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三度目の依頼の旅からの帰還

カスコヨの街は何だかいつもより賑わっていたようだったが、翌朝早く街を出て、いつもと違って荷車が往来しているジンメ渓谷の街道を遡っていくと、くびれ目より上流の野営地点前で、街道上に野営地が拡張されて屯所化していた。

周囲を壕と土塁と塀に囲まれ、街道がそこを貫通している。

駐屯地の周囲には迂回路も設けられ、手間を掛けて中に入らずとも街道を行き来は出来る。


ぼくたちは旅券と肩の後ろの烙印を見せて中に入り、珍しそうに見ていると、屯所の中で直角に右に分岐路が出ていて、そこから従来の野営地へ入れるようになっていた。

マサが不思議そうに


「どうしたんだろう?」


というので、


「きっと、あの遺跡だよ、魔法の」

「ああ、あれかあ」

「ほら、兵士の装備もサカヌキ村のじゃないよ」

「これ、きっと国の兵士だろ」


サカヌキ村の兵士より明らかに強そうな兵士に守備されている。

その眼つきも厳しい。


ぼくたちはとりあえず野営地へ行って、そこで一泊。

いつもと違い、それなりに多くの人が居て、水汲みには列ができていた。


日暮れになると、いつも通り、出入口にしっかりと防柵を設置するが、野営する者同士で声を掛け合い、ぼくたちも既に準備してたので、協力して出入口を閉ざした。

夜は見張り番と火の番を立てて休む。


その晩は野犬が襲って来たので全員起きて対応したが、防柵のお蔭で一匹も入って来られない。

こちらは、ぼくたちは柵外への攻撃手段に乏しく、手が出せなかったが、他の人達が長物で殺戮した。


夜明けに野営地を出た。


--


途中、ジンメ川の何処かに、出掛けに屠って晒しておいた犬素材があった気もするが


「何処だったっけ?」

「ンなもん、忘れちまッたよ」

「あ~、思い出せない……」

「ぼくもだ……」


残しておいたはずの目印も見当たらず、川も増水していたので、回収不可能だった。



村の境界を過ぎて、愈々サカヌキ村の本拠へ。



ジンメ川にかかる懐かしい橋を越えて帰還する途中、仮拠点の塹壕小屋の天井が崩落しているのを発見。


「あ~、間に合わなかったかあ」

「そろそろやろうと思ってたのになあ」

「この分だと、家の方も危ないかなあ?」

「今年はちょっと大変だな」

「家も作業小屋も、両方あるもんね」

「でも、食糧は沢山あるから、作業に集中できるよ」

「ちゃんと残ってればね。腐ってるかもよ?」

「小屋の屋根が落ちて、貯めてる壺が割れてないといいけど」


塹壕には入れないので、本拠へ直行するが、草藪に隠しておいた三角梯子の縄が腐っていたので、急いで交換して締め直す。


だが、そればかりでなく、川沿いの小道を閉塞した草藪を越えるのに長年使って来た木の枝が、枯れてしまっていた。

うっかり乗ったら折れそうだ。

危なくて使えない。

仕方なく、都合よく隠蔽されてはいないけれど、太くて安定している枝を使って藪を越える。


本拠にかかる橋には、留守の間に苔が付いてしまっていて、滑りやすく、危険だ。

先ずはそれを削ぎ落さねば。

道具を作ろう。


手近な木からササラの様な即席の用具を作って、苔を橋の表から擦り落とす。


苔は石段にも付いてるから、そこもやはり一段一段、擦り落とす。



そうしてやっと本拠へ入れる。


家の中はかなり湿気ていた。


柱の根元に上がった湿気のせいで、丸太屋根の腐朽が進行しているのが判明したので、早急な対応が必要。


壺の中に貯蔵していた食糧の状態が不安だったので、一壺一壺、外へ持ち出して、慎重に開けると……まあ、駄目になってしまっていたのも一部あったが、多くは無事だった。

表面に黴が生えているくらいなら、削り取れば大概内部は食えるが、物によっては中まで駄目になっている。

蟲が入らぬように、蓋の僅かな隙間も粘土で密封して、その上から炭焼きで出たタール分を塗り付けておいたし、封入前に予め壺の中まで焔で殺菌しておいたのが効いたのか。


とりあえずは、家の外で一泊。


「これじゃ、また今年もケーちゃんに頼まないと駄目かなあ……」


と、お土産のボタンを焚火の明かりに透かして見ているエコが残念そうにしている。


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