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カツト村に護衛依頼の完了を報告しにラクマカ北から出立

ラクマカ北の農地の縁で野営した翌日。


肉と骨の処理は一応終えた。

骨は小川の浅い箇所を掘って埋め、石を載せておく。

皮は前日から小川で晒したまま。

これで、肉以外は持ち運ぶ必要が無くなった。


燻製肉は壺へ詰め込む。

でも、全部が納まるわけもなく、溢れた分はとりあえず布に包んで木酢液を塗り付けておいて背負い籠へ。


「ねえ、どうせ燻製肉は余ってるのだから、迷惑をかけてるかもしれない農場の人に挨拶しておかない?」

「うーん、でも今日も、急ぐんじゃないの?」


今日も一日でネフワア村に行ってしまう心算だったのだ。


「だって、野犬退治依頼を請けてるでしょう? どうせまだまだ狩るんでしょう?」

「あァ、そうだな。挨拶しておくか」

「おう、分った」


それで、犬肉たっぷりの朝食後、最寄りの農家さんのお家へ皆で挨拶に出向いた。


いきなりの訪問で、例によってお家の前の丸太を朝も早よからカンカン叩くことになるが、そういうものだから仕方ない。

しかし、有難いことにその家のご主人らしき方が庭先で植栽の手入れをしていたので、声を掛けるだけで済んだ。


「なんだ?」

「お早うございます、私はトモコと申します。実は農地の縁の小川にお邪魔しているのですが、ご迷惑をおかけするかと思い、ご挨拶に伺いました」

「ああ……そうかい、小川ねえ。ふうん、あそこで一体何をやってるんだい?」

「ラクマカ北の野犬退治の依頼を請けまして、荒野で野犬の群を狩っているんですが、獲った犬の皮を剥いで、流れに晒してるんです」

「ふうん、そりゃあご苦労さまだ。まあ、それくらいなら別に問題ないな」

「それを伺って安心しました。これはほんのつまらないものですが、宜しかったらどうぞお納めください」

「何だい、これ?」

「荒野で狩った野犬の燻製肉です。私達もお腹いっぱい食べたのですが、とても食べきれず、こうして担架で──」


トモが喋りながら、ちらっと担架を曳いてるぼくを見たので、担架の荷物が見やすい角度に動いてあげた。


「──運んでるのですが、旅の途中で壺も足りませんし。清潔な布で巻いて、炭焼きで出た虫除けと防腐の液を塗り付けてあるので、切って炙ればすぐにまた食べられます。お口に合うものかどうか分かりませんが……」

「おう、そういうものなら貰っておこう。あって困るものじゃなさそうだ。わざわざ有難うな」


と受け取って貰えて、街道と小川の交わるところに野営用のごく小規模な壕と土塁の工事をしたままであることとか、その下流に犬皮を晒してあることとかを伝えて、承諾を得て一応安心できた。

村の子供とか野犬や小鬼、山賊の目に留まって奪われてしまう惧れは残ってるが。



さて、出発だ。


今日は薄晴れの天気だが、遠くの方の雲は、何だかいやに暗い。

空気もなんだか少し湿っている。

そのお蔭で担架を曳いていても、それほどは土埃が立たないが、嵐でも来たら厭だなぁ、と思うので、足を速めて北の断崖をめざす。



その途中で、今度は小鬼が現れた。

但し少数で、まだ遠いから、闘いは回避できるかもしれない。


「脅かせば追っ払えるか?」

「やってみて」


呟いたらトモに促されたので、籠も下ろさずすぐに棒網を掲げて、ぶんぶん廻し始めたが、別に恐れる様子はないようだ。

これじゃ駄目だ。

そこで火消し壺でまだくすぶっていた種火をすぐに熾して、トヨが火矢を飛ばすと、それが飛んでくるのを見た小鬼どもは怯えて、逃げて行った。

それを見届けてから、ぼくもまだ廻し続けていた棒網を下ろし、畳む。

魔物だから一応、ネフワア村到着時の報告案件だ。



その後は無事に荒野を抜けて断崖に着いたので、少し急坂にとりついて登ったところで、小休止。


「ふう、なんだか疲れたね~」

「そうだね、天気の所為かなあ」

「なんだか気が急くわよね……でも多分、降らないと思うけど」

「そォかァ? あっち、あんなに暗いぞ?」

「雲はそっちから来てないからね、風向きが違うみたい」


駄弁りつつも警戒は欠かさず、小休止を終えるとまた立ち上がり、今度は一気に上りきる。


「はぁはぁ、一気に行くぜっ!」

「口を、開くと、疲れるぞ? はぁはぁ」


昨日も一昨日も一日中歩き詰めだが、やればできると分ってるので頑張れる。

やっと今日の予定の旅程の半分来たところなので、崖上で一旦休憩。


「今日はまだ半分だからな。ここからがむしろ本番だ。大蜥蜴の生息域だから、気合入れていくぞッ!」

「おうッ!」


トヨが気合を入れて立ち上るので、ぼくも同調したが、エコは少し怯えて


「大蜥蜴、厭だな~、出ないといいなあ」

「今更でしょ、しっかりしなさいよエコ」

「だってなんだか出そうなんだもん」

「厭な天気だから、そんな気分になってるだけだ。まあ、ぼくに任せておきなよ」


とトモに窘められ、マサに励まされて、歩き出す。


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