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底辺から掴み取る、自由でおいしい毎日  作者: KAY
第一章 メイダロン編
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雨の一日

リンと一緒に幸せな眠りについた翌朝。

俺は雨の音で目を覚ました。

今日は雨か……。


雨は嫌いだ。いや、嫌いだった。


あの頃、どれほど冷たい雨が降っていても朝の水汲みから俺の一日は始まった。

泥だらけになって冷えきり、ようやく戻ってきた俺にあいつらは次から次へと仕事を言いつけ、その仕事が気に入らないと言っては俺を殴った。

雨で狩りに出られない腹いせだったのかもしれない。


しとしとと降る雨を見つめ、過去の負の感情に引きずりこまれそうになった俺は慌てて起き上がった。忘れる、そう決めたじゃないか!


よし!今日は今までの人生で一番楽しい雨の日にしてみせる!

一番楽しい日……、って何をする?えーっと、そうだな、何もしないをしよう。

今日は何もしない一日だ!


洗濯もしない。水汲みもしない。狩りにもいかない。

ご飯を食べて、本を読んで、お茶を入れて、菓子を食べて……。

ふ、不健康だな。デブまっしぐらだ。

まあ多少太ったところでようやく人並みだが。


俺はもう一度ベッドに横になり、ちっちゃく丸まって眠るリンの寝顔を見つめた。

ああ、この瞬間が最高の幸せかもな!

とはいえ、リンだけじゃなくていつかは嫁も……。

おっと、また妄想の世界に引きずりこまれるところだった。


こんな朝はリンにも好きなだけ寝させてやろう。

走る時と狩りの時以外、基本的にリンはずっと寝てるけどな。


俺はリンを起こさないようにそっと抜け出し、裏庭に降りた。

雨を避けながら井戸水で顔を洗って歯を磨く。


食堂をのぞくと、客はまだ誰もおらず、ゼットンさんが朝食の支度をしていた。

「おはようございます、ゼットンさん」

「おお、おはよう!」


「誰もいないんですね」

「雨だからな、みんなも今日は休みだろ。まだ寝てんじゃねぇか?」

「リンもまだ寝てるんですよ~。ご飯っていえば起きると思うんですけど」

急がなくてもいいさ、そう言ってゼットンさんは笑った。


雨の日はゆっくりとした時間が流れるんだな。


部屋に戻り、昨日買った本を取り出す。

ページをめくると、この世界の情報が俺の頭に流れ込んできた。

この町と隣町しか知らない俺には、この国の事情もその他の国のことも、すべてが新鮮だ。


活字にも情報にも飢えていたのか、気づけば夢中で読みふけっていた。


「カイト~、おなかすいた」

いつの間にかリンが起きたらしい。

「おはよう、お寝坊さん。朝メシ食いにいくか!」


食堂に降りると、いつもの4人組の冒険者が朝食を終えてのんびりしていた。

彼らも今日は休みの日にするようだ。


朝食はいんげんの牛肉巻きとトマトスープ。

いただきますの掛け声とともに食らいつき、一気に食べる俺とリン。

メシの時間はまだゆったり優雅にというわけにはいかない。


「ごちそうさまでした、ゼットンさん。いつも野菜たっぷりで嬉しいです」

「分かってくれるか、俺の苦労が。ほっとくとあいつら、肉しか食わねぇからな」

ゼットンさんはそう言って、4人組の冒険者をあごで指した。


20代前半の男性二人と10代後半くらいの男性二人の4人組だ。

そりゃ、肉さえあればいいだろうよ。


ゼットンさんの言葉に、4人組は苦笑いをしている。

「ゼットンさんのおかげで、俺らメイダロンにいる時が一番健康的っす」

「他の町にいる時はだいたい屋台の串焼きだけで生きてるからな~」

うん、見たまんまだ。


そうか、この人たちは他の町へも行ってるんだよな。ちょっと話を聞きたいな。

俺は収納からやかんを取り出し、山の水を入れてゼットンさんに声をかけた。


「すみません、お湯を沸かしてもらえますか?七輪も買ってきたんですけど、ここでは火を起こさないほうがいいですよね?」

「まあ七輪じゃぁ火事にはならんだろうが、お湯なら沸かしてやるよ」


よかったらゼットンさんも皆さんも、一緒にお茶と菓子いかがですか?

