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底辺から掴み取る、自由でおいしい毎日  作者: KAY
第一章 メイダロン編
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料理をしよう

8日目の朝。

コーンスープとトマト入りスクランブルエッグの朝食。

食後に昨日差し入れた桃を切って出してくれた。


朝食後、俺とリンは買い物へ。

ジョージさんのパンは昨日のバーベキューで一瞬にしてなくなったし、皿もコップも全然足りなかったからだ。


「ジョージさん、おはようございます!」「おはよー」

まずはジョージさんのパン屋だ。

「お!カイトもリンも元気そうだな。おはよう!」


「丸パン、売れるだけ売ってください!」

そういうとジョージさんが首をかしげた。

「この前たくさん買ったばかりだろ?ゼットンさんのとこで朝食と夕食出てるんじゃないのか?足りてないのか?」


おっと、ゼットンさんに余計な疑惑が。

「朝晩、もりもりで出してもらってます!毎日、すげぇうまいです!」「おいしーよ」


ジョージさんのパンは昼メシ用なんですけど、他の冒険者の人たちと一緒に食べたりすると一瞬で消えるんですよ、そういうと「ああ」と納得された。

「あの4人組か。時々うちのホットドッグを買ってくれるよ。あいつらなら確かに一瞬だな」


ここはメイダロン唯一のパン屋だ。

俺が買い占めてしまうと他の人が買えなくなってしまう。

とりあえず丸パン10個だけ購入した。

「昼ごろまたおいで。ホットドッグも出すし、丸パンもまた焼いておくよ」

また来ます!そう言って次の目的地へ。


次に行くのは市場。

今日ならベーコンが買えるはずだ。


おお、あるある!2軒の肉屋が競うようにベーコンをどんっと置いていた。

直火であぶっても、スープに入れても、絶対うまいやつ!


1軒は以前解体を手伝ったリョーゼフさんの店だ。

100グラム3ギルのベーコンを2軒の店から5kgずつ購入した。

「おまえ、ベーコン10kgって業者が買う量だぞ」


いやぁ、そうなんだけど、パンもソーセージも俺の予想を上回るペースでなくなっていくんだよな。買える時にまとめ買いしておきたくもなるよ。

ついでにソーセージと焼き肉のたれも買い足した。

バターとチーズも200グラム20ギル、それぞれ購入。


それから雑貨屋へ。

「あら、ちょうどゼットンさんのところへお知らせに行こうと思っていたのよ」

頼んでおいた水がめが入荷されたらしい。

やった!これで湧き水飲み放題生活だ。今までも好きなだけ飲んでいたけど。


「今日は他にもいろいろとまとめ買いしたいんです」

木のコップと深皿大と中、スプーンとフォークをそれぞれ8個買い足す。

合わせて10個あればだいたいなんとかなるだろう。


この世界、木製品は圧倒的に安い。

皿やコップは安い順に、木製品 < どっしりとした陶器 < 薄い上品な陶磁器だ。


今の俺には最高級品の食器も買える。買えるけど……、まだいいかな。

焚火を見ながら、木のマグカップでホットミルクを飲むことに、なぜかロマンを感じている俺だった。


そしてもう一つの目的。そろそろ料理の作り置きをしたい。

アウトドアメシが肉だけというのはリンによくないからな!(親バカ……)


大鍋(120ギル)を3つ、フライパン(100ギル)ひとつ、包丁(100ギル)とまな板(5ギル)、木べら(5ギル)、お玉(45ギル)、そして何かと便利な木のトレーも4つ購入。


さあ、帰ったら厨房を借りて料理しよう!


「あ……」

雑貨屋を出たところで思い出した。

武器屋。


250ギルの剣でも、問題なく狩りができているので忘れていた。

どうしようかな。


「こんにちは~」

とりあえず店内に入る。


「カイトか。剣の調子はどうだ?」

お!俺の名前を憶えてくれていた!

「はい、調子いいです。グラスキャトルもマッドブルも一太刀でした!」

「見せてみろ」


俺から剣を受け取ると、おやじさんは皮の鞘から出してじっくりと検分した。

「魔獣と言ってもそいつらはほとんど魔力もないし、魔石も持たない獣だからな。この剣で十分だろう。だが、強い魔力を持つ本気の魔獣はさすがに無理だぞ」


本気の魔獣?それってあの、ドラゴンとか、バジリスクとか、ワイバーンとか、そういう伝説級のやつ?


いやいや、冒険者にはなりたいけど、そんな化け物と戦う気はないっすよ。

リンを危ない目に合わせたくないし。

そもそもめったに出ないでしょ、そんな伝説級。

俺は食い物になる獣を狩ることができれば十分なんだよ!


