アレスから見た学園
僕は話題を変えるためにもアレスに聞いて見た。この王立魔法学園では何を教えているのかが、気になったから。
僕は劣等生であるが、アレスは人々から尊敬の目で見られる、優等生である。見える世界はどのように違うのだろうか。アレスなら余り人の事など、気にしないと思うけど。
「思ったのだけど、アレスは授業どうだったの?」
僕の問いにアレスは暗い顔をした。
「面白くないよ、全然。こうレイと話す時の方が何倍も楽しい。そして、意味がありそうな感じがする。ただただ凄いと言われるだけの授業なんて、生徒に何を教えたいのだろう」
僕はアレスの言う教室の景色を想像した。彼なら、幾ら褒められても嬉しくないだろう。でも、優等生と言われて嬉しいだけの生徒には、その声が気持ち良過ぎるのである。
「んー。自尊心とか?」
と、僕は少しふざけながら言った。
「ははは。レイは面白い事を言う。本当に正しいと思うよ。魔法学園には必要のない事だけどね」
そうアレスも笑い出した。
「具体的には授業で何をしたの? やっぱり、戦いごっことか?」
「戦いごっこって…それは訓練の授業だね。座学よりも、この訓練の方が多いと思う」
それは戦闘用の魔法使いを集めるためであった。その人の力をひたすら、磨くために。現在この国は、戦争をしていない。だけど、魔物を狩る仕事があった。魔の森から溢れ出る魔物を駆除する仕事が。
だが、魔法使いは一部の超エリートと呼ばれる者以外、余りいい職には付けない。なので、学園の中でも、既に人生を賭けた戦いが始まっている。
「訓練以外にも、実際に人と魔法で戦う、対人戦もやり始めると思う」
僕はそこで自分がボコボコに倒されるのが、目に見えていた。大人しく倒されたりはしないけど。必ず無双してやる。そして、彼らの顎が外れるほど、驚かしてやる。
「レイは大丈夫? 対人戦。出たら色々やられそうだけど…」
「大丈夫、安心して。魔法の訓練でさえ大変だから」
と、僕は笑った。
アレスは僕の本意は分からないが、中にある自信を知ったようだった。
「なら、応援しているよ…レイ。何かあったらいつでも聞いてね。隣人…いや、友達だから」
僕はアレスの気持ちをありがたく、受け取った。
「ありがとう。困った時にはちゃんと言うよ」
二人で楽しそうにしていると、アレスが何かを思い出す顔をした。僕はそれが大きな何かだと、思った。
「どうしたの、アレス?」
「あぁ。言い忘れそうだった。先生が武闘祭がやって来ると言っていたよ」
──武闘祭? 戦う祭り…魔法学園で?
と、僕の頭の中ではてなマークが現れた。
「何で戦うの?」
「それは当然、魔法だよ。レイ」
「そうか…」
まだまだ実力を発揮出来る舞台が、用意されているのだと知った。それにあの謎の委員会、特別委員会も結構気になる。
「…レイって何か悪い事企んでない?」
意外と察する友達のアレスが言って来た。僕は否定するため、両手を全力で振った。
「全然違うよ、アレス君。何も悪い事、する訳ないだろ」
アレスが人差し指を立てた。
「一応言っておくけど、戦いは魔法だけだから。物を打つけたりは出来ないよ」
「何でアレスは僕が暴れると思うの?」
それは凄く気になっていた事だった。
アレスは一度、天井を見上げてから答えた。
「うーん。やっぱり他と違うオーラがあるからかなぁ。レイのように生き生きしている人は見た事ないし…教室でも皆、壁があるみたいで」
「…そうか」
それは僕が予想していた答えではあった。この学園はどこまでも腐っているのかも、しれない。僕に言わせたら学園生活など、楽しみがなければ面白くない。学園だけが、自由に自分の翼を伸ばせる所だと思う。そして、先生はそう言う生徒を全力でサポートしないといけない。
だが、それが出来ていないと一目で分かる。
僕は勢いよく立ち上がった。下でアレスが驚いて、慌てふためくのが見える。
「なら、僕がアレスが楽しく過ごせる学校を作ろう」
誰もが出来ないのなら、自分がやるしかない。自分がやらなければ誰もやらない。自分だけが出来るのなら、するしかない。何事も挑戦から始まると思った。幸い自分は、それを行える力を持ち合わせている。無詠唱魔法と言う自分だけの力を。
アレスは僕の思いに頷いた。
「分かったよ、レイ。僕が君の全てを見届けよう。だから、頑張ってくれ。僕はいつまでも君の味方でいる」
と、そうアレスは僕に宣言した。