僕は異世界で美幼女姫様と刑事をする。〜異世界における科学捜査の手法について〜 番外編 家族と一緒の年末年始だよ!
今回は、リーヤちゃんとタケ君、そして可愛い彼らの子供たちの年末年始をお送りいたします。
このシリーズ、気が向いたら続けて行きますので、宜しくです。
「おばーちゃん、きたよー」
「きたー!」
「遠いところ、よく来たね、アリサちゃん、ユーリ君。って、今は家から直通で一瞬だから遠くないか。ホント、チエちゃんには感謝だよね。孫の顔、毎日見に行けるんだから」
「そうじゃろ、そうじゃろ。じゃからワシに皆は感謝するのじゃ!」
「チエ殿、早くそこから動くのじゃ。此方やタケが入れないのじゃ!」
今日は大晦日、僕もリーヤさんも仕事の休みをもらえたので、僕の実家に帰省している。
なお、昨日まではリーヤさんの実家、ザハール様のところに行っていて、あちらでも孫による親孝行をしてきた。
「うむ、これでペトロフスキー家も安泰。レナートもたまには顔を出すなり、結婚話のひとつでも持って来れば良いのだがな」
「ザハール様、今は良いじゃないですか。しかし地球人との混血ですと、ここまで成長が早いのですね。アリサちゃん、もう学校に通っているんですもの」
「エカテリーナおばーちゃん。アタシ、もうじき小学5年生だよ。勉強ならクラスでも一番だもん!」
エカテリーナ様に抱きついて、リーヤさんそっくりの金色の瞳を輝かせながら文句を言うアリサ。
魔族種と地球人の混血なので、成長速度は地球人の七割弱。
小学1年生くらいの体格だけど、頭脳は優秀。
リーヤさんが授業参観に行くたびに自慢げに僕に、アリサの事を報告してくれる。
……まあ、リーヤさんの場合は、異世界外交官で有名人の上に若くて可愛い高校生くらいの外見だから、それだけで授業参観が大騒ぎになるんだけどね。
「そうなのね。魔族種の感覚では、ついこの間生まれた感じなのですが、もうこんなに賢くなって。ユーリ君は、まだまだ小さいのね」
「えーおばーちゃ! ゆー、おおきいもん!」
これまたエカテリーナ様に抱き上げられても文句を言うユーリ。
こちらは2歳だけど、やっぱり身体は小さめ。
なれど、文句を言うのとか、走り回るのは既に一人前。
子守をしているチエさんも、一瞬たりとも眼が離せないので、大変さから時折愚痴ってくる。
……チエさんには何かと頭が上がらないよ。身内の幼児やら小学生沢山抱えて、子守だものね。
「此方、やっとお父様やお母様の気持ちが分かったのじゃ。子育ては親も成長させるのじゃな」
「そうだな。私はあまりリーヤが小さい頃にかまってやれなんだのを、今更ながら後悔しているよ。でも、時々でもこうやって孫の顔を見せてくれるだけでも嬉しいな」
僕自身、親の立場になってやっと分かった事が多い。
最近では映像作品や小説・漫画を読んでいても、親の立場で見てしまい、小さな子達が苦労したり寂しがっているのを、涙こぼしてしまう事もある。
「ほら、高い高い!」
「じーじ。もっとぉ!!」
僕はザハール様が嬉しそうにユーリを持ち上げているのを見て、心がとても暖かくなった。
◆ ◇ ◆ ◇
「リーヤお姉ちゃん。今度はどのくらいこっちに居られるの?」
「正月3が日は大丈夫なのじゃ。カナはどうなのじゃ? 身体の事もあるし、仕事は忙しいのじゃろ?」
「わたしは、2日までね。移動はチエさんのゲート使うからすぐだけど、新学期の準備とかもあるし。来年度は、出産に育児休暇でお休みをする分、大変なのよ」
妹のカナは31歳になったところ、今は隣の市で中学校の先生をしている。
カナは一昨年、職場結婚をした。
今は妊娠五か月、安定期に入り忙しくしている。
「お義兄さんには、いつもお世話になってます。移動とか住居とか何もかも……」
「いえいえ、和人さん。それは、どっちかというと、ここにいるチエさんのおかげです。僕もチエさんには永遠に頭上がらないですものね」
恐縮そうにしている真鍋 和人さん。
大人しそうな外見で、実はカナよりも2つ年下。
今では、すっかり姉さん女房の尻に敷かれている様だ。
……まあ、お互いに分かってて敷かれるのは夫婦円満の秘訣だけどね。
それまで一般人だった彼、まさかカナが異世界関係やら魔神ちゃんと深い関係だとは知らなかったので、結婚前の顔合わせで彼の両親共々気絶しそうになっていたのは可哀そうだった。
いきなり魔神フォームになるチエさん、張り合って同じく出産直前なのにスーパーモードに変身するリーヤさん。
お座敷は阿鼻叫喚の場になったので、僕は二人に拳骨を下した。
……おふざけも、いい加減にして欲しいものだよね。
「そうじゃろ、そうじゃろ。でも、ワシを崇めるのでは無いのじゃ。ワシは友の為に動くだけで、決して崇拝されるような神では無いのじゃ!」
「はいはい、チエちゃんにはお世話になりっぱなしね。で、今年も多重分身で同時年末年始なのかしら?」
