第三騎士団
王立魔法学園を早期卒業した僕は、学生寮から出た。本来ならそこに住んだ方が便利ではあるが、未来あるこれから入ってくる学生に置いた方がいいと考えた。後は更に学園長から何かを取られるのは、面倒だったから。
これから第三騎士団で働くようになると言う事で、僕は宮廷魔法師になると同時にもらった屋敷に住む事にした。丁度使える事なので、別に借りる必要はなかった。使えるものは使う、それが僕ならではの生き方だった。幸い、一人で生きるので使用人もいらない。明かりや、火、水も全て魔法で補える。荷物も収納魔法に入っていた。普通の人なら贅沢をしたくなるかもしれないが、僕はそれでよかった。魔法を使って生きるのも、慣れれば何とも楽である。
だが、ベッドだけはちゃんとした所で寝たいのだった。それが僕が望む唯一の贅沢とも言えた。それには家がいる。今は屋敷をもらえたから、十分だった。入学式の前日は、上空で寝続ける訳にはいかないので宿を借りた。やろうと思えば、上空でベッドを取り出して、見えない魔法を掛けて寝る事も出来る。全てはもう気持ちの問題だった。
食料も狩りに出掛ければ、手に入る。魔物を食べる人はいないけど、ちゃんと魔法を通せば食べれるのだった。
僕はこれまで狩った魔物の肉などを食べて、早々と朝食を済ませた。何かする事もないので、職場に行く事にした。一応、騎士団長となるので職場環境やどう言う人がいるか、知った方が面白いと思った。
王城の近くの建物の一つに、第三騎士団は置かれていた。魔法師だけの騎士団はこれまでは小型部隊だったが、宮廷魔法師が誕生した事で大きな騎士団として生まれ変わった。これまで魔法師は、後方部隊のような役割が与えられていたが、僕が現れた事で王国内の常識は覆った。これからは使える魔法師はより一層、前線に送られるだろう。
僕らは彼らが無駄死にしないためにも、鍛える必要がある。自分だけが出来ているだけでは、すぐに倒れて事態が悪化するだけだからだった。
第三騎士団の建物は大きな扉が開け放たれて、解放的なイメージがあった。僕はわくわくしながら、中に入って行った。
受付嬢はこちらを見た。
「こんにちは。今日来る予定の、少年兵であってるかな? 十分前から来るとは、最近の子は偉いね」
と、言って来た。
僕を宮廷魔法師ではなく、少年兵と勘違いしているようだった。
その設定を僕は楽しむ事にした。最初から騎士団長であると分かれば、誰もが行動しにくくなるだろう。だけど、ただの下っ端の少年兵なら誰もが話しやすいはずだ。少し話しやす過ぎて、何か困る事があるかもしれないけど。
「はい、そうです。よろしく、お願いします」
と、僕はお辞儀した。




