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第一騎士団長対少年兵

「はっ」

 と、叫びながら、団長は剣を振った。


 が、すぐに動いた僕に躱された。そして、それをされると思っていた団長は急いで剣を横に振った。僕の動きを読み、追撃するために。だが、僕もやられたくはないので、すぐに逃げた。僕が反撃をしないので、極めて近い範囲で二人の鬼ごっこが始まったようだった。


 肩から息をしながら、団長は僕に笑った。本気モードでその目は全然笑っていない。

「凄いじゃない、レイ。ここまでやられるとは、久しぶりだ。本当に力が湧いて来る…」

 と、その呟きから団長のオーラが一気に濃くなった。


 そこが殺意溢れる戦場であると勘違いするように。団長からのオーラに数名の団員は、無意識に後退っていた。それは大型で極めて凶暴な魔物と戦う時と同じようだった。が、普通ならそう言う経験はしないのだった。から、下がるのが一番正しいのだった。

 団長は僕と戦う事に忙しくて、周りの事は見えていないようだった。こう言う戦闘好きにはよく起きる事だった。が、逆に団長が人気を落とさないかが心配だった。そして、本気はこれまで出していなかったのだ、と知った。それは僕も同じだった。手加減と言うのは相手が弱いからしている訳ではない。ただ相手を殺めたくないから、人々はするのだった。それを知らないのは、ただ人の命の価値を知らないだけの人であるのだった。


 僕が団長のように殺意で溢れないのは、それが必要ないからだった。これまで命の危機に陥った事はなく、誰かを心から恨んだ事がない。だからこそ、そのような危ない事態にならないように、日々警戒していた。取り返しのつかない事になれば、本当に誰も何も出来なくなるからだった。


「少しやり過ぎです、団長」

 と、僕は返した。


 本当に団長は何人もの団員を倒したいのか、と聞きたくなるほどだった。ここでそこまでする意味さえ、ないのだった。


「何を言うレイ。まだまだだ。全てはこれから。何も始まっていない。だから、さあ…始めよう」

 と、団長はもう頭のネジがどこか外れたようだった。


 こう言う正気を失った人も元に戻すには、簡単な方法がある。それが、ひたすら倒すと言う事。

 僕は団長と向かい合うと、体中に魔力を巡らせた。先程したように魔力を均等に全身に行き渡らせる。体が少しずつ暖かくなるのが、よく感じ取れた。僕はその一部を手に集中させて、そのまま魔力をそこで固定した。何かから守る盾を作るように。


 そして、足に力を込めると一瞬で団長の真横まで飛んだ。握られている剣の先を手で掴むと、予期せぬ事に団長はすぐに手から離した。僕はそれの剣を持ち直すと、団長に突き付けた。


「少しご無礼をお許しください。ですが、もう頭を冷やすべきだと考えましたので、試合はここで終わりにします」


「あぁ…」

 と、団長は頭を左右に動かした。


 そとには、何とも具合の悪そうな団員達が床に座っていた。そして、団長はよく何をしたか理解したようだった。


 僕は剣を返しながら言った。

「お気を付けてください。団員が気絶でもしたら、誰が悪いと言うのです? 全員を率いる者がしっかりしなければ、騎士団は崩壊します。そして、それはこの国の全てに影響します」


 では、失礼します、と僕はお辞儀をして自分の第二の家である、第三騎士団に帰った。何も報酬がなかった気もしたが、特に何でもよかった。一切ないとしても、気にしなかった。全ては今の環境が続くのなら、それでよかった。


 それに新たな発見も色々あった。これで、より一層第三騎士団の人々を鍛えるのが楽しみになった。

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