そう4人組にも声をかけると彼らよりも前に「おかし!!」とリンが反応した。ちゃんとリンの分もあるから!


ゼットンさんがお湯を持って戻ってくると、ムーラさんがクッキーを持って一緒に出てきた。

慌てて俺も菓子を取り出して並べる。


2種の紅茶の缶を取り出す。どっちにしようかな。

「ミルクを入れるならアッサム、ストレートならダージリンがおすすめです」

するとゼットンさんが不思議そうな顔をした。


「カイト、お前、これまで紅茶なんて縁遠い生活だったろ?よく知ってんな」

おっと、そうだった。ゼットンさんにツッコまれ、焦る俺。

「お店の人の受け売りですよ」笑ってごまかす。やばい、やばい。

紅茶だけじゃなく、食べ物の種類はほぼ前世と同じだから気を付けないとな。


お菓子と一緒に楽しむならストレートがいいわね、とムーラさんが提案し、ダージリンを入れる。

ムーラさんが人数分のカップを持ってきてくれた。


「俺たち、なんも用意してなくて……」

4人組が申し訳なさそうにしているが、俺が彼らの話を聞きたいのだ。


リン、紅茶は飲めるかな?

深皿に入れて舐めさせると、しぶい!と顔をしかめられた。

それなら、とはちみつと牛乳を入れてやると「おいしい!」と飲み始める。


そんなリンの様子を微笑ましく見ながら、大人たちはお茶を片手に菓子をつまむ。

おお、ゆったりのんびり優雅な時間だ!

クッキーがサクサクでおいしい。リンも幸せそうにほおばっている。


「あ、昨日屋台で買ったこれもあるんです」

収納から芋団子を出してみると、揚げたてホクホクのまま保存されていた。

当然、男子4人はクッキーより芋団子だ。

「すっげー、揚げたてだ。カイトさんの収納、どうなってるんすか!」


「カイトでいいですよ、俺の方が年下ですし」

そういうと「いやいや、俺らこそ夕べもその前もごちそうになってばっかりで」

とお礼を言われてしまった。


「ごちそうしてないですよ、皆さん金払ってるじゃないですか」

素直にそう思っただけなのだが「普通、12ギルでステーキやローストビーフ、食えないからな!」と逆に説教されてしまったよ。


4人はクリストフとヨークの兄弟、ベレンとシモンの兄弟、幼馴染2組の兄弟でチームを組んでいるそうだ。


俺は昨日買った地図を広げた。

「ここが王都ザイオンだろ?東に遠く離れたここが今いるビルケッシュ領。で、俺たちが生まれ育ったのはこのあたり、カリオテ村」


リーダー格のクリストフが、王都ザイオンから100kmほど離れた場所を指さした。ザイオンはこの国の最も南、海に面して栄えている王都だ。メイダロンのあるビルケッシュ領はそこから北東に400kmほど離れていて、カリオテ村はそのルート上に位置しているようだ。


「温暖な地域だから農業には向いているんだけどさ、それでも貧しい村だよ。王都に売りに行くにも徒歩で3日かかるし、近隣の町や村では野菜は余ってるしさ。自分たちが食べる芋や野菜に困らないだけマシだけど、塩を買うのだって金が要るだろ?年に何度か王都まで麦や芋を荷車で引いて行って、ようやくわずかな金を得る程度なんだ」


そこで4人は、幼い弟や妹に仕送りするため、冒険者になったのだという。

「でもなんでこんなに遠いメイダロンへ?」


「冒険者になってからいろんな町を回ってるんだけど、結局ここが一番確実に稼げるんだよ」

へぇー、それは意外だ。こんな何もない田舎町が。


彼らが言うには、王都の周りだと売りやすいが競争が激しく、なかなか獲物に出会えないとのこと。王都以外でもやはり大きな街やその近くでは獲物は狙いづらく、田舎に行けば行くほど魔獣を狩れる確率が上がるそうだ。


