突然の告白
「ピンポーン」
歩美は、家のチャイムが鳴る音を聞いて、真っ先に玄関に向かった。
「こんな時間に、誰だろう?」
夕食前とはいえ、普段通り学校から帰ってきた時間帯に訪ねてくる相手に心当たりはなかった。
「はい…って昌雄君⁉︎こんな時間にどうしたの⁉︎」
ドアの向こうには、隣の家に住む2歳年下の幼馴染みの昌雄が立っていた。
「突然来てごめんなさい。歩美さんに渡したいものがあって」
そう話す昌雄は、どこか緊張して落ち着かない様子だった。
「それはええんやけど、立ち話もなんやから、とりあえず上がって」
歩美はそう言って昌雄を家に入れようとしたが、昌雄は
「すぐ終わる話やから大丈夫」
と断った。
「そうなん?」
歩美は昌雄が何をしようとしているのか、見当もつかなかった。
そんな中、昌雄は深呼吸をしてから
「誕生日おめでとう。これ、プレゼント」
と言い、歩美にプレゼントを渡した。
「ありがとう。昌雄君から貰えるなんて思ってなかったから、大事にするね」
歩美の優しい笑顔を見て、昌雄は嬉しくなった。しかし、本当に伝えたいことはこれからだと、自分に言い聞かせていた。
「それから俺、歩美さんに言いたいことがあって…」
昌雄は緊張から言葉に詰まっていたが、歩美にはその理由がわからなかった。
「俺、歩美さんのことがずっと好きなんです」
「えっ…」
予想もしていなかった昌雄の言葉に、歩美は心底驚いたと同時に戸惑った。
「突然こんなこと言って驚かせてごめんなさい。別に、今すぐ付き合いたいとか、俺のことを好きになってほしいわけやなくて、まずは自分の気持ちを伝えたくて」
そう話す昌雄は、赤面しながら慌てていた。
「急がへんから、返事をもらえたら嬉しい。いつまでも立ち話に付き合わせるのも悪いから、今日はこれで失礼します」
真剣にそう伝えてから帰った昌雄を見送った歩美は、渡されたプレゼントを眺めながら呆然とした。
「そうや、プレゼントって何やろ?」
歩美は、はっとして自分の部屋に戻り、綺麗に包装されたプレゼントを開けることを決めた。
せっかく昌雄がくれたものだからと丁寧に開けて出てきたものは、ハート型のネックレスだった。
中学生の男の子がこのようなものを買うのは恥ずかしかったかもしれないし、勇気が必要だったかもしれない。そして、ネックレスもラッピングも自分が好きなデザインということからも、昌雄が色々と考えて選んでくれたことが伝わってきた。何より、ハート型というデザインから、先程の昌雄の言葉に嘘偽りがないことを実感した。
歩美は、そんな昌雄からのプレゼントや気持ちを嬉しく思いながらも、自分はどうすべきなのかわからなかった。
昌雄のことは嫌いではないが、昔から家族ぐるみの付き合いだったこともあり、弟のようにしか思っておらず、自分に好意を寄せていたことに気付かなかったどころか、異性として意識したこともなかった。そのような中途半端な感情のまま、簡単に付き合うべきではない。
そうしてあれこれと考えて、歩美はその日の夜はすんなりと眠れなくなってしまった。しかし、それは昌雄も同じだった。