頼れる仲間
「おはよう。顔色悪いけど、何かあった?」
歩美は、昌雄に告白された翌朝に学校の親友達にそう心配された。
「え、そんなに顔色悪い⁉︎昨夜あんまり眠れなかったからやろか?」
歩美がそう話すと、さらに心配された。
「眠れなくなるようなことって、もしかして話しにくいくらい深刻な内容?」
志緒里からはそう聞かれたため、歩美は
「そんなことはない。悪い話やないから」
と慌てて否定した。ただ、簡単に話せる内容でもなかった。
「深刻やないけど眠れなくなる話?もし良かったら聞かせて」
涼子も真意はわからなかったようだが、話し方に嫌味やからかいがなく、普段から相談しやすい相手だったため、歩美も自然と
「実は…昨日隣の家の男の子に告白されたの」
と、前日の出来事を話せた。
「確かに戸惑うかもね」
親友達からは、そう事情や心境を理解された。
「もうすぐホームルーム始まっちゃうから、放課後にでもじっくり話さへん?調度今日は部活ないから、おやつでも食べに行こう!」
と珠姫は張り切ったため、涼子に
「珠姫が菓子食いたいだけやろ」
と指摘された。
「ちゃんと歩美のことを応援したいって思っとるもん!」
珠姫はそう反論した。
「ありがとう。たまちゃんがそう言ってくれることは嬉しい」
歩美はそう言いながらも、涼子の言葉も否定できなかった。
その日の放課後、4人は珠姫が決めたケーキ店に向かった。
「私達も恋愛には疎いけど、昨日のことを詳しく聞かせて」
席についてメニューを注文した後に、歩美は涼子にそう言われた。
この面子は全員中学時代から女子校に通っており、皆男子との接触は少なく恋愛への興味関心も少なかった。
「昨日は私達以外からも誕生日をお祝いしてもらえたんやね」
歩美が詳細を話した後に、志緒里からそう言われた。
「忘れられへん誕生日になったかもな」
涼子からもそう言われた。
「うん、嬉しかった」
と歩美ははにかんだ。
「ってことは、その男の子のことは嫌いやない。どちらかといえば好きなんや?」
と涼子に聞かれた。
「もちろん。でも、男の子と付き合うなんて考えてもなかったから、まだ恋愛対象とは思えなくて。年下ってこともあって、昌雄君も男の子なんやなって思ったくらい。そんな状態で付き合うのは良くない気がして」
歩美は、今の思いを正直に話した。
「確かにそうやね」
志緒里も相槌を打った。
その直後に珠姫が
「わーい、ケーキ来た!」
と大喜びした。
「珠姫、自分から相談に乗るって誘ったくせに、やっぱりケーキに夢中やんか」
涼子はそう呆れた。
「まあ、いつものことやよな」
歩美はそう苦笑いしながら、確かに昌雄は自分より2歳年下だが、目の前のケーキに大喜びしているこの同級生よりしっかりしているかもしれないと思った。
「でも、ずっと歩美のことを好きでいるなんて、素敵やね」
志緒里はそう微笑んだ。
「幼馴染でも今は学校も違うから、一緒にいたら新しく気付けることがあるかもしれへんよ」
涼子はそうアドバイスした。
「おかわり!」
また珠姫が元気良くそう言い出したので、涼子は
「あんたも少しは参加しなさい!」
と痺れを切らした。
「はーい。その昌雄って男の子、めっちゃええ子やなって思った。あたしよりしっかりしてそう」
歩美は、珠姫にそう言われて
「たまちゃんも、ちゃんと話を聞いてくれとったんや」
とほっとした。そして、昌雄は珠姫よりしっかりしているという認識が共通していたのかと思った。
「昌雄君は、『返事は急がなくていい』って言ってくれたけど、不安で仕方ないよな」
歩美はそう呟いた。
「そう言ってくれたんや。偉いね」
と志緒里は感心した。
「人を気遣うのもええけど、自分の気持ちも大事やない?」
と珠姫に聞かれた。
確かにその通りだと歩美は納得した。そしてようやく
「私、もっと昌雄君と向き合いたい。すぐに恋人にはと思えへんし、友達からと言われても、皆みたいな女友達と同じようには付き合えへんかもしれへんけど」
と言えた。
「それでええと思うよ」
と3人からも賛同された。
「みんなありがとう。また相談することもあるかもしれへんけど」
歩美は、食事を終えて話もまとまった後に、親友達にお礼を行った。
「それはお互い様やからいつでも気軽に話してくれてええよ」
と涼子は微笑んだ。
それに対して、珠姫は嬉しそうに
「じゃあ、また相談事があったらここに集まろな!」
と言ったので涼子に
「こいつにお菓子おごる必要はないからな」
と言われた。