中でもビルケッシュ領は自然豊かで、というかほぼ山だから確実にリトルボアは狩れる。しかもメイダロンまでくる冒険者はほとんどいないからライバルもいない。狩った分だけ確実に買い取ってもらえるのだとか。


ゼットンさんの宿で広めの部屋を4人で借りている彼らは、1日でボア2頭狩ることができればおつりがくるそうだ。


「ここだと、ディアが狩れることもあるし、ベレンとシモンが弓使いだから、鴨が狩れることも多いしさ。毎日ゼットンさんのうまい飯食って、エール飲んで、それで少ないながらも金がたまるなんて、ここくらいしかないよな」


「他の町だと、金がなくて野宿することもしょっちゅうさ。いろんなとこ行っては結局ここに戻ってきちゃうんだよ」

冒険者稼業もなかなか大変だ。世知辛い……。


金がたまるとすぐに実家に仕送りしてしまうという彼ら。

いい奴らなんだろうな。


「カイトは、これからどうすんだ?」

気づけば俺たちはすっかり打ち解けていた。

「うーん、あいつらの処遇が決まってからかな。俺の話は聞いてるんだろ?」


クリストフたちは日中狩りに出かけているから、俺が彼らと会ったのはこの宿に来てからだ。だけど小さなこの町で、言葉を話すフェンリルを連れ、とんでもなく大きな収納能力を持っていたら、いやでも俺の噂は耳に入っているだろう。


「まあ、いろいろと。大変だったらしいな。缶に入った紅茶なんて出されたらどこの貴族だよ!って感じだけど、でも明らかに俺の妹や弟より痩せてるもんな、カイト」

缶入り紅茶は貴族の象徴か。


「あいつらの罪状を見届けたら俺もいろんなとこ回ってみようと思ってる」

そう言うと、みな賛成してくれた。


「王都ザイオンには行ったことあるのか?」

「ザイオンどころか、ビルケッシュの領都コリンバースですら行ったことないよ。俺の知ってる世界はメイダロンとガルレイだけだ」

マジか、それは楽しみだな。世界が広がるぞ~。そう言って肩をたたかれた。


ザイオンまでは馬車で7~8日、歩きなら12日くらいかな。まあ、途中途中に町や宿があるから、この国を旅する間はだいたい野宿する必要はないぞ、金さえあればだけどよ!クリストフが笑った。


「ねえ、リン」

俺は気になっていたことを聞いてみることにした。

「リンは俺を乗せてどのくらい走れるの?」


「どのくらいって?」

「んーっと、そうだな、朝から暗くなるまでずっと走れる?」

「はしれるよ。ずーっとはしれる。おなかすいちゃうけど」


え?それって……。

「途中でごはん食べたら、いつものあのスピードでずっと走れるの?」

「うん!」


地図から判断するとザイオンまでは約400km、レーヴェンス領まで500km、その気になれば1日で行けちゃうんじゃないだろうか?

それってすごい!すごいけど、旅のだいご味はないよなぁ。微妙だ。


「何の話だ?」

ここまで若者の話を黙って聞いてくれていたゼットンさんが口をはさんだ。

「リンの背中に乗るとかなり早く走れるんですよね。なんか頑張ったらザイオンまで1日で行けちゃいそうな気がします」


お前なぁ……、ゼットンさんが呆れ、4人組が茫然としている。

ま、まあ、俺としては収穫の多いティータイムだったよ!