しり込みする俺を見ておやじさんは笑った。

「フェンリルを従えた男が何言ってやがる。神獣はそれらを凌駕する存在だぞ」

え?そうなの?ポケットに潜り込んでるこのチビがドラゴン超えなの?

いまいちピンと来ないな。


「たとえリンがそれを超える存在だったとしても、やっぱりリンを危ない目には合わせたくないですよ」


まあ神獣が負けることはないと思うが、お前さんの好きにすればいいさ。

「で、どうする?こっちの剣、買うか?」

おやじさんは先日勧めてくれた青い魔石のはめ込まれた剣を出した。


今の剣では無理だと聞くと不安になるよな。

いざという時の保険で買っておくか。まさかこれ、フラグ……、立つなよ!

伝説級の怪物はパス!


「この剣なら強い魔獣も一太刀なんですか?」

「いや、普通の人じゃ無理だ。お前の魔力と組み合わさって初めて切れる。この剣でも強い魔力を持つ魔獣だと、数回切りつけたら壊れるぞ」

3000ギルの剣でも数回で壊れるのか。恐るべしだな、怪物たち。


「伝説級と戦う気はさらさらないですが、買います……」

どこまでも後ろ向きな俺。

おやじさんは剣の手入れをした後、俺に渡してくれた。


「何かあったらいつでも来い」

何もありませんように!!



「ただいま帰りました」「ただいまー」

宿に戻り、ゼットンさんに声をかける。

「料理したいので厨房を借りたいんですけど」


奥からゼットンさんが顔を出した。

「おお、構わんぞ。使い方分かるか?」

「はい、大丈夫だと思います!」


手を洗ってエプロンを付け、食材や鍋を取り出す。

リンは調理台の上にちょこんと座って様子を見ている。


「何を作るんだ?」

気になるのかゼットンさんが厨房に入ってきた。

「えー、何作ろうかな?」


「こりゃまた豪華な食材だな」

調理台に並べた食料品を見てゼットンさんが驚いている。

「そうなんです。いろいろありすぎて、何作るか悩みます。狩りの途中でもさっと食べられて野菜も取れるスープを作りたいんですけど」


「鍋3つ分作るのか?」

そう聞きながらゼットンさんの頭の中でメニューが組み立てられていく気がした。

これはアドバイスもらえる流れだぞ!


「ひとつは野菜とベーコンの具だくさんスープだな。飽きがこない」

うんうん、俺もそれは作ろうと思ってました。間違いないやつ。


「肉団子入りトマトスープはどうだ?」

いいですね!がっつり系も欲しかったんです。


「あと一つは、まあ好みだな。クリームスープ系もいいし、かぼちゃのスープもいいし、時間をかけるならビーフシチューも作れるぞ」

どれもいいなぁ。でもリンが甘いもの好きだからかぼちゃのスープにします!


ゼットンさんがエプロンを付けて包丁を持った。

「え?手伝ってくれるんですか?」


「じっと見てるのは性に合わねぇ」

めっちゃ助かります!神、降臨!


気づけば料理長ゼットンの下で野菜を刻み続ける見習いの俺、という構図になっていた。

だけど俺も、だてに12年間あいつらにこき使われてきたわけじゃねぇ。

包丁さばきはイケてる方だぜ。


ひとつめのスープは、たっぷりのベーコンをよく炒めてうまみを出し、セロリ、玉ねぎの香味野菜を加えてさらに炒める。味は塩コショウのみ。人参とキャベツを入れて完成。


肉団子はボアとキャトルの肉をミンチにし、玉ねぎのみじん切りを合わせて成型。ゼットンさんが小麦粉を提供してくれた。具はジャガイモ、人参、ズッキーニ、いんげん。トマトで煮込み、塩で味を調える。隠し味に砂糖を少々。熱々スープにチーズをのせてもいいな。


かぼちゃのスープは玉ねぎとバターを炒め、かぼちゃが柔らかくなるまでじっくり煮込む。ざるを貸してもらって裏ごしをし、牛乳で整える。


「せっかくボアやキャトルの骨があるんだから、スープストック作っておけばさらにコクが出るんだけどな。今日のところは上出来だろ」

十分です!


「これでリンやクリストフたちに野菜も食わせられます」

そう言うと「お前はあいつらの母ちゃんかよ」と笑われた。

クリストフたちは年上だが、リンの親代わりなのは間違いないな!


