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底辺から掴み取る、自由でおいしい毎日  作者: KAY
第二章 王都ザイオン編
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ザイオンの市場

午後はビクターさんにヘビを届けるか、市場巡りをするか。

軍配はあっさりと市場にあがった。


今すぐ買い物をする必要があるわけではない。

しかし初めて函館に来て朝市に行かない人がいるだろうか?

北欧に行って魚市場に足を運ばない人がいるだろうか?


市場って、買い物以上に刺激的でわくわくする場所なんだ。

ここまで来て、市場をのぞかずに戻るという選択肢はないよな。


中央と東西にそれぞれあるという市場。

俺たちは東の市場へ向かった。


東の市場は石造りの平屋で、海沿いに細長く伸びている。

長すぎて奥行きが見えない。

これで中央市場より小さいってんだから、ザイオンはやばいな。


入ってすぐに目に飛び込んでくるのは新鮮な海鮮たち。

さっき食べたばかりのエビやホタテに加えて、カニ、イカ、タコ、色とりどりの魚。

魚はアジやサバなどのなじみのある魚の他に、真っ青な魚やオレンジの魚など見慣れない色をした魚も並ぶ。サーモンなどの大振りの魚は上から吊るされている。


そして様々な形をした貝。ハマグリやサザエに加えて、あれはアワビだろうか?

七輪の上でひたすら貝だけを焼いても楽しそうなほど種類が豊富だ。

圧巻!


魚介だけでなく、その先には肉や乳製品、調味料も並んでいる。

王都ザイオンの北側に住む市民は商店で買い物をし、南側の市民は市場で買う。

それが基本らしい。


「よし、リン。買うぞ!」

「かう~!いっぱいかって、クリストフたちとバーベキュー!」


リンにとってはこの大きな国は庭みたいなものなのだろうか?

別々の場所で活動していてもいつでも彼らに会えると考えているようだ。

実際、いつでも会えるんだろうな。


さて、何から買おう。

金もあり収納もある。どれも買えてしまう。

贅沢な悩みだ。


七輪やバーベキューでさっと焼いて食べられるものがいいな。

って、基本的にどれも焼いただけで食えるわ!悩む~!


「リン、どれがいい?」

無責任にもリンに丸投げする俺。


「これ~」

リンが鼻で指したのは牡蠣。

「あら、ワンちゃん目利きだねぇ。この牡蠣は今日だけ、生で食べられるよ。レモンを絞ってそのまま食べたらおいしいよ~」

市場のおばさんも一押しらしい。


「ワンちゃんじゃないよぉ」

リンが頬を膨らますが、おいしいものが並んでいるからか機嫌はよさそうだ。

「だろうねぇ、おしゃべりするワンちゃんはおばさんも見たことないからねぇ」

初めてリンと会った時に、しゃべる子犬にあんなに驚いた俺は視野が狭かったのか?

この世界の人たちの方が懐が広い気がするぞ。


しかし、オイスター。

これ、レストランで食べると一皿3千円とかするやつ。それが2個で1ギル?

「全部買います」


「お兄さん、全部?これは明日になったら火を通してね」

大丈夫ですよ、1年後でも生で食べます、なんて言わないけど。


「それとね、これ!」リンが指した先にあったのは。

リンさんや、それは伊勢海老と言いましてね、高級食材なんですよ。

1尾いくらだよ!10ギルかよ!…………買います。これも全部買います。

すげぇ、前世でも誰かの結婚式くらいでしか伊勢海老なんて食べたことないぞ。

安いな!


アンコウなどの食材はプロに任せよう。

「月のうさぎ」が海鮮料理の店なのかどうかわからないが、ザイオンには海鮮料理を出すレストランがたくさんある。前世での俺は大して料理をしていないし、今世は海のない町で18年生きてきた。魚料理は自信がない。

俺たちは気軽に調理できる海の幸を中心に買いあさった。


魚介の安さに舞い上がりつつ、どんどん買い続ける俺たちを、ヒューゴとスーザンはちょっとあきれながらも付き合ってくれた。付き合わせて申し訳ないと恐縮する俺に、

「こんだけ買ってくれると、見てるだけで気持ちがいいぞ」

と笑いながら、店員との交渉もしてくれる。助かる!


魚介の店が並ぶその先には肉屋が並んでいた。

ビルケッシュ領の肉屋と同じように鶏や豚や牛、加工肉が並んでいる。

え?ソーセージ1本2ギル?メイダロンの倍するぞ。

肉は自己調達なので買ったことはないが、肉もメイダロンの2倍のようだ。

魚介はこんなに安いのに……。


「山に囲まれたビルケッシュ領と比べると肉は高いだろ」

俺の怪訝な顔に気づいて、ヒューゴが説明してくれた。

「ザイオンの周りの山はずいぶん獲物が減ってしまって、馬車で1日、徒歩なら2日くらいのところまでいかないとなかなか狩れないんだよ。その分肉は高くなる」

日帰りで狩りができる環境じゃないんだな。


「代わりに目の前に海が広がってるから魚介が安いんですね」

「おうよ。だから山へ行ったら山のものを、海へ行ったら海のものを食うのが一番安くてうまい」


そうかー。そうだよな。

収納魔法のおかげで俺はいつでもどこでもおいしいものが食べられるが、出来る限りその土地のもの、その季節のものを楽しむのが人間らしい生き方かもしれない。


「とはいえ、ずっとここに住んでいる人は肉も食いたいからな。肉もよく売れるぞ。買い取りもビルケッシュの倍くらいする」

まじか!

あるぞあるぞ、旅の途中に狩った獲物がアクアスネーク以外にもいろいろと!


思わず鼻息が荒くなった俺を見てヒューゴが笑った。

「その顔はいろいろと持っていそうだな。買い取り窓口、案内するか?」

「うーん、どうしよう。今日はまだ到着したばかりだし、明日以降にします」


しかし、メイダロンでソーセージやベーコンを買いだめしておいてよかった。

倍だと思うとここで買う気がしない。

ケチじゃないぞ!コスパ重視と言ってくれ!


市場は広すぎて、全部を見て回るのは無理そうだ。

でも調味料の店は見たいんだよなー。

「醤油、さっきのホタテにかかっていた黒い調味料はどこで買えますかねー?」

魚介と醤油は最強の組み合わせだ。何はさておき入手したい。


「ああ、あの調味料ね。それならビクターさんに相談するといいわよ。というか、ビクターさんこそ、この件でカイトさんに相談したがっていたわ」

スーザンの言葉に妙に納得する俺。

やっぱり醤油にはリョージさんやビクターさんが絡んでいるんだな。


でも手に入りそうで嬉しい。

七輪でイカを焼いて醤油を塗って……、やばいよだれが出そうだ。


魚介を吟味し、交渉しながら買っていたら、かなり時間がかかってしまった。

市場の店は閉まるのが早い。

夕方にはまだ早い時間にどんどんと店じまいしていく。


「きょうはおかし、かえなかったねー」

閉まっていく店を見ながらリンが残念そうにしている。

「その代わりにおいしそうな魚介をいっぱい買えたぞ。クリストフたちとバーベキューするの、楽しみだな!」

「たのしみ~」


明日は菓子屋をめぐるのもいいな!コーヒーも探したいし。

ザイオンでの生活は始まったばかり。

おいしいもの探しも始まったばかり。


そして晩メシは気になる「月のうさぎ」へGO!

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