黒猫と僕
淡々と仕事を終わらせて、屋敷に帰ると荷物が玄関に置かれていた。
そのまま屋敷内で開けると、副団長のセイスと似たバッジだった。それは第三騎士団用だったので、団長と副団長の違いはそこまで変わっていなかった。バッジとは別の箱に、白色のローブが入れられていた。着て見ると、丁度自分の体がすっぱり入るサイズだった。宮廷魔法師に与えられるもののようで、魔法師の杖も入れられていた。丁度、ジークから貰ったものもあるが、何かに使えるかもしれない、とローブの中側の杖を入れれる所に収めた。
僕は自分の姿を鏡で見た。本当にどこにでもいそうな姿だった。宮廷魔法師は誰もの願いであるので、街の景色で白いローブを着ている人が多い事に今更気付いた。本当はこんなすぐに正体を明かす気ではなかったが、意外と弛んでいたようでこのまますぐにばれるのなら、自分から言う事にした。アレスやジークの時のように。何故なら、下手をしたらジークが乗り込んで来るかもしれないからだった。
来てくれるのなら嬉しいけど、少し恥ずかしい思いもあった。だから、腹を決める事にした。明らかになった方が動きやすいからでもあった。
「どう思う、黒猫?」
と、僕は足元にいた黒猫に聞いた。
第三騎士団の建物に置く訳にもいかないので、連れて帰る事にした。今の所、魔物の肉を食べていた。魔法で綺麗にしたのは、普通の肉と同じだった。
黒猫は猫らしい声をあげて、僕を見返した。体を僕の足にすりすりしたが、毛が付く様子はなかった。普通の猫とは少し違う様子にも見えた。家具を壊す様子もなく、やけに人の言葉を理解していた。
「よし、行くか」
僕がそう呟くと、黒猫が肩に跳び乗った。正確に言うと近くの家具を伝って、僕の肩まで辿り着いた。これもほんの数時間で黒猫が習得した、技だった。扉も自分で開けれるようだった。
外を歩いていても、黒猫は上手にバランスを維持していた。中々、そこに乗り続けるのは大変だと思った。少し後ろを魔法で見ると、何とも器用に魔力を使用していた。僕の肩から落ちないように、固定していた。が、僕の方は何も感じないほどだった。僕の魔法を見て、何かを習得していたようであった。
つくづく、僕の周りには面白い人が現れるのだった。
街を歩いていると、人々が暖かい目を僕と黒猫に向けていた。わざわざ猫を肩に乗せる人などいないからだろう。精々、足元にいるぐらいだった。黒猫は本当に魔法師の飼い猫となったのだった。
これなら、より豊かさを第三騎士団に連れて来そうだった。




