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ラクマカで初めて退治依頼を請ける

夕暮れの光で赤く染まった街並みのラクマカに入り、門内で小休止したあと、立ち上る。

街の中心へは入っていかずに、街の北縁を西へ抜けて、すぐに小湾の浜辺へ出る。

南下して狭い砂州へ。

白い塗装の剝げた木造外壁の官舎へ入り、メガネの小母さん職員に声を掛け、依頼の完了を報告した。


「こんばんはー、依頼完了報告に来ましたー」

「はーい♪」


トモコが依頼札を提出して、カツトへの手紙配達の分40、ネフワアへのヤムジッダさん護衛の分30の、合計報酬銀貨70枚を受領。

すぐに仲間内で完全分配し、銀貨14枚ずつ貰って巾着に仕舞い込んだ。


「これであとはカツトへ戻って護衛を済ませた報告をすれば良いのか」

「そうね」


そこへメガネ小母さんが口を出して、


「それならまた北へ行くんでしょ? だったらついでに今度こそ退治依頼を請けてよ~」

「はーい。野犬退治で良いですか?」

「勿論、何でもいいわよ~」


そういうわけで、街の北の野犬退治を引き受けたが、


「今回は或る程度の間引きでいいから、とりあえず百匹お願い♪」

「わかりました」

「期限は21日。報酬はスタッグ銀貨440枚」

「退治した証拠品って何がいいんですか?」

「証拠品なんて要らないわよ?」

「え? でも……」

「完了手続きの時に解るから」

「そうですか、ならとにかく退治して来ればいいんですね」

「そうそう♪ 自分で数えて間違いのないようにしていれば、それでいいの」

「分かりました」


とにかく退治に専念して百匹の野犬を屠って戻って来れば良い、と言われたので、せめて明日から起算してもらうように頼んだ。


そのまま官舎近くの林に少し入ったいつもの場所で野営する許可を貰い、廊下の掲示板でついでにこなせる依頼がまた出ていないか確認するが、カツト迄の区間で都合よい配達依頼は無かった。


----


翌日、雲に覆われた空の下、荒野を吹く風にマントを靡かせて北上する。

足元から立つ土埃に目を留めたのか、山賊が喚きながら襲い掛かってくるのがまだ遠いうちから見えた。


「頭の悪い奴らだなァ」

「頭の良い者が山賊なんかやらないでしょ」

「油断するなよ、七人で槍構えて突っ込んで来てるんだぞ!」

「前はおれに任せろ!」

「がんばって~!」


言いながら、トヨが後で弓の準備をして、前方でマサが楯を構え、トモエコは楯の蔭で荷物を守りながら投石や火の準備をして、ぼくはマサの後ろで棒網を徐ろに廻し始める。


奴らが荒野から突っ込んでくる前に、ぶんぶん大きく網を振り回して威嚇する。

が、構わずに突っ込んで来る。

戦意が高い。

戦意というよりも、獲物への食欲か。


「なんだあっ、おまえらーっ!」


と怒鳴るマサが敵意を一身に集め、山賊どもはマサを串刺しにしてやろうとばかりに、正面とその少し左右から密集して突っ込んで来る。

マサを援護すべく、マサ背後、少し右に寄って、棒網で最右翼を標的にする、とトヨがそいつの隣へ矢を飛ばし、突進コースをすぐには変えられない山賊が一人、射貫かれて倒れ込む。

そのタイミングで網を地面へ低く飛ばして、最右翼の奴の脚を捉えて引っ張り、引きずり倒した。


右翼の二人を排除したが、残る五人が命がけで転けもせずに突っ走って来るや、槍先を揃えてマサへ突っかける。

そのうち二本は楯で受け止め、楯が足りない分は斧で一本引っ掛けて躱し、ぱっと下がって残る二本も楯を動かしてバラッといなすと、斧で引っ掛けられた勢いのままに突進してきた奴を斧で迎え撃つ。

それでマサが一人倒したが、まだ四人いる。

最初に受けた二人は突進の勢いが殺がれたが、いなされた左翼二人は突っ込んで来てマサの楯へ手を掛けた!


その最左翼の奴にはトヨが二射目を撃ち込んで倒す。

今や楯を掴まれてしまったマサだが、すぐに斧で打ちかかり、男が防いだ腕へ斬りつける。


その隙を狙ってまたもマサへ槍を繰り出そうとした中央の二人だが、転ばした奴から既に網を引き抜いて回収した俺が、再び棒を回して勢いをつけるや、即座にその足元へ網を飛ばして一人を引き倒す。


残る一人の槍を、マサは盾の陰に跳び込むように、ぱっと体を右に開いて躱す。

そこから止まらずに膝を曲げて腰を低くして、敵の懐へ、楯の横縁を木の槍に擦りつけて押し込みながら跳び込み、相手の膝上へ斧を喰い込ませれば、敵は堪らずに倒れ伏す。


そのまま、転んだ敵が起き上がろうとするのへ、次々にもぐら叩きの如く襲い掛かって叩き伏せるマサの動きが止まらない。

野犬相手に鍛えられた素早さだ。

あっという間に三人をガッ、ガッガッと倒してしまうと、その他のまだ生きてる敵にも一撃加えて逃げられないようにしてしまった。


トヨが射貫いたのも含めて、敵はまだ誰一人として死んでこそいないが、動けない重傷者、瀕死の者ばかりになり、呻き声や悲鳴が響いている。


「じゃ、俺が」

「おゥ」


と、責任もって拷問する。

巣窟の場所だの、そこに捉えられている被害者の数だの、仲間の数だの、ボスや幹部のことなど訊きたい事を全員から訊き出すと、纏めて一気に処刑していく。

それから僅かなお金を骸の懐から奪い取ると、どーでもいー戦利品なんかで土埃を大きくしたくないから、今回は奪わずに放置することにして、死骸は街道から少し引っ張って行って、枯れた草むらの蔭で、全員を尻から下腹部へ貫く変則メザシ状に纏めておいて、目印となるように木の槍を突きたてておき、街道脇の草も結んで印としておいて、先へ進む。

うまくすれば犬や小鬼にも持って行かれずに、そのうち骨素材くらいは回収できるかもしれない。


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