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アレスの戦い

 アレスは試合に向けて、剣を持っていた。対抗選手は当然持っていなかった。なので、分からない人からすると、異様なように見えたと思う。


 彼が相手を選手ではなく、ダンジョンの魔物のように無意識に接しているとよく理解出来た。それか、本気を出そうとしている、と。ここまで真剣に取り組んでいるのは見た事がなかった。国王の御前と言う事もあり、アレスは貴族の一員としての思いがあるのかもしれない。



 彼は会場入りすると、まずは対抗選手に綺麗なお辞儀をした。観客から何やら声が聞こえて来ていたが、それは無視した。アナウンスも、アレスの剣に付いて不思議そうだった。


「アレス・フェッツ選手の手にあるこの剣。これは魔法と応用すると言う事で、今回特別に許可されました。果たして、どのような試合を見せてくれるのでしょうか。対して、対抗する選手はーー」


 アナウンスによると、対抗選手は一つ上の学年のエースのようだった。新入生のエースとも言えるアレスと戦えるのは、それぐらいの人しかいないと言える。だけど、これもダンジョンに入る前の事である。今なら、誰でも倒せる。後はその思いがあるかどうかである。





 アレスが剣を構え、対戦相手が杖を持つと試合が開始された。


 対戦相手はまだ動かないアレスを見て、魔法を唱え始めた。

「【彼を果てまで追えよ。そして、その真の姿を見せろ。雷の花(ライニン・フラワ)】」

 と、アレスに向かって鋭い雷が一筋向かった。


 既でアレスは横にずれる事で、避けた。先程いた場所に、雷の花が咲いていた。あのままそこにいれば、少しやられていたかもしれない。


 アレスは何も呟く事なく、対戦相手をただ見つけていた。相手にすれば、なんとも大きなプレッシャーを感じるだろう。


「っ…刺さりまくれ、その針達よ。【雷の針(ライニン・ピ)】」


 焦った様子の対戦選手は、急いで雷の針を何個も上空に作った。顔には余裕そうな表情が窺える。

 詠唱から雷が好きなのだと、知った。

 対してアレスは何も変わってなかった。ただ相手を見つめ続ける。そして、少し動き出した。


 アレスはそのまま迫って来る、何本もの雷の針を剣で防いだ。


「くそっ。そんなに見てくるな」

 と、対抗選手が後ずさった。


「アレス選手はこれまで魔法を一度も使っていません。果たして、どうなるのでしょうか?」

 と、アナウンサーが呟いた。


 周りから罵声などが飛び交い始めた。本当に彼らは静かにする事を知らない。だけど、アレスは気にしていないようだった。




 剣を握り締めると、アレスは一息付いた。それだけで長い時間が過ぎたようだった。彼は何も呟く事なく、少しずつだが確実に相手に近付いた。


「くっ来るな」

 と、対抗選手が叫んだ。


 ここまで見られたり、追い詰められた事がないのだろう。

 ピリピリする雰囲気から、アレスが無意識に殺意を放っていると気付いた。本当に、狩り人になり始めている。だけど、今はそれは必要ではない。


 誰にも気付かれないように、アレスに回復魔法を発動した。すると一気に、場の空気が変わった。彼は何をしていたか、気付いたようだった。


「【魔法の槍(ア・スピ)】」


 アレスの周りに何個もの魔法の槍が生まれた。どれも鋭くて、威厳は放っている。一種の出演のようにも見えた。もし、彼がジークの影響を受けているのなら。

 だが、彼はそれを放つ事なく、更に一歩近付いた。獣のようなものが近付く姿はさぞ恐怖を呼ぶだろう。もう相手は、アレスの目に釘付けだった。


「どうしたのでしょうか? 動きません。何が起きたのでしょうか?」

 と、耳元でアナウンスの声が聞こえた。


 アレスは一度身を低くすると、一気に駆け出した。目前で叫ぶ対抗選手の声がする。もう、抵抗する事も出来ないようだった。


 その命を刈り取るように、アレスは対抗選手に剣を突き付けた。正確には剣先にも触れていなかったが、その首筋からは血が垂れていた。それだけで、魔法が使われていると証明されていた。



「アレス・フェッツ選手の勝利です。素晴らしい、剣と魔法を応用するとは思ってもいませんでした。これまでは別々のものとして、考えられて来たので。果たして、賢者の再来と言えるのでしょうか?」

 と、アナウンサーがこれは盛大に叫んでいた。


 アレスは賢者を言われた時に、口元を抑えていた。笑うのをなんとか防ごうとしているようだった。


 しゃがみ込んでいる対抗選手に近付くと、手を差し出していた。彼は最初、躊躇っていたが後に力強く握っていた。


 会場からは歓声が響いた。これで新入生でも在校生に勝てる事が証明された。アレスだからこそ、不正と思われないいい事もある。



 アレスを覆うオーラもすっかり、正常なものに治っていた。彼は僕らを見ると、手を振って来ていた。警備として抜けれない事を考慮してくれていたのだろう。僕は軽く、反応した。


 ジークの方を見ると、まだ硬い顔をしていた。それが正しいかもしれない。

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