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底辺から掴み取る、自由でおいしい毎日  作者: KAY
第二章 王都ザイオン編
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サナとユナ

書きたかったこの章にたどり着くまでに3か月近くもかかってしまいました……。ようやく書けて満足です。

ヨヒトに向ける俺の視線が突然氷点下になったことを、この兄妹もヒューゴ達も瞬時に理解したのだろう。

「落ち着け、カイト。どの家族にも事情はあるんだよ」

ヒューゴの言葉も俺には届かない。


「妹二人を性奴隷に売って、その金をよく受け取れるね」

絶対零度の俺の言葉にヨヒトはうつむいたが、サナは顔を上げて俺を真正面から見た。


「兄は最後まで反対していました。軽労働奴隷でいいだろうと」

だったらなぜ性奴隷になんてなろうと思ったんだ?


「軽労働では、病気の母と、間もなく生まれる兄の子供に十分な食事も薬も買うことができません。5年間、母は生きているのだろうか、兄の子供は無事に育っているのだろうかと不安に思いながら軽労働をするより、どんなにつらくともそれによって母も兄の子供もきっと元気だと信じられる方が、私にとっても幸せなのです」


さっきまでぐったりしていたサナの目に強い光を見出し、俺はたじろぐ。

「家族のためにそこまで自分を犠牲にできるものなのか?」

やはり理解できず思わず尋ねた俺の言葉に、サナは柔らかく笑った。

「犠牲になるわけじゃありませんよ」


いやだって、犠牲だろう、どう考えても。

そういう俺にサナは笑って話し始めた。


「女性の幸せは結婚だと言われています。ですが、嫁ぎ先によっては日々の食事にも事欠く貧しい生活が待っていたり、時には嫁としてひどい扱いを受けることもあります。貧しい地域に生まれ育った私たち女性が望むことは、毎日ひもじい思いをせず、ひどい扱いも受けない、少しでも優しい家に嫁ぐことです」


それは分かる。女性ではないが俺も似たような環境だった。


「性奴隷として勤めるのも同じなんです。少しでも優しい旦那様のところに勤め、毎日ひもじい思いをせずに過ごしたい。ただそれだけです。性奴隷だからと言って必ずしも不幸だとは限りませんし、結婚がそのまま幸せとも限らないんです」


俺はハッとした。

性奴隷イコール不幸な女性だと勝手に決めつけていたし、結婚イコール幸せだと同じく決めつけていたことに気づいたからだ。


「私もユナも、やさしい旦那様に買っていただいて幸せに過ごす気満々ですよ」

柔らかな笑顔の奥に、強い意志を感じる。


「5年の年季明け後もおそばに置いていただけるよう頑張るつもりです」


すごいな。家族のために、そして自分のために。

こんなにも強くいられるんだ、この人は。


あの頃の俺は自分から幸せをつかもうなんてこれっぽっちも思っていなかったよ。

ただうつむき、その先を見ようとすらしていなかった。


それに比べて彼女はどうだろう。

自分から幸せをつかみに行こうという意欲。


かっこいい。

かわいいけどかっこいい。


「妹さんはどうなの?」

まだ幼さの残るユナにも聞いてみる。


「私は……、私はねえさんほど強い意志は持ってなくて……。ただ見知らぬ土地で、たった一人で5年を過ごす勇気がないんです。軽労働で一人で過ごすより、つらい仕事でもねえさんと一緒か、すぐ近くで過ごす5年の方がいいなって」


