

ようやく絞り出した俺の言葉に、「カイト……」「それだけかよ」とモルガンとヒューゴが天を仰ぐ。


「ありがとうございます。旦那様も素敵です」

「物語のお姫様になったみたいで嬉しいです。リン様のリボンもかわいいですね」

サナとユナは嬉しそうだが、明らかに戸惑っている。


「あの、これからどこへ行くのでしょうか?」

「ちょっと驚いてしまって、頭がおいついていかないんですけど」


それは俺が聞きたい!

まさかこれから王宮へ行くとか、言わないよな?

俺は国の権力からは離れて、平和に生きたいんだよ。


俺たちの視線を受けて、モルガンが当然とばかりに答えた。

「月のうさぎだよ、もちろん」


がっくり。

いや、よかったけどな、王宮とか言われなくて。

でも月のうさぎだぞ!バリバリ庶民の食堂だぞ!

スーツとドレスなんて、間違いなく浮きまくるぞ!


「いいから行こう、準備はできてるってビクターさんから連絡きてる」

俺はモルガンに背中を押され、サナとユナはアイノラとスーザンに手を引かれてポラリスを出る。向かうはお隣、徒歩10秒の食堂、月のうさぎだ。


「連れてきたぞ」

先頭に立ったヒューゴがドアを開け、俺たちも続いて中へと入る。

そこには変わらぬ姿の月のうさぎ。安定の庶民感。


しかしテーブルは壁際に寄せられ、その上に大皿が並んでいた。

大皿にはカナッペやサンドイッチなど一口サイズの料理がずらり。

カウンターにはグラスが並び、数種類の酒の瓶も用意されている。


そして!

「カイト!おめでとう!カイトに嫁さんかぁ。まさかの急展開」

「うわぁ、この人たちがサナさんとユナさん?かわいいな!」

「カイトにはもったいない~。彼女もいなかったのにいきなり嫁二人ってずるい!」

「カイトのことをよろしくね。リンのことも!」


クリストフ、ヨーク、ベレン、シモン!

来てくれたのか!


「今日はカイトさんが新しい家族を迎えたお祝いですよ」

エリックを連れたビクターさん。今日のパーティーの仕掛人らしい。


そういうサプライズか!

ありがとう、みんな!

普通の結婚とは少し違うけど、新しい家族、嫁であることは間違いない。

二人を歓迎してくれようという気持ちがうれしいし、何より着飾った二人が最高だ。


「ビクターさん、皆さん。ありがとうございます」

両隣にサナとユナを並ばせて、みんなに礼を言う。


「改めて紹介します。サナとユナです。ザイオンに知り合いもいない二人です。仲良くしていただけると嬉しいです」

俺と一緒にサナとユナも頭を下げた。


「それに二人のこんなきれいな姿を見られて、感激です。ありがとうございました」

俺の言葉に頬を赤くしてうつむく二人。くっ、かわいい!


「サナです」

「ユナです」

「「よろしくお願いいたします」」


「お二人ともとてもよくお似合いですよ。急だったので既製品でしたがサイズもあっていて、安心しました」

どうやらドレスを用意してくれたのもビクターさんのようだ。

ビクターさん、グッドチョイスです!


「髪飾りとイヤリングは……」

そうビクターさんが言いかけたところで扉が開いた。


「遅れてしまったではないか。カイトより先に来て驚かすつもりだったのに!」

やっぱり来たか、ひげのおじいちゃん!

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