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カツト村まで護衛と配達

翌日も晴天。


微風の中、はぐれの野犬が一、二匹うろついていた以外、道中なんの襲撃や遭遇もなく、街道に歩みを進めた。


平穏なので気が緩んで来る。

口も緩む。

マサが、


「お腹空いて来た」

「あの犬、弓で仕留めておけばよかったかなァ」

「これあげるから、がんばろ~」


トヨが結果論を言い出すのへ、エコが取り出した酸っぱい草をあげて、黙って周囲に警戒の目を走らせていたぼくもついでに一枚貰って噛み噛み、頭スッキリ。


--


無事に午後の早いうちにカツト村に到着。

アイレイさんはニコニコしながら依頼札交換を済ませてくれた。

トヨやぼくが周囲を警戒し続ける中、トモコが頭を下げて


「今後ともよろしくお願いいたします」

「これから急ぎの用を済ませたら、また明日にも帰りたいのだけれど、帰りも依頼して良いかしら?」

「それは、是非ともお願いしたいところです」

「それじゃ、兵営迄一緒に行きましょう」


それからまっすぐ皆で兵営に行って、依頼人さんが書記さんの部屋に入って往路の護衛依頼完了手続きをしている間に、ぼくたちは廊下で急いでごそごそと装備を外す。

楯や背負い籠を足元に置いて鎧を脱ぎながら、追加でやれる仕事が無いか、廊下の掲示板をチェックするのも忘れない。


「あ、ネフワア村まで小荷物の配達だってさ。期限11日、報酬銀貨15枚、安いなあ」

「でも依頼人が村人だから仕方ないね。11日って、ダイジョブ?」

「明日請けるとして、明日から11日でしょ?んー……ラクマカからの依頼を先に済ませないといけないし……ギリギリね」

「ラクマカまで遅滞や延泊なしで片道四日だからね、よほど急がない限り」

「まあ、小荷物の程度にもよるけど、荷物が増えたら遅くなるし」

「でも、ネフワアで荷物を落とせば身軽になるわけだし、急げるわけだから、請けようか」

「いや、やめとこうぜ」

「おや、トヨにしては珍しい」

「いや、少額依頼でもしも失敗して信用落としたらつまンねえだろ」

「それもそうね、やめておきましょう」


依頼完了手続きを済ませた依頼人さんが、今度はその場で次の護衛依頼手続きもして、トモコの一党を指名するということで、廊下に居たぼくたちも呼ばれたので、中に入り、請負手続きをした。

予め装備を脱いでおいたので、烙印と旅券をすぐに見せる事が出きて、円滑に処理が進んだ。

ついでに手紙の配達も済ませた。


また同時に、街道野営地点から望める範囲で小鬼が夜に現れて、何かと争って逃げ散っていたことを報告。

更に今夜兵営の丘の下の広場で野営する許可を取る。


廊下に出て、兵舎を出ながら、依頼人さんと簡単に明日の合流について、夜明けに宿屋前と取り決めて別れた。



ぼくたちは兵営の丘の下の広場へ行く。

場所取りすると、交代で洗濯と水浴へ。


広場の縁に転がってる石を拾って来て積上げ、焚火を熾し、壺に水を汲んで来て、ぼちぼちと夕食の準備。

楯の追加装甲板の上に予備の板を重ねて、ネフワアで買っておいた野菜の、野営で使った残りを切って、煮込む。


「もうこれでお終いだから、今のうちに買って来て~」

「うん、それじゃ行って来るから、トヨ、マサ、用心棒と荷物持ちよろしく」


と野菜を買い足しに三人が午後の市場へ出かけたあと、エコと二人でお留守番。


「ねえエコ」

「な~に?」

「手拭そろそろ新調したいから、布地買いに行かなくてよかった?」

「うん、ネフワア村の方が安いから」

「それ、この前の話だよね?」

「今まで、大体いつもネフワア村の方が安かったよ~」

「へ~、そうなんだ」


駄弁りつつ、皆の帰りを待つ。


--


その頃、トモトヨマサたちは……


「まいどありー」

「うん、こんなものでしょ」

「じゃあ、帰ろうか」

「うし」


そうして帰ろうと少し歩いているうちに、大道芸人を観客が囲んでわいわいがやがや、という処へ行き会った。

高い高い竹馬のようなもので器用にバランスをとり、手で棍棒をひょいひょいひょい、と軽々とお手玉をしている。


「おー、凄いものだなあ」

と感心するマサだったが、トヨは

「おい、懐が御留守だぞ、感心してみる前に、しっかり袂を抑えとけ」

「おっと、いけない」

「行きましょう」


こういう場所では余程気をつけないといけない、と思い出して、賑やかな街角に心惹かれつつも、戻る足を速める。


--


「お待たせー」

「お帰り~」

「良かった、何にもなかった?」

「なんか、芸人が居てさ、足に長い棒をとりつけて凄くのっぽになってて、それで転びもせずに、棍棒でお手玉してて、凄かったよ」

「ほへ~」


などと駄弁りつつ、次第に少しずつ午後から夕暮れに移ってゆく周囲の風景に、目を細める。


少し早いが、疲れが出て来たので、ぼくは真っ先に寝させてもらった。


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