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女子校のお姫様と王子様

「朝倉さんっておっぱい大きいよね。何カップ?触って確かめたら怒る?」

体育の授業前に着替えている時に、クラスメートの橋本 千慧(ちさと)にそう聞かれた。

「何をいきなり⁉︎ってか触ってわかるもんなん⁉︎」

歩美は、橋本のセクハラ質問に赤面したと同時にドン引きした。女子校のため、歩美も周りの生徒を気にして着替えることはないが、そのような話をされたくはない。

「ええわけないやろ。歩美が怒らなくても私が怒るよ。『同性だから問題ない』って考えは今すぐゴミ箱に捨てなさい」

同じ教室にいた涼子は、すかさずそう注意した。それに対して橋本は

「すみませんでした」

と大人しくなった。

「ありがとう」

歩美は、涼子に擁護されてほっとした。そして、涼子とクラスメートになれて幸運だとも思った。

「男の人も、女の子の胸に視線がいったりするんやろか?」

歩美は、涼子にしか聞こえないような小声でそんな話を口にした。歩美は現在男性との接触が少ないが、容姿によって性的な目で見られる可能性を考えると、小学生時代とは異なる恐怖を感じた。

 それに対して涼子は

「人によるやろけど、珍しい話ではないかもな。そんな変な男が寄ってくることを避けるためにも、女子校におるうちに彼氏ができて良かったのかもしれへん」

と話した。

 歩美は、もしかしたら昌雄も自分の胸に視線が向くことがあるのかもしれないと少し考えた。

 しかし、彼とは就学前から面識のある幼馴染であるため「胸が大きいから好きになった」わけではないと思いたかった。

 ただ、母親は華奢でありながら、歩美と同じくらいかそれ以上の巨乳なので、「もしかしてお父さん、そういう趣味だったの⁉︎」と少し思った。

「やっぱり水谷さんはかっこええな」

「朝倉さんもめっちゃ可愛いし、このクラス最高やよね」

「本当、男役と娘役のトップスターが同じ教室に居るみたい」

教室の中では、そんな会話が聞こえた。

「何か私たち、目立ってしもとるな」

歩美は、変わらず小声でそう話した。

「そうやね」

涼子も、小声でそう肯定するしかなかった。

 演劇部内だけでなく、学校内でも歩美は特に可愛いと評判であり、涼子はイケメンという評判だった。部活動だけでなく、バンドの中では、歩美はキーボードを弾きながら歌っており、涼子はエレキギターを掻き鳴らしていることも、その評判を助長してきた。

 そしてこういった、歩美の「女性らしい美しさ」や、涼子の「男性のような美しさ」は、女子校だから特に輝いて見えているとも考えられる。

 歩美に関しては、学校内に男子がいないために「男子からモテることへの妬み」を買うことがなく、むしろ憧れの存在として女子からモテていると言える。


 「歩美先輩、お疲れ様です」

歩美は、演劇部に入部してきた後輩とも仲良くなった。その中には、中学時代から歩美に憧れて入部してきた部員も少なくなかった。ちなみにこの女子校の中学部に演劇部はない。

