第二の家へ帰還
僕が第三騎士団の建物に帰ると、受付嬢のミーシャが嬉しそうな顔をしていた。知らない内に心配させているようだった。そして、黒猫も息を合わせるように鳴いてくれた。
「大丈夫、レイ? 先程の男は本当に無礼としか言えない。子供にあんな態度を取るなんて」
と、腰に手を当ててぷんすかしていた。
僕が何も返さないので、黒猫をじっと見ていた。そう思うよね、猫ちゃんと呟きながら。
「僕は子供ですか?」
以外と僕は子供と言われた事にショックを覚えていた。言われるとは思っていたが、思うのと実際に言われるのとでは大きく違った。
「そう、子供だよ。少年はまだまだだよ」
と、ミーシャは断言した。
「そうですか…やっぱり、まだ子供ですか」
僕が下を向いたまま暗い表情を作っていると、ミーシャが顔を上げた。そして、僕の事に気付いたようだった。
「あっ…いや、子供と言ったけどそれは劣っている訳ではなくて、年齢の事だよ」
「そうですか…それは、僕には越えられない壁です」
「いやいや、そんな顔をしないでよ」
と、逆にミーシャが泣きそうな顔をしていた。
「なーんて、そんな訳ないです」
と、僕は一気に笑顔を作った。
すると、ミーシャは一瞬動きを止めた。すっかり騙された一人のようだった。僕に近付くと、拳でぽかぽかし出した。ちゃんと痛くなく、ただじゃれあっているようだった。
「もう、レイ。私が心配していたのを無駄にして、次からは心配しないよ」
と、頬を膨らませていた。
僕は更にミーシャが機嫌を悪くしないように、言葉を掛けた。
「わざとではないです。多少は本気で思っている事もありました」
ミーシャがキツく僕を睨んだ。
「多少…?」
「いや、凄くです」
今度はミーシャが笑顔を見せた。
「ほら、レイも騙された。こんな事で怒る人がいれば、第三騎士団の受付嬢にはなれません。ちゃんと、仕返しはしたから。本当にこの問題児は…一方で、猫ちゃんと可愛いよね」
と、黒猫を触って遊んでいた。
気持ち良過ぎる様子の黒猫はお腹を見せながら、カウンターに体をすりすりさせていた。それをミーシャも気持ち良さそうに、撫ででていた。
すっかり黒猫はミーシャに負けて、ミーシャは黒猫に負けていた。やっぱり、黒猫がいてよかったと感じた。そして、この仲間で第三騎士団がある事にも。




