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底辺から掴み取る、自由でおいしい毎日  作者: KAY
第二章 王都ザイオン編
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つかの間のメイダロン

書いてみたら意外と難しく、投稿が滞ってしまいました。

ここからまた定期投稿できるように頑張ります。

「だからよ、あの大量のパンがどうやったらこんなに早くなくなるんだ?パン以外のものも食ってるか?」


メイダロンを出て20日ほどで戻ってきた俺とリンに、ジョージさんはあきれ顔だ。


もちろん、ちゃんと食べてましたよ。

肉も野菜も海鮮も、米やみそ汁まで!


メイダロンを出てから今日まで、俺たちの食生活はずっと彩り豊かでにぎやかだった。

でもまあ、にぎやかだった結果がこれなんだけど。


「パンもホットドッグもなくなっちゃったの……」

リンがこの世の終わりのような悲しい声を出している。

おうおう、こねるぞ、焼くぞ。

リンのために俺は頑張る!


「しょうがねぇなぁ。また久しぶりに一緒に焼くか!」

そういうジョージさんもリンには甘い。


久しぶりにジョージさんに弟子入りしてパンを焼き、夜はゼットンさんの宿でおいしい晩ご飯。


マーティンにはこれほど早く戻ってきたことをからかわれつつも、少しだけ残っていたザイオンのケーキやコーヒーで土産話に花を咲かせた。


ブリックはリンの頭を永遠になで続け、とうとうリンに嫌がられていた。

「ブリック、もういい!」


ゼットンさんにはさっそく醤油と味噌を披露。最初に伝授したのは照り焼き。鶏の照り焼きと照り焼きハンバーグを試作してもらった。

「いいな、これ!パンにも合うぞ!」


今回も料理の作り置きを手伝ってくれたが、今回はスープ類に加えて照り焼きハンバーガーとチキン南蛮バーガーもゼットンさんと一緒に作った。

ザイオンにいて、朝晩月のうさぎで食事をしていたらこんなに大量の料理はいらないはずなんだけど。なんでかなー。


味噌のレシピは悩んだ結果、キャベツと豚の甘みそ炒めと豚汁を、白飯と合わせて紹介した。白飯は普通の鍋でもなんとか炊けるもんだな。

ゼットンさんにとっては未知の調味料だったがあっという間に使いこなし、大絶賛してくれたよ。しかし残念ながら米の買い置きはそれほど多くない。


「また持ってきますね!でも、近いうちに全国的に販売されると思いますので楽しみにしていてください」


醤油も味噌も、この国の人に受け入れてもらえそうだな。



「ザイオンに着いた翌日に陛下に謁見したのか。さすがだな」

俺が淹れたコーヒーをすすりながら、アーノルドが感心している。


メイダロンでの短い滞在を終え、俺たちはビルケッシュ城に来ていた。

「謁見……、じゃあないよ、あれは。遭遇?待ち伏せ?うん、待ち伏せだな」


陛下相手に何という言い方!

アーノルドがのけぞっているが、事実である。しかも、リンじゃあないが、俺にも「ひげのおじいちゃん」にしか見えないのだから仕方がない。


「私は2度謁見したことがあるが、2度とも畏怖すら感じるオーラが出ていたぞ」

オーラ?

陛下にオーラ、あったっけ?

「カイト、アルダラム国最高権力者に、なんという言い草!」


庭では短い滞在時間を目いっぱい遊ぼうと、ミミリアちゃんとリンが走り回っている。

「リンちゃん、ザイオンに行ったの?いいなぁ、ミミリアはまだ行ったことがないんだよ」

「ザイオンはねぇ、デニスのごはんがおいしいよ。それとたこやき」

「たこやきってなあに?」


ごめんよぉ、ミミリアちゃん。

あの大量のタコ焼きは、カリオテ村初日に消えたよ。


「平和だな~」

俺のつぶやきに、アーノルドが顔をしかめた。

「そうとも言ってられないんだ、これが」

え?何かあるの?


「ここから王都に向かう街道沿いで、ここ数日、ワイバーンが目撃されている」

まーじーかー。


「ワイバーンってどうやって倒すの?空飛んでたら無理だよね」

俺の素朴な疑問に、眉間にしわを寄せたアーノルドが説明してくれた。


「ワイバーンはキマイラのように火を噴いて街を焼きつくすわけじゃないからな。家畜を一匹襲って連れ去る程度だ。しかし時には人を襲うこともある。だからこそ倒せるなら倒したいが、魔力の強い弓使いが居合わせでもしない限り、空を飛んでいるワイバーンを倒すのはほぼ不可能だよ」


だから目の前で家畜や人が連れ去られても、あきらめるのが現状さ。

やつらが戻ってこないことを祈るのみ。


アーノルドの言葉にはどことなく悔しさが込められている。

そりゃぁ、目の前で家畜や、ましてや家族が襲われ連れ去られるのを黙ってみているしかないとしたら、想像しただけで胸がつぶれそうだ。


「牛や馬が襲われたという情報がすでに入ってきている。人が襲われないといいけどな。縄張り争いに負けたのか、同じ個体が何度も現れてるんだ」


キマイラの時も思ったことだが、やばい魔獣は大陸の最果てでおとなしくしていてほしいもんだ。人の住む場所へ来ないでくれ。


「リーンー!」

窓から庭にいるリンに声をかける。

「なぁにー?」

「強い魔力、感じる?」


「わかんなーい!このちかくにはいないよ!」

リンのレーダー範囲がどのあたりまでなのか、いまだに俺も分かっていないが、少なくとも半径30kmにはいないようだ。

前回はメイダロンにいて、コリンバースの危機を察知したからな。


「見つけたら教えて!俺たちに倒せそうなら倒しに行こう!」

「わかったー!」


「私からもお願いする。もし見つけられたら、そしてカイトとリンに倒せるなら、倒してほしい」


リンのレーダー頼みだから安請け合いはできないが、出来ることなら人が襲われる前に何とかしたいもんだ。

「リンになら倒せるかな。見つかるといいけど」


「リン、そろそろザイオンに帰ろう。ミミリアちゃんにバイバイして」

「えー、もう帰っちゃうのー?おとまりしていけばいいのにー」


ミミリアちゃんが引き留めるが、アーノルドが助け舟を出してくれた。

「ミミリア、大丈夫だ。リンもカイトもきっとまたすぐに戻ってくる」


うん、まあ、事実だけどな!

結局俺たちは、レアキャラにはなれない運命なんだよ。


「じゃあまた!」

「ばいばーい、またねー」



ビルケッシュ領を出て、リンの背で風を受けながら街道沿いを走る。


「リン、なんか感じる?」

「なんにもー」


ワイバーンはもう大陸の最果てに戻ったのかもな。そうだといいな。

めっちゃ希望的観測だけどな!


そのまま2時間ほど走ると陽が傾いてきた。

今夜はこの辺りで宿泊するか。


「リン、次の町で泊ろう!」

「うーん、でもあっちになんかいるよ?」

え!?なんかとは?

いるのか?あいつがいるのか?


「カイト、つかまって!」

レーダーを感知したリンが一気にギアを上げて走り出す。

うぉぉ、久々のトップスピードだ。


猛スピードで走る俺たちは、街道沿いを歩く旅人や馬車をぐんぐん追い抜いていく。


「あれ?カイト?リン?」

「あら、どうしたのー?」

追い抜いた馬車からヒューゴとスーザンの声が聞こえたが、ごめん、また後で!

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