「何か先輩、以前にも増して綺麗になりましたよね?」

部活帰りに、中学から親しかった後輩の浦野 佳澄(かすみ)がそう聞いてきたことがあった。

「そう…やろか?確かに最近も楽しく過ごしとるけど」

歩美は、そう鈍い返事をした。

「やっぱり、彼氏くんのおかげですか?」

佳澄と一緒にいた後輩の小倉 奈桜(なお)がそう聞いた。歩美は、自分から積極的に話しているわけではないが、彼氏の存在は有名になっていた。

「『彼氏くん』か。確かにそれもあるかも。今は高校受験に向けて一緒に頑張っとるけど」

と歩美は笑顔で話した。後輩の昌雄への呼び方が『彼氏くん』なのは、彼女たちよりも年下だからであろう。

「先輩って頼りになりますもんね」

後輩たちはそう納得した。

「やったらええけどな?」

歩美はその言葉にピンとこなかった。ただ、後輩に慕われることは非常に嬉しかった。

「私も幼馴染の同級生のことが好きなんですけど、どう向き合えばいいかわからなくて…」

そんな中で、後輩の稲美 (もえ)はこのような恋愛相談をしてきた。

「私も、彼以外に好きな人はおらんだから、恋愛についてはよくわからへんよ?」

歩美はそう前置きしながらも、後輩の話を親身に聞いてあげた。

「小学校の同級生で、今でも会う機会はある相手なんですけど、学校が違うから共通の話題も作りにくいし、今付き合ってる人がいるかもわからないんです」

萌はそう話した。

「萌ちゃんは、その子への気持ちは変わってへんの?」

歩美はそう聞いた。

「はい。一緒にいたら楽しいから、このまま友達でいても十分とは思うんですけど、やっぱり付き合いたいって思ってて…」

と萌は答えた。

「それなら、素直にその気持ちを伝えたらええんとちゃうかな?いきなり告白するのは難しくても『一緒にいて楽しい』って話してみるとか。私も自分の気持ちに気付いても、すぐには告白できへんだから」

