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底辺から掴み取る、自由でおいしい毎日  作者: KAY
第二章 王都ザイオン編
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カリオテ村へ

カリオテ村に遊びに行く前に、やっておきたいことがある。

俺とリンは、翌日薬局へやってきた。


薬草の買い取りと同時に、薬を買って常備しておきたい。

野山を走り回って多少の切り傷ができるくらいどうってことはないが、リンとは違って俺は普通にケガもするし病気にもなる。

サマンサさんのところで、売るだけじゃなく買っておけばよかったなと旅の途中でちょっと後悔していたんだ。


モルガンから紹介してもらった薬局は、10名ほどが働く大きな薬局だった。

調合をする人、販売をする人。こういうところでも都会を感じる。


「いらっしゃいませー。どのような薬をお探しですか?」

販売担当は若い女性だった。見習いかな?


「水晶苔の傷薬と瑠璃いちごの薬があれば……」

俺の言葉に店員は固まった。


「それはさすがに……。水晶苔の傷薬は、在庫はありますが貴重な薬のため、今目の前でケガに苦しんでいる方か、危険な遠征に出向く兵士のような方だけにお売りすることになっています。瑠璃いちごの薬は王都中探してもないんじゃないでしょうか」

やっぱそうかー。貴重なんだなぁ。


「えーっと、水晶苔も瑠璃いちごも、俺持ってます。かなりの量をお売りできるんですけど、自分では調合できないから……」


ガタンッ!!


奥で調合していた薬剤師が数名立ち上がった。

「持ってるんですか!?」


なかなかの食いつきだ。

「中へお通しして!」


大きなテーブルのところへ通され、旅の途中で採取した様々な薬草、水晶苔、そして瑠璃いちごを俺は次々と取り出した。

もはや全員が作業の手を止め、テーブルの周りに集まってきている。


「これはすごい。どの薬草も新鮮な状態だ」

「水晶苔がこんなに大量に」

「瑠璃いちごは私も調合したことはないな」


責任者らしき人が前に進み出る。

「失礼しました。こちらを買取させていただけるならもちろん薬はお売りします。瑠璃いちごは今から調合しますので、お売りできるのは2,3日後ですが、水晶苔はすぐにお売りできますよ」


水晶苔の傷薬は、浅い傷なら一瓶を傷に振りかければよく、深い傷の場合は一瓶を振りかけ、もう一瓶服薬すればだいたいどんな傷も、ほぼ傷跡も残らず治るのだそう。

「ただし、傷の深さにもよりますが、数日は安静にする必要があります」


なるほど。それは確かに需要が高いよな。

また探してくることにしよう。


明日から出かける旨を伝え、瑠璃いちごの薬は完成したら取っておいてもらえることになった。水晶苔の薬のみ6瓶購入。一瓶400ギル。

欲しい人はいくらでも金を積むだろうに、なかなか良心的な価格だ。

薬師協会とかで相場が決められているのかもな。


薬草の買い取り価格は6580ギルだった。

量も多いが、ビルケッシュより買い取り価格も高い気がする。

明細は分からないから多分、だが。


これで少しだけ安心だな。俺自身も、俺の周りの人に何かあっても。


その後はリンの好きなケーキや紅茶、クリストフたちが喜びそうな屋台メシなどを次々と購入。たこ焼きは屋台のお兄さんが呆れるほど大量購入した。

だってこれ、絶対あいつら好きだし。


夜は、モルガン、アイノラ、エイミィと一緒に夕食。

ビクターさんも国王陛下もいない平和な夜だ。

ヒューゴ夫妻は今日から護衛の仕事に出ている。


モルガンとアイノラが食べているのはサバの味噌煮定食。

渋いな。そこまで和の道を貫かなくても。

もうちょっとこの国の人の好みに寄せてもいいよな。

しかし、箸を使って器用にサバを食べる二人。日本人の血が流れているのか?


エイミィには子供用の皿にごはんとみそ汁、卵焼きとポテトコロッケが出されていた。


俺たちは、気になっていたカレーライスと海鮮丼を注文。

カレーライス!


香辛料から作るなんて、俺には無理。

しかも日本式のトロっとしたカレールウだ。これは最高だな!

きっとたぶん食い意地が張っていたと思われるリョージさんのおかげだよ。


リンには辛いものはNGかなと思い、カレーライスは自分用にしたが、意外と甘口だった。

これならいけるかな?

「リン、これちょっと食べてみる?」


「いいにおいだねぇ」

「辛いかもしれないから気をつけろよ」

俺の皿に顔を突っ込み一口食べると、すぐに顔を上げた。

「おいしい!これ、すきー!」


エイミィがそれを見て首を傾げた。

「しょれ、からいよ、リンちゃん」


「からくないよ。エイミィもおっきくなったらたべられるようになるよ」

何故得意げだ、リンよ。今の君は明らかにエイミィよりちっちゃいぞ。


結局残りのカレーライスはリンに奪われてしまった。

デニス、お代わり……。


翌日。

ザイオンにはまだ3泊しかしていないのに、また出かける俺たち。


「行ってきます!「いってきまーす」

「行ってらっしゃい、気を付けて」「ばいばーい」


アイノラとエイミィに見送られ、リンの背中に乗る。

「おっきなリンちゃん、エイミィものりたい~」

「帰ったら乗せてあげるね!」


ザイオンの大通りを徐行運転(?)し、王都を抜けたところでスピードを上げる。

汗ばむ季節に、風を切って走るのは気持ちがいい。

こんなにふさふさの毛で、リンは暑くないのかな?

あとでリンに冷たい飲み物を用意しよう。


行き交う人々を追い越し、すれ違い、北東へ2時間ほど走る。

ザイオンから100kmくらいっていったら、このあたりだよな?


「リン、クリストフたちがどこにいるか分かる?」

「わかるー!あっちだよ!」


東に逸れる細い道へ入っていくリン。


細い道を少し走ると、ほどなく見えてきた小さな集落。

ぽつぽつと家が建ち、畑が広がっている。

ここかな?


畑仕事をしている二つの影がこちらに手を振った。

「カイト~!リン~!」


「ベレン!シモン!」

実家に帰ってそうそう、もう畑を手伝っているのか。えらいぞ!


「おーい、クリストフ、ヨーク!カイトたちがきたぞぉ!」


ベレンとシモンに近づくと、家の中からクリストフとヨークも出てきた。

「よく来たな!」

「ようこそ、カリオテ村へ!」


リンの背から降りると、リンが自分の尻尾を追うようにくるくると回った。

「バーベキューだよ!」


リン、到着後1分でバーベキューですかい。

まだ家族も紹介してもらってないんだけど。


「リン、バーベキューの前に冷たいお茶飲んで、お菓子食べよう。みんなで!」

「わーい、おかしたべるー」


俺の言葉にクリストフとベレンが顔を見合わせた。

「俺んちかな」

「いやいや、クリストフんとこ狭いだろ。うちだな」

「ベレンの家もどっこいどっこいだろ?」

「ちげぇねぇ」

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