「もちろんなのじゃ! こういう『めでたい事』は複数楽しんでナンボなのじゃ!」
◆ ◇ ◆ ◇
「もう恒例じゃな。紅白見た後の皆での初詣は」
「そうですね。最初、リーヤさんを連れて行ったときは大変でしたよ。僕、小学生の女の子と婚約したのかって、冷たい眼で見られましたし」
「そうなんですか、お義兄さん。少し前までリーヤお義姉さんは、そんなに小さかったのですね」
「此方、小さくないのじゃ! もう、お母さんなのじゃ!」
「はいはい。お姉ちゃんは良いよね。今も高校生くらいに見えるし、美人外交官で有名人だもん。わたし、アラサーだから、もうおばさんに片足いれちゃったよ」
「カナおばちゃんは、おばちゃんじゃないの?」
「アリサ。女の人には色々な事情があるんだよ。あ、カナ。ごめん! 怒んないでよぉ」
賑やかに年末深夜の商店街を歩く僕たち。
僕は暖かいユーリを抱っこしつつ、笑う。
周囲を歩く人たちも魔族美少女なリーヤさんを一瞬見てはびっくりするも、彼女が同じ瞳のアリサの手を繋いで仲良く歩くのを見て、ほっこりとしている。
「守部さん。今年も皆さんで来られたのですね。リーヤちゃん、いつもテレビで見てるけど、やっぱり可愛いわ。とても小学生のお母さんには見えないです」
「え、リーヤちゃん来たの!」
「アリサちゃんも大きくなったねぇ」
「すいません、ユーリ君抱かせてもらえませんか?」
毎年お伺いする菩提寺でも、リーヤさんは大人気。
住職婦人やら近隣のおばちゃん達に囲まれて、楽しそうにしている。
「ちょ、此方困るのじゃぁ!」
「おば様達、お母さんが困っていますよ。お母さんは逃げませんから、順番にどうぞ」
今やアリサがリーヤさんの「ボディガード」をしている。
本職の僕の出番は全くない。
「お義姉さん、やっぱり大人気ですよね。お義兄さん、あんな異世界の美人さんとどうやれば結婚まで出来るのですか?」
「そこは、色々とね。リーヤさんとの出会いと馴れ初めは、それこそ物語になるくらいだし」
カズトさんは、不思議そうに僕の顔を見て呟く。
どうひいき目に見ても、やや童顔で頼りがいがあるようにも見えない、決して美男子で無い僕と、絶世の美少女姫様の結婚は不思議に見えるのだろう。
事実、一時期は週刊誌やら新聞、テレビ局からの取材が毎日押し寄せ、嘘を触れ回られるのも嫌だったから、仕方なく問題が無い程度の実話を本にして出した事がある。
……お小遣い程度の印税入ったのは、びっくりだったけどね。
異世界との結婚、それも貴族令嬢との結婚ともなれば、世間は騒ぐ。
……結婚式での騒動も、いずれ本にしても良いかもね。あの時は陛下も絡んで大変だったし。
「大体は、前に出した実話本の通りですね。僕は警察の科学捜査員、リーヤさんは捜査員として出会って、共に戦場を走り回り、一緒に泣き笑いしました」
「あの本、実話だったのですね。あまりに凄いからフィクションかと思っていました」
「おにーちゃん、これでもドラゴンスレイヤーにデーモンスレイヤーだものね」
「えー! まさか、異界の邪神と戦ったのも……」
「うん、実話だよ。チエさんの助けがあったけどね」
「お主ら。早よう来ぬと甘酒が冷めるのじゃ!」
僕とカナ夫婦が話している間に、チエさんは御接待のうどんを、ずるすると食べている。
その横でリーヤさんは、アリサと一緒に甘酒を美味しそうに飲んでいる。
「はい、すぐに行きます!」
除夜の鐘が鳴る中、僕は仏様に願う。
「今年も皆と一緒に居られます様に」
「此方、皆で幸せに暮らせますように!」
僕の横でリーヤさんは声を出して願いを告げる。
それにびっくりした僕は、おもわずリーヤさんの顔をまじましと見てしまう。
「タケ。此方、今幸せでいっぱいなのじゃ! この幸せがずっと続くと良いのじゃ! 今年も宜しくなのじゃ!」
リーヤさんの顔に見惚れている僕に、ちゅっとキスの奇襲をするリーヤさん。
「おかーさん、恥ずかしいよぉ」
「あらあら、うちの嫁は可愛いわね」
「ちょ、リーヤさん。こんなところでキスしないでよぉ!」
「シャッターチャンスなのじゃ!」
デバガメ魔神将チエさんはカメラですかさず撮影。
そして周囲の人々はびっくりしつつも笑い、そして幸せそうな顔をしていた。
「久しぶりに本編で遊んだのじゃ! 今回、カナ殿の結婚相手が初登場なのじゃ。一般人が異世界に脚を突っ込んでしもうたのじゃ」
チエちゃんの実家程では無いですが、異世界帝国の美少女外交官リーヤちゃんが義理の姉という時点で、普通では居られないかと。
「今回、こそっと書いておった授業参観とか、結婚時の話はワシも読みたいのじゃ!」
この辺りは次回以降のネタに置いておきますね。
では、2021年もお世話になりました。
来年が皆様にとって良い年になりますよう、お祈りいたします。
次回更新は、クーリャちゃんの話になる予定です。
ではでは!