昼ごろ、雨は小降りになった。


「リン!昼メシ食べに行こう!屋台のスープ屋、今日やってるかな?」

「おひるごはん~」


出かける準備をしながら4人組に声をかける。

「クリストフたちは昼メシ食べに行かないの?」

「雨の日は串焼き屋やってないからなー。俺らはパス」

野菜たっぷりスープには興味がないらしい。ぶれないやつらだ。


商店も屋台も市場も一か所に固まっているメイダロン。

このくらいの小雨ならほとんど濡れないくらいだ。


「ジョージさん、こんにちは!」「こんにちは~」

まずはジョージさんのところでパンを買おう。


「おう、カイト、リン!グラスキャトルを狩ってきたそうじゃないか。おかげでうちも今夜は久しぶりのビーフシチューだ」

もしかしたら今夜はメイダロン中がビーフシチューなのかもしれない。


「ジョージさんのパンがなくなるとリンが悲しむんで、ちょっとまとめ買いしてもいいですか?」

毎度あり!たくさん買ってってよ。

威勢のいい声を受け、丸パンを10個と、ホットドッグをあるだけ全部10個買った。


おっと、忘れるところだった。

ガルレイで買った菓子を土産に渡す。

「カイトから土産をもらう日が来るとはなぁ」ジョージさんが感慨深げだ。


この程度の土産ではジョージさんへの恩返しにもならない。

「また買ってきます。だからずっとここで元気でパン屋さんやっててください!」


どこか遠くの街に行って土産を買って帰って来た時、みんなが変わらずにこの町にいてくれたらどれほど嬉しいだろう。

でもその前に、この町を離れる時にはジョージさんのパンを爆買いして収納に入れていこう。ジョージさんのパンがないとリンがむくれるからな。


次は市場だ。

「ブリック~、おみやげ~」

俺より先にリンが声をかけた。あれ?ブリックだけ呼び捨て?


「おお、リン!俺にお土産買ってきてくれたのかぁ!」

ブリック、一応俺もいるんだが。リンしか見えてないよ。


よーしよし、いいこだなぁ。ブリックがリンの頭を撫で続けている。

ブリックの前にリンがいると永遠に動けない。


「リン、屋台行くぞ!」

「いく!」

リンにとっては、ごはん > ブリック、のようだ。

「リン~、もういっちゃうのか~」ブリックの声は無視である。


スープ屋の屋台は雨でもやっていた。

「こんにちは~」「こんにちは!」

「おお!いらっしゃい!」


そういえば、自分の金で最初に買ったのがここのスープだったな。

今日も変わらず豆と野菜とベーコンのスープである。

「今日だけは牛のスープにしようかと思ったんだけどな。みんな今夜はビーフ料理らしいから、結局ここはいつも通りだ」そう笑うおじさん。


「今日もおチビちゃんは大を頼むのかい?」

リンの反応を伺いながら話しかけてくる。確信犯だ。

「むぅぅぅ、おチビじゃないし……」

そういう俺も、リンの反応を見て楽しんでいるのだが。


もちろん俺たちはそれぞれ大ボールを頼み、ジョージさんのパンと一緒にボリュームたっぷりのスープを堪能した。


さて次はマーティンとフランクさんのところだ!



「こんにちは~、って、あれ?フランクさんだけですか?」

詰め所に行くと、デスクに向かって書き物をしていたフランクさんが顔を上げた。

「カイトか」


「ガルレイに行ってきたんで、フランクさんとマーティンに土産買ってきたんですけど、マーティンは?」

フランクさんはペンを置き、俺に椅子をすすめてくれた。

「そりゃ嬉しいな。でもマーティンは昨日からレーヴェンス領に出張調査で留守だよ」


レーヴェンス領……、ってことは俺の誘拐に関する調査だよな。

「それは遠くまで大変ですね、馬車で10日でしたっけ?」


「馬車だったらまあそうだな。でも警吏隊の場合は馬を飛ばして、途中で馬を替えながら走るから2日で着くぞ。まあ、初めての早馬出張の時はたいてい尻がやばいことになるけどな」


ちょっと意地悪そうな顔をしてフランクさんが笑った。

どうやら新人警吏が通る登竜門のようだ。

それって、俺がリンの背に乗って走り続けても尻がやばくなるのかな?

一抹の不安を覚えてリンを見ると、首をかしげてリンも俺を見た。

いや、リンはふさふさだから、きっと大丈夫だ!


「マーティン、一人で調査に行ったんですか?」

マーティンの家も裕福とは言えない。彼もこの町からほとんど出たことはないはずだ。初めての出張で一人はさすがに不安だろう。


「いや、調査は基本的に2人以上で組んで行うことになってるんだ。でも俺がここを離れるわけにはいかないから、領都コリンバースの先輩警吏に応援を頼んで一緒に行ってもらってる」

そうか、先輩と一緒なら心強いな。マーティン、尻の無事を祈る!