と歩美は話した。

「ありがとうございます。先輩も悩んでいたんですね。私も頑張って伝えてみます」

萌は、歩美にそう話して張り切った。

「上手くいくとええな」

歩美はそう後押しした。


 一方、昌雄の野球部にも新入部員が来た。その中には、昌雄の弟の義雄や、歩美の弟の凛太朗もいた。

「野球部に来てくれてありがとう。一緒に活動できる期間は短いけど、心強いし楽しみやな」

昌雄はそう弟たちの入部を歓迎した。

「兄ちゃんに続けるように頑張る!」

義雄はそう張り切った。兄弟仲が良好ということもあり、同じ部活に入ることへの抵抗はなかった。

「姉さんがお世話になっているけど、これからは僕もお世話になります」

凛太朗は、昌雄にしか聞こえないようにそう挨拶した。

 昌雄は、昨年に引き続き淳平とのバッテリーとして部活の中心となって活躍しているため、これから弟たちも入ってさらに楽しくなるだろうと嬉しくなった。

 この日は、昌雄と義雄と凛太朗と淳平の4人で帰宅した。この時に、改めて凛太朗に

「姉さんのことを好きになってくれて、恋人になってくれてありがとう」

とお礼を言われた。

「お礼を言われることなんや。俺の方こそ、凛太朗君には色々と相談に乗ってくれて感謝しとるよ」

昌雄は、凛太朗にお礼を言われると思っていなかったのでそう驚いた。

「姉さん、昌雄君の話をしとるときはいつも楽しそうやし、付き合い始めてから随分明るくなったからさ」

と凛太朗は話した。

「ところで君、歩美さんが練習で作ったお菓子を食べまくっとったんやって?」

昌雄は、歩美の話を思い出して凛太朗にそう聞いた。

「姉さんにばらされたか…。姉さん、最初はお菓子作りに失敗して『食べたらあかん』って叫んどったんやで」

凛太朗は、少し動揺しながらそう返した。

「自分の話をばらされたから、歩美さんのことをばらし返したんか⁉︎」

淳平はそう感心した。

「歩美さんも自ら『練習してきた』って話の中で『毒味は十分してきた』って言っとったけどな」

昌雄は、そんな話を思い出した。

「毒味って自虐的な表現やな。照れ隠しやったとしてもそんな表現するんや」

と義雄も驚いた。

「歩美さんって案外不器用なんやね。でも、それも含めて可愛い」

と昌雄の頬が緩んだ。

「結局惚気か。上手くいったんは俺も嬉しいけど、野球や受験勉強も頑張んなよ」

淳平は、少し呆れたようにそう言った。

「もちろん頑張るよ。と言うより、歩美さんがおるから頑張れるんや」

と昌雄は微笑んだ。


 「お邪魔します。今日も勉強を教えに来ました」

ある休日、歩美がそう挨拶をして昌雄のところを訪ねた。

「ありがとう。歩美さんが来ても困らんように、部屋を綺麗にするようになったんや」

昌雄は、そんな話をしながら歩美を部屋に招いた。

「私も、マサくんの部屋に入ることにドキドキするけど、居心地はええんやよね」

歩美はそう微笑んだ。

「さて、早速勉強の準備をしようか」

歩美はそう話し、教材を開いた…つもりだったのだが

「『本当にそんな奇妙なことがこの学校で起こったの⁉︎』と、疑いと驚きを隠せなかった…って、間違えた。これ部活の台本やった!」

歩美は自分の失敗に気付いて恥ずかしくなった。

「いきなり何を読み始めたと思ったらそうやったん⁉︎」

と昌雄も大笑いした。

「今度の演目は学園ものなんや?」

と昌雄は聞いた。

「うん。学校で起こる不可解な事件を、生徒と教員が協力して解明する作品なんや。事件と言っても、殺人や傷害みたいな物騒なものではないよ?」

と歩美が説明した。

「そうなんや。そう言えば、歩美さんの友達に、セリフを読む練習相手になることを勧められたことがあったっけ」

と、昌雄は珠姫のことを思い出した。

「たまちゃん、そんな話をしてたね。今回の話は恋愛要素は少ないし、恥ずかしくないかも。勉強の合間に付き合ってもらおうかな」

と歩美は返した。それに対し昌雄は、

「喜んで!」

と笑った。

 続けて昌雄は

「最近、英語の授業も理解しやすくなったんや。歩美さんが好きって話してた洋楽を聴いて内容を調べたりもして、英語が楽しくなった」

と嬉しい報告をした。

「本当⁉︎役に立てて嬉しい。マサくん、頑張っとるんやね」

と歩美も笑顔になった。

「もし邪魔にならんのなら、キーボード弾きながら洋楽を和訳して歌ってみようか?」

と、歩美は新たな提案をした。それに対して昌雄は

「それも楽しみ!」

と歓迎した。歩美は昌雄のその反応を微笑ましく思いながらも、楽しみが増えたと思えた。

 それからしばらく勉強した後、昌雄は思い出したように

「そう言えば、こないだ凛太朗君がうちの野球部に入部してきたよ。歩美さんのことで、お礼まで言われた」

と話した。

「そっか。弟までお世話になっとるんやよね。あいつ、何か生意気言ってなかった⁉︎」

歩美は、昌雄の話に対してそう聞いた。

「歩美さんの中で凛太朗君ってそんな扱いなんや。すごくええ子やと思うけどな」

と、昌雄は苦笑いした。

「考えてみれば、マサ君が1年の頃は、私の小学校の同級生が先輩として在籍しとったのよね。何かあった?」

歩美は、気付いたことを昌雄に聞いた。

「中学校は人数も多いから、あまり気にならんだかな。ただ、歩美さんを困らせてた生徒に会ったときに『今はこいつらより強くなれとるやろか』って、少し思った」

昌雄はそう振り返った。

「そっか。私は地元の同級生のことは全然知らんから、ちょっと気になった。マサ君が嫌な思いをしてなかったなら良かった」

と、歩美は安心した。

「俺はもっと強くなって、歩美さんを泣かせた連中をギャフンと言わせてやるんや!」

と、昌雄は張り切った。

「いや、仕返ししてほしいとは思ってへんよ?ってか、『ギャフン』なんて本当に言う人っておるんやろか?」

と歩美は突っ込んだ。ただ、自分のために強くなりたいと話してくれる昌雄の思いは嬉しかった。

「確かに、ギャフンって何なんやろ」

昌雄もそう考え、2人して笑った。

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