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リーゼの報告

 必要な書類を持った、リーゼ・ワークストンは大きな扉を空いた手で軽く、叩いた。甲高い、拳が当たる音がした。奥から声がして、リーゼは中に入った。


 椅子に座っていた王は、更に何か言うより先に近くの椅子に手で案内した。その顔はリーゼの報告をいち早く聞きたいと、王とよく話している人はすぐに分かった。そして、リーゼもそれが分かる一人だった。少し困ったような顔をしながら、着席した。


 王はそのリーゼの顔に笑った。

「レインフォードがお前を困らせるのか?」


「いや、違います。王様の子供らしい態度に困るのです。レインフォードの方も悩ましい問題ですが…」

 と、書類を机の上に置いた。


 下を見て、書類を読んでいた王はふと顔を上げた。

「何々…第三騎士団長としての宮廷魔法師はまだ来ていないとして、少年兵として潜伏している、か。つくづく面白い事を考えてくれる」


「そこまで面白い事でもないです。素早く指示を与えたい、こちらとしては困ります。ですが、手紙や荷物はしっかり受け取っているので、文句を言うのも難しいです」

 と、リーゼは軽く溜め息を付いた。


「その組織の全てを知りたい時は、上からではなく下からの方が全容が見える、とは言う。だが、普通の者なら、プライドが邪魔をして中々出来る事ではない。が、宮廷魔法師のローブを着ているのに、バレないと言うのは、笑える話だな。彼らは、学生がここまで若い者とは一切思っていないのだろう。レインフォードの近くにいる者は常識を忘れるな」


「それは、王様もその一人です」

 と、リーゼは冷たく王を見た。


「まぁまぁ。そんな顔をしないでくれ。だが、レインフォードがこれから何をするかは本当に、楽しみになってくるな」


「そこまで期待して、何もなかった時はどうする気なのですか?」


 王はリーゼを見る目を細めた。

「それは、リーゼ。お前も、よく理解しているだろう。レインフォードがここだけで、止まるはずがない。何をしたいかは分からないとしても、野望があってやっているようでもない。ただ、その力が強過ぎるために、何か野望があるように見えるの、かもしれない。彼が無意識に敵を作り過ぎないようになるのが、大人の責任だ」


 負けないように、リーゼはキツく王を睨んだ。そこに優しさは一切ない。

「王様は、つくづくお優しい方ですね。普通なら、そこまでしませんよ。宮廷魔法師になったと言う事は、年齢がどうであれ大人の仲間入りをした、と言う事ですが……そして、褒美のように軽々しく今度からは宮廷魔法師にしないようにしてください」


「それは分かるが…今回はいい者が手に入っただろう。恩返しの意味もあるのだ」

 と、王は少し怖じけた様子だった。


「今回だけですよ。普通ならここまで順調にはいきませんから」


「…それは、分かってる」

 と、王は頬を膨らませそうな顔をした。


 リーゼはそれを見ながら、笑うのを抑えていた。

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