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タクティカルな魔王討伐のススメ  作者: サブ
第1章
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5話 盆地の突破

 オーラが率いる救出部隊120名は小高い崖の上から、目下のひらけた盆地を見下ろしていた。

 クレス・クーからのテレパシーの発生源はこの盆地の先。

 そこで拡声魔法で救援到着の旨を伝え、クレスからの返答を待つ手筈であった。

 しかし。


「まずいですね。どうしましょう」


 盆地は何百もの偵察であふれていた。

 フォレストガードとゲイザー、例の編成。

 偵察は周囲の森の中にもいるようだ。

 大きく迂回しようにも120名もの人間全員が、敵に気づかれずに移動できるとは思えない。


 オーラにとって、この規模の敵がまだ残っていたことはまったくの予想外であった。


 盆地には索敵に特化した大量の敵。

 まわりの森にも敵は潜んでいるだろう。

 思考にかける時間の余裕はない。

 クレスの救出がもたつけば、陽動部隊がもたない。


 オーラの強みは戦術眼、多彩な魔法、魔素吸収の効率。

 そして、大胆さ。


「みなさん、崖を下りて突入の準備を。盆地の中央を突っ切ります」


 盾を腰にさげ、彼女の得物であるハンドアクスを両手に持つ。

 顔の前にかかげ、目を閉じる。


「私の魔法と同時に走り抜けて。魔導士は部隊の外周につき、周囲の森から来る敵を対処してください」


 ハンドアクスに彫られた溝が淡く光りはじめた。

 広範囲の魔素を吸収する特殊な溝が掘られた特注品。

 目を閉じたままそれをかかげる。


「で、では、オーラ小隊長は?」

「いいからはやく。時間がありません」


 部下たちはうなずくと、少し戸惑う姿勢を見せながら崖を下りていった。

 連れてきた兵士たちは、スピードと突貫力に優れた少数精鋭。

 少し手助けをしてやれば、彼らはここを確実に突破する。

 『神速』のクレス・クーは間違いなくこの辺りにいる。

 敵の数が証明している。

 ここが、盆地の突破が正念場だ。


 ハンドアクスにたまった魔素をからだに取り込む。

 魔法陣の設定、魔法の想起、魔力の放出。

 凝縮された魔力が高度な魔法と成った。


「『巨嶽の弧(キララウス・アーチ)』」


 攻城戦のために開発された、ランク7の複雑な魔法。

 放物線を描いて飛翔する48の巨大な火山弾。

 どろどろに溶けたそれらが、つんざくような轟音を奏でながら盆地に降り注ぐ。


 敵は押しつぶされ、炎に焼かれていく。

 人類のみが扱えるこの人工魔術テクニカル・スペルは、敵の面制圧と同時に、周囲に"ヒト"の助けが来たことを告げる役割を担う。


「行けっ!行けっ!」


 高精度の軌道ベクトル調整によって火山弾の落下地点を操作し、部下が通る場所を確保。

 一面が焼けただれた盆地を縦断する状態のよい地面の上を、119名の兵士が駆け抜けていく。


 両端の森から、ニ十匹ほどのヒョウが飛び出してきた。


「フォレストガードが多数」

「魔導士、迎撃開始」


 四列縦隊の両サイドを固める魔導士たちが杖を構える。

 撃ち出されたのはエネルギー魔法。


 魔素が内包するエネルギー、すなわち魔力は、あらゆる事象、物体に変質する。

 この魔力を何にも変えずそのまま攻撃に利用するエネルギー魔法は、簡単で燃費がよくなにより強い。


 紫色にかがやく魔力球がものすごいスピードでフォレストガードめがけて飛ぶ。

 衝突、そしてまばゆいきらめき。

 球形を保てなくなった魔力が爆発する。


 敵が吹き飛ばされ、苦しそうにうめいた。

 衝撃に耐えきれず死んでいるものもいる。


 魔法をかいくぐった数匹が、隊の側面に向かって突進してくる。

 魔導士をかばうように兵士が前に出た。

 両者がぶつかるその瞬間。

 崖の方から飛んできた火球がモンスターたちに撃ち込まれた。


「先を急いでください」


 魔法を放ったのはオーラであった。

 すぐに敵の第二陣が森から現れた。

 次の魔法を演算。

 鋭利な炎が寸分違わず敵に直撃した。

 柄にもなく彼女は、ほんの少しだけ笑みをこぼす。


「やっと、やっとですね」


 厳しい訓練に、冷たい視線に、ひどい待遇に。

 すべてに耐えてきた成果は、今日の戦いに。

 そしてこの日以降、存分に発揮されることだろう。


 オーラ・ルフェイブルの研ぎ澄まされた直感はそう告げていた。

評価の方お願い致します!


ついに初詠唱シーン。魔法のシステムは論理的に、魔法の内容は厨二全開で!をモットーに邁進する予定。


他の作品を何作か見学させていただいたのですが、章のようなものを設定している方が何人もいて、どうやるんだろう…と頭の中をハテナでいっぱいにしていました笑

はい、調べます。

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