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急遽追撃、盗賊の巣窟へ

戦利品は、死んだ六人からのもの。



盗賊の頭目からは以下の通り。


防具が、全身を覆う粗末な木の鎧。これは木切れを蔦で器用に綴ったもの。

それに蔓籠をベースに、蔦で木片の補強材を取り付けた兜。

ちゃんと目と耳と口の穴を空けて編んであるから、常時着用したままで食事もできるし水も呑めるように出来ている。

それから、ぼくたちのお手製のと似た手甲脚絆。


装帯関連が、古い革の装帯本体と古い革ベルト、それに付属する古い革の小物入れ3つ。

中身は、一つ目が古い革の小さな水筒とその中の酸っぱそうな酒と硬い乾し肉、二つ目が砥石、三つ目が火打石と麻紐の束。

装帯に付属する小物入れは普通は最小でも六個組の筈だが、たった三個しかないのは、恐らく破損や紛失で無くしたからだろう。

その欠損分を補うように、お手製の蔓製の小物入れが三つ取り付けられてあるから。


あとはかなり縁が擦り切れている、腰の後ろに畳まれた継ぎ接ぎの革マント。

継ぎ接ぎだが、出来は悪くない。


足元は草鞋。

襤褸布を足に巻き付けた上から履いていた。

その予備が四足。


武器で目を引いたのが、弓と矢7本。

珍しくまともな弓矢だったが、トヨの操る弓矢に劣る威力だったことから察するに、盗賊の頭目は剣の腕はあっても、弓の方はからっきしだったようだ。

あとは石の剣と古い革の鞘、石の投げナイフ4とそれを留める革帯、脚絆に挿し込んであった石のナイフ。


その他、古い革の巾着に銀貨49枚銅貨292枚。

縁の欠けた旅券に刻まれていた名前は、『肉茎(ディック)


更にそれだけではなく、こんな男にも大切なかけがえのない想い出の幾つかはあったものと見えて、三つほど明らかに此の男に似合わない子供の手製の玩具みたいな小さな品物が、別にオイルクロスと綺麗な布に包まれて、旅券や巾着とともに懐中に有って、柔らかな紐で六点ハーネスのように胴体に括り付けてあった。


腹の周りには、汚れた大きな布で包んだ荷物が括り付けてあって、流浪の生活に必要な雑多な生活用品がまとめられていた。

食器とか布帛類とか縄や紐とか裁縫用具とかだ。

50㎝四方の小ささだがオイルクロスも畳んで入れてあった。


穢いマスクや腰帯、糞箆の入ってた蔓製の小物入れなどは、さすがに取らずに放置。



雑魚の持っていたのが、木製の腹巻と鉢巻。手甲脚絆。草鞋の予備が合計で八足。

武器は弓二張に矢が6本で、これらは頭目の所持していたものと同じく、盗賊には珍しくまともな品質の物。

あと、石のナイフ5、石のダガー2,投げナイフ8、それに木の槍2。

木の槍は三本あったが、一本は六つの死体を串刺しにするのに使った。


雑魚の擦り切れそうな薄い革の巾着からは合計で銀貨3枚銅貨82枚。

その他、蓑と笠が五ずつ。襤褸布、縄、紐の類、等々。


珍しく、雑魚の中にも旅券持ちが居て、槍でマサと戦っていた太っちょの『丸郎(マルロー)』、同じくマサと戦っていたナイフ使いの『穢奴癌(エドガン)』、それにトヨと戦っていたナイフ使いの『山猫(リンクス)』の三枚を見つけた。


ざっと読んだところでは、どうやら頭目とこの三名の旅券持ちの四人は、同じエゴシコという集落の出身らしい。


エゴシコと言えば、シズ北のイク子が語っていたが、たしかシズ北スラムよりも格の低い、本当にただ穴に流し込めれば良い程度の、『低い』『安い』客ばかりが訪れる売春村だ。


そういうところで父無し子として生まれたガキどもの末路が、仲間同士で助け合ってて、それでこれかよ……

ちょっと遣る瀬無い気分になったが、感傷に浸ってるゆとりなんか俺達には無い。


賞金の掛かっているお尋ね者の可能性もあるから、失くしたらもったいないので、これらの旅券はトモコが預かった。


--


マサにはぼくが曳いて来た美味しい燻製肉満載の方を受け持ってもらい、ぼくは戦利品満載の担架を牽いて、草むらの中へ踏み入り、トモエコトヨが踏みしだいていくのへ尾いてゆく。


或る程度踏み入った処に立木があったので、担架を二つ共その場所に置いて行く。

こんな担架なんか引きずっていたら走れないから、盗賊のお宝が持ち去られてしまう。

折角の燻製肉を野犬に漁られたらつまらないので、マサが二壺だけ自分の背負い籠に移すと、担架に残る壺は上から戦利品の担架を載せて、薪を仕込んだ襤褸布でしっかり包み、戦利品の縄で立木に縛り付けておいた。


街道へまた戻り、道端の草木に目印を付けた。



互いに手空きになったマサが、ぼくへ振り返って、


「兜、大分やられたな」


というので、左手で触ってみると、ヘッドギアは鼻梁を護る補強材だけでなく、額を護る補強材もかなり斬り削られていて、そのお蔭で顔が最後まで護られていて、浅い傷で済んだのだと知った。


--


盗賊の巣窟は実は、カツトの村の中にある。

ぼくらはネフワア村を朝早く、北端から出たので、急げば今からでも余裕で今日中に着ける。

そこで、担架を草むらに隠すと、街道を小走り20、速足30のペースで足早に移動し始めた。

小休止は取らない。

草むらの中を先行している、一人で逃げだした裏切り者の射手、痔苦(ジーク)という奴を追いかけて急いでいるから。


休まずにハイペースで街道を進み、午後早くにカツトに着いた。

旅券と依頼札と烙印を見せてさっさと門を通過し、すぐに安全な場所へ移動して準備を整える。

一時も休む間もなく、直ちに村の西端を目指した。

そこに目指す盗賊の隠れ家があるという情報を、拷問にかけた盗賊の生き残りから得ていたからだ。

もちろんそいつらはその後処刑して、お仲間と仲良く尻刺しにして草むらの中へ転がして来た。


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