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夜明けから一日中ずっと歩いて、ネフワア村へ

「じゃあ、行きましょう」

「あ、それでは、死骸を少し片づけて来ます」

「いいわよ、そんなの、行っちゃいましょう」


そう言って平然と歩きだすので、依頼人の意向には従わなくちゃ、とすぐにぼくたちもまた隊列を組んで歩き出す。

マサとぼくはまだ汚れも払い終えてなくて、背中とかは互いに手伝わなきゃならないので、歩きながら、近寄ってあちこちパンパンと手で叩いてあげたり、虫を潰してもらったりして、


「やべっ、置いてかれた」

「急ごうっ」


皆から少し遅れたので小走りになって列においつく。


ぼくの履いてる八割板草鞋は、緩衝材の草が少しへたってしまってるので、その後の小休止まで履き心地がイマイチなまま歩き通し、腰を下ろすや否やすぐに手入れした。

ぼくの足の皮も大分厚く丈夫になってきていて、多少履き心地が悪くても、すぐにまめができたりしなくなっている。


小休止の間は警戒の時間で、あまり駄弁るべきでもないのだが、


「さっきの野犬の群は予想外だったな」

「場所が違ってたなあ、かなり」

「小鬼とかも、そうなのかしら……」

「まァ、気をつけていくしかねえな。一応は参考にしてさ」


少し皆も気にしていたが、その後も小鬼とは遭遇せず、山賊とは遭遇したにしても、少数との小競り合い、それも遠矢の打ち合いだけで済んだ。

幸いに負傷者なしで、例によって例の如く、火矢を射返して奴らが潜む枯草の茂みを燃やしてやり、追い払って、小走りに抜けた。


おおむね無事に荒野を抜けて、比較的早くに北の断崖まで辿り着いたので、さっさと『切通し』を登ってしまう。


まだまだ陽は高く、旅路を先へ進んだ。


そのうちに、街道をやってくるネフワア村の街道巡回警備隊の兵士さんたちに挨拶したりして、そうすると兵士さんの中には依頼人さんと顔見知りの人も居たりするので、トモコが出る迄もなかった。



その後、いつ依頼人さんが野営すると言い出すかと思っていたが、一向に言い出すことなく、更に進んだ。


早朝からずっと、かなり長い歩きになったが、その日のうちに台地を下りて低地と『鐵路』を抜け、渡し船で夜の川を渡り、ネフワア村まで辿り着いた。


もう夜遅かったが、村の入口の『七曲り』の上り坂の二重関門もほぼ顔パスで通過し、村に入ってすぐに、篝火の下で


「今日は有難うございました」


と、野犬退治のことも褒めてくれた依頼札Aを渡されて、手続きを終えて、依頼人さんとは別れた。


「評価は良かったけれど、疲れたわね……」

「まさか、一日で来ちゃうとは驚いたなあ」

「健脚だったわね」

「まァ、あの人は荷物も少なかったしなァ」

「こういう人も居るんだと、少し勉強になったよ。にしても疲れた」


さすがに疲れもあるので、とにかく休むことにする。

夜風は少し冷える。


「どうする?」

と皆に訊くと、トモは

「宿……いや、節約しましょうか」

「どうせこの時間じゃ、夕食も出ないよね」

としょんぼりした顔のマサ。

「……うん、まあ、い~よ~……」

眠たげなエコは本当は宿の方が良さそうだったが、皆の意見が野営寄りと見て流され、

「じゃあ、オレが許可とってくるから」


とトヨが背負い籠を置いて兵営へ歩き出す。

天気も良いし、節約のために広場の木の下に菰の囲いを立てて、菰で屋根を付けて、野営する。

トモエコは女の子なので、朝まで焚火の傍で寝てもらい、男のぼくらだけで交代しながら見張り番だ。


最初の見張りはトヨがしてくれて、ぼくの番は真ん中だったが、汚れてるのが厭なのと、目を覚ましておく為に、松明を掲げて水場へ行き、冷たい水で水浴と洗濯をしてきた。

マサやトモエコも一緒だ。


かなりぼろくなってきた手拭で水気を拭いながら、これも新調したいなあ……と思う。

心を読んだように、エコが

「手拭いも新しくしなきゃね」

と言ったので、うんと頷いた。


冷えて風邪を引いてはいけないので、洗濯と水浴を一応済ませるとすぐに、水場から走って焚火の傍まで戻る。

腰巻一つで火に当り、色々なものを、あちこちに紐を張って乾しておく。


そうして片づけが終わると、菰を地面に敷いて円座を乗せ、身体を横たえて休む。

見張り番が来るまで待っているうちに、うとうとしかかり、そこでトヨに起こされて、寝ぼけた頭でどうにか見張り番に立つ前に、用を足しに行く。


少しスッキリした頭で戻って来て、トヨが夜更けに水浴びに行くので松明を渡して遣り、棘棒を片手に周囲の夜闇を見張りながら、へし折れたり脱落してしまってる棘を、手許も見ずに、指先の感覚だけで一本一本植え直す。

一本の棘棒が終わると、別の棘棒を抜き出して、また同様に手入れする。


こうしてまた一日が過ぎて、新たな一日がやってくる。


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