「カイトのおふくろさんと無事に会えるといいけどな」

俺の記憶の奥で笑顔を見せる母さん。

元気にしているのだろうか?

今もまだ俺のことを想ってくれているのだろうか。


「あいつらはどうしてますか?」

ゴルデス夫妻が素直に罪を認めるとは思えない。

「予想通り、否認してる。でも証拠品があるからまあ有罪は間違いない。今はコリンバースの留置所に移送されて、そこで取り調べを受けてるよ」


「他の罪状はないんですよね?なんで俺だけだったんだろう……」

そのことがずっと引っかかっていた。

わざわざ500kmも離れた村まで行き、子供を一人さらってくるのは普通じゃない。


町の人からの評判も決して良くはないが、トラブルを起こすわけではなかった。

それなのに俺に対する仕打ちだけは鬼畜の所業で、深い怨念のようなものを感じるのだ。


「そこは俺も疑問に感じてるよ。しかしあいつら何もしゃべろうとしないからなぁ、動機まで調べるのは難しいかもしれん」


分からないままなのも悔しいな……。

思わず黙り込んでしまった俺を励ますように、バシンっと背中をたたかれた。

「お前はこれからのことだけ考えればいいよ。キャトルを狩ってガルレイまで売りに行ったって?活躍じゃないか。おかげでうちも夕べはステーキだったぞ!」


おお!警吏隊の所長ともなれば霜降り肉が買えるんだな!

「ゼットンさんの宿ではローストビーフでした。今夜はビーフシチューです!」

「うちも今夜はビーフシチューだってかみさんが言ってたな」

うん、メイダロン中ビーフシチュー説、確定。


「マーティンが戻ってくる頃、また顔出しますね」

フランクさんとマーティンの分の土産を渡し、俺たちは詰め所を後にした。


さて、何にもしない一日。まだまだ昼過ぎだ。

宿に戻ると、クリストフたち4人組がカードゲームに興じていた。

「カイト、お帰り!一緒にやるか?」


この世界のカードゲームは知らない。

「えっと、やったことないんだけど」

「数字さえ読めりゃ、簡単だよ」


説明してもらうと、ほとんど前世のトランプと同じだった。

1から10までのカードが4枚ずつ、悪魔と呼ばれるジョーカー代わりが2枚。

彼らが遊んでいたのは悪魔カードを1枚使ったババ抜きだった。

それならできるぞ!


4人の中では表情を隠せないヨークがダントツに弱いようだ。

悪魔カードに視線がいってる。分かりやすい奴だ。

「くっそ、もう1回!もう1回!」

負けては再挑戦を挑んでくるヨーク。


「他の遊びはないの?」

あるにはあるけど、ギャンブルだから俺らはやらないようにしてるんだよね、というクリストフ。どうやらポーカーのような遊びらしい。意外とまじめだ。


「じゃあこんなのはどう?」

俺は大富豪を紹介してみた。革命も取り入れた本格的なルールだ。


「なんだ、これ。初めて聞いたぞ」

「カイト、カードゲームはやったことないって言ってなかったか?」

ベレンとシモンのツッコみはスルーである。


あっという間にハマった4人。

大富豪・富豪・平民・貧民・大貧民。俺を入れてちょうど5人だ。

途中でお茶を入れ、菓子をつまみ、ジョージさんのホットドッグも食べながら、日が暮れても遊び続けた。


「おい、お前ら。メシ食うのか食わねえのか!」


ゼットンさんに怒られてようやく終了、そしてそのまま夕食。


「ご馳走してもらってばかりだから」とクリストフたちにエールを奢ってもらい、俺たちはビーフシチューを堪能した。

2日間かけて煮込んだシチューはトロトロの絶品!

午後中ずっと俺の膝の上で大人しくしていたリンも、ご機嫌でビーフシチューのお皿に顔をつっこんでいる。


何にもしない最高の一日は、こうしてゆったりと更けていった。

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