お礼に、とゼットンさんに野菜をもうひと箱渡す。もらってばかりだからと遠慮されたが、減らないんですよ、野菜。調子に乗って20箱も買ったけど、これだけスープを作っても一箱分しか減らない。ぜひぜひ使ってください。


せっかくなのでゼットンさんとムーラさんも一緒にお昼にしませんか、と誘った。

「その前にちょっとジョージさんのパン屋さんに行ってきます。リン、どうする?」

「いくー」


すぐそばなのでコートも羽織らず、リンを抱いてエプロンのままジョージさんの店へ。

「丸パンとホットドッグ買いに来ました!」


「おや、料理でもしてたのかい?」

店番をしていたのは奥さんのルーシーさんだった。

「はい、ゼットンさんとこの厨房を借りてました」


俺のためだろうか、いつもより少し多めにパンが焼かれていた。

丸パン20個とホットドッグ10個を購入し、急いで宿へ戻る。


食堂ではムーラさんが小さめのボールに3種のスープを注いでくれていた。

食べ比べですね!


焼きたてのパンと一緒に3つの味を楽しむ。

「リンはどれが一番好き?」

「うーん、ぜんぶ!」

ええ子や。



「リン、午後は何をする?」

食後、紅茶を入れて菓子を食べ、まったりしているリンに尋ねた。

「おなかいっぱいだから、なんでもいいよ~」

なるほど。


「追加の水がめが手に入ったから水汲みに行くか?せっかく瑠璃いちごが手に入ったからサマンサさんのところに持っていきたいけど、薬草の調合に時間がかかるから次は5日後にしろって言われてるしなー」

リンに話していたのだが、ゼットンさんが俺の言葉に反応した。


「おい、カイト、瑠璃いちご見つけたのか?」

え?なんかまずかった?「はい、昨日見つけました。それって何か?」


「それ、すぐにコリンバースに持っていけ」

え?え?なんで??


ゼットンさんの話では、現ビルケッシュ領主の母であり、前領主夫人が心臓の病で臥せっているとのこと。治療薬は瑠璃いちごしかないが、めったに採れるものではなく、王都に問い合わせても在庫はないの一点張りだとか。


「今の領主はなかなかできた人物らしく、領民に無理難題を言うことはないんだが、今回だけは皆に頭を下げられたそうだ。何としても見つけてほしい、と」

いい話じゃぁないか!母のために頭を下げる領主。


家族愛に飢えている俺には直球ドストレートに突き刺さる話だ。

「行きます!リン、行こう!」


コートを羽織り、大きくなったリンにまたがる。

「行ってきます!」

「おお、気をつけて行ってこい。うまい晩メシ用意しとくからな!」

「ばんごはん~!」

その言葉一つでご機嫌になったリンが、跳ねあがって走り出した。


さあ行こう!


コリンバースへ行く前に、ガルレイに立ち寄る。

「サマンサさん!」


「おや、カイトかい。次の買い取りは5日後って言ったろ?」

「そうなんですけど、瑠璃いちごを見つけまして。コリンバースに届ける途中です」


俺の言葉に、サマンサさんはのけぞった。

「瑠璃いちご……、確かにあんたたちなら見つけられるかもしれないねぇ」


どれだけ採れたんだい?そうサマンサさんに尋ねられ、俺は瑠璃いちご山盛りのかごを出した。

「カイト……」

あれ?なんだろ?


「瑠璃いちごってもんは普通採れても片手だよ。なんだい、かごいっぱいって!」

えぇー、だってそこにあったし、採れちゃったし。


「とりあえず、姉弟子の娘さんのところに持っていけばいいですか?」

ああ、あの娘なら調薬して領主のところに届けるだろうよ、そう言われて俺たちはサマンサさんの店を後にした。


領都コリンバースまでの道を一気に駆け抜けるリン。

リンにまたがったまま、領都の街中を走り、薬局まで来た。


「こんにちは!」

「あら、あんたたち。サマンサさんのとこの」

薬師の女性が顔を出した。


「瑠璃いちごを持ってきました!」

そう言ってかごいっぱいの瑠璃いちごを出す。

やっぱりこの量は規格外だったらしい。女性が目を白黒させている。


「すごいわ、すごすぎてどうしていいか分からないくらい……」

少し迷った後、彼女は瑠璃いちごの三分の一を買い取ってくれた。2800ギル。

「でも、これはお金の話じゃないのよ。あきらめていた命が助かるの。本当に、本当にありがとう!」そう言って俺の手を握り締めた。

残りは他の町で困っている人に売ってあげて、と。


人助けできた喜びに、俺とリンはご機嫌でメイダロンへの帰路につく。


約束通り、ゼットンさんはおいしい晩メシを用意してくれていた。

かぼちゃコロッケと、枝豆とコーンのコロッケ、メンチカツ、トマトサラダ。

エールを片手に、幸せな時間を過ごす俺たちだった。


この時、俺は予想もしていなかったんだ。

助けたはずの領主から、あんな裏切りをくらうなんて。

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