そういうことか。それはそれで彼女の意思だ。


「それに姉さんと私が幼い時、兄が重労働奴隷に5年出てくれたおかげで私たちは今、生きていられるんです。今度は私たちが兄の子供、生まれてくる子供に返す番です」


姉サナ18歳、妹ユナ16歳。


ユナが性奴隷になれる年齢までサナは待っていてくれたそうだ。

二人で一緒に王都を目指す。

着古した服を着て、小麦色に焼けたこの姉妹がまぶしい。


「一方的に決めつけてごめん」

なんだかすごく自分が恥ずかしかった。


軽労働なら5年で2万ギル、二人合わせて4万ギル。

性奴隷なら5年で4万ギル、二人合わせて8万ギル。

それで助かる命があるのだろう。


とはいえ、大切にしてもらえる性奴隷なんてほんの一握りだ。

軽労働奴隷ですら、雇用主によってはひどい扱いを受けることもあるくらいなのだ。

彼女たちが幸せに過ごせる可能性は限りなく低いだろう。

これほど強い意志を持つ彼女たちが……。


「俺が出すよ、その金。二人分」

気付けばそう言っていた。

この国の貧しい人たち全てを救えるわけじゃない。

この二人だけを助けたところで、それは偽善でしかないかもしれない。


それでも家族思いで芯の通ったこの二人を応援したいと思った。

自由にして、大好きな家族のもとで過ごさせてあげたいと心から思った。


「本当ですか?!ありがとうございます!ザイオンに行っても雇ってくれるところがあるのか、ずっと不安だったんです。精いっぱいお仕えいたします!」

俺の言葉に、サナが即座に反応した。


「二人一緒でいいんですか?ねえさんと一緒にいられるんですか?ありがとうございます!旦那様のお役に立てるように頑張ります!」

ユナも目を輝かせている。


え?えええ?そういうことじゃなくてさ!

いやいやいやいや、ちがうから!


「おお!それ、いいと思うぞ。神の使徒であるカイトが、中庭で地味に洗濯しているのを見てて、なんだかなーって思ってたんだよ。カイトには身の回りの世話をしてくれる人が必要だよ」

ヒューゴまで、何言っちゃってるの!


「洗濯!お任せください!」

ユナが張り切って答える。


「そうじゃなくて。金は出すから二人は自由に生きていいかなって。家族のもとで過ごしていいよ」

俺の言葉になぜかヒューゴが真っ先に反論した。


「それはよくない。金をもらったらきちんと働いて返すべきだ。それがスジってもんだろ」

「はい!私たちでお役に立てることでしたら、なんでもさせていただきます!」


えー。

そりゃ、彼女たちのことはかわいいと思ったし、いいなって思うよ。

だからこそ、だからこそだよ!

「こんなかわいい子たちがずっとそばにいてくれて、手を出さないなんてムリ」


思わずつぶやくと、そこにいる全員がキョトンとした。

「なんで我慢する必要があるんだ?性奴隷の対価を払うんだろ?」


「はい!心を込めてご奉仕いたします!」

「旦那様、よろしくお願いいたします!」


やべぇ。これはやべぇ。

旦那様なんてガラじゃないのに、その言葉にぐっときてしまった俺がいる。

これ、めっちゃ幸せかも。


いいのか?

いきなりこんなかわいい姉妹が俺のもとに来てくれて、いいのか?


舞い上がりそうになるが、落ち着け、俺。

「倫理的な問題はないんだろうか……」


「親が決めた顔も知らない相手に嫁ぐのと、それほど大きな差はないわよ。大事なのはカイトさんがこの二人を大切に扱うかどうかよ」

意外なことに、スーザンも賛成のようだ。


それはもちろん!

大切にするよ、するとも!


「リン、この二人、サナとユナと一緒に暮らすのはどう?」

俺の相棒、リンの意見を無視して勝手には決められない。


「いいよー!たのしそうだね!」

おお、リンの許可が出たぞ。


ってちょっと待て。

リンが寝ている横で、その……、イチャイチャすることはできるのだろうか?


一抹の不安を残しつつも、サナとユナを迎え入れることが決まった。

「性奴隷というより、嫁って感じの方が俺は嬉しいんだけど」

せっかくなら家族のように楽しく暮らしたい。


「いいんですか?私たちはもちろんうれしいです!」

「嫁!嫁ですか?それは幸せです!」

よかった。これ、嫌がられたら凹むとこだった。


「ありがとうございます」

兄のヨヒトが改めて頭を下げた。


「本当はここに来る途中もずっと反対していたんです。サナとユナには優しい人のところに嫁いでほしいという気持ちがあきらめられず。でもカイト様なら安心して妹たちをお預けできます。どうぞよろしくお願いいたします」


任せられた。

リン以外に守るべきものができた。

改めて気合いが入る。


そうと決まれば!とはいえサナは数日安静にする必要がある。

サナの服も血まみれだ。

どうしよう……。

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