アレスと第一騎士団長 2
第一騎士団長が騎士団の象徴である、白銀の剣を構えた。一方でアレスが、ダンジョンでも愛用していた自分の剣を持った。白の剣にしなかったのは、剣が切れたら試合にならないと思った、彼の気遣いでかもしれない。僕なら、最初から相手の全てを切りそうだけど。
騎士団長は騎士団長として、民と言える一生徒を怪我させないように。アレスは相手の面子を保つために、気を付けているようだった。二人とも真正面からは、戦えない様子だとよく分かった。
だが、出来る限りの力は出そうとしているのは、双方とも同じだった。
アレスが動く様子を見せないので、騎士団長が先手を放った。
「我が前に現れよ。何よりも硬く、相手の動きを止める、【魔法の壁】。彼に止めを刺せよ、その力全てで。【雷弾】」
と、アレスを壁で囲み、背後から雷を放つ攻撃を行なった。
詠唱から何が来るか分かったアレスは、剣に魔力を流した。そして、魔法の壁をすぐさま切り伏せた。
アレスの剣で切られた壁は、跡形もなく消えた。騎士団長は魔力を込める動作は不慣れのようだった。それか、そもそもそれについて、教えられていない可能性もあった。
背後に振り向いたアレスは、迫る雷弾さえその剣で切った。
辺りは突然の事で静寂に包まれていた。が、少しずつ人々は息をしだした。
「なんと言う事でしょう。アレス・フェッツ選手は剣で魔法を切りました。これは突然の事に、第一騎士団長も驚いています」
と、アナウンサーが実況を再開した。
対戦相手だった騎士団長さえ、アレスを見つめたまま動こうとしなかった。もしくは、動けないようだった。これまで不可能と言われていた事を、目前の少年が行なったからかもしれない。ただ、誰もしなかっただけなのだが。
騎士団長が動かない事を見て、アレスは綺麗に剣を鞘に直した。そして、また最初のようにお辞儀をした。これに対しても、人々は歓声を上げていた。
アレスは佇む騎士団長に近付くと、力強い握手をした。最初は戸惑っている様子の騎士団長もそれには、よく分かっているようだった。
アレスが僕らに振り向こうとした時、辺り白煙で包まれた。




