武闘祭前日
そして、時は瞬く間に過ぎ去った。もう、次の日に武闘祭が訪れようとしていた。この王立魔法学園に取って、毎年一番大切とも言える行事だった。
僕は警備の事もあり、特別委員会の委員長である、ジークに呼ばれた。と、言うか、放課後に勝手に向こうからやって来たのだった。丁度、アレスと自由に過ごしている時だったが、僕らはもう何も気にする事はなかった。最近は冒険者ギルドにもよく行くようになり、更に交流を深めていた。
僕の部屋を眺めながら、ジークが呟いた。
「ちゃんと、暮らしているような部屋になって来たのではないか?」
襲撃された時とは違い、部屋は少しずつだが、色んなものが飾れるようになった。と、言ってもダンジョンでのポーションを置いているようなだけだった。私物と言うものは、最初からなかった。それは仕方ないかもしれない。でも、本棚には本を数冊だけは入れていた。
「色々、アレスにも言われたからな」
と、僕はアレスを見ながら、返した。
本当にアレスから色々言われなければ、ここまで部屋を変える事はなかったと思う。でも、彼らからするとまだまだ変える所があるかもしれない。
何気ない会話をしながら、僕はジークを見つめた。
「今日はどう言う用事で来たの? 大体の事は想像出来るけど」
笑っていたジークが真剣な顔をした。それに伴い、アレスも同じオーラに包まれていた。
「明日の武闘祭に、警備を頼みたい。それもただの警備ではなく、国王の側でお願いしたい」
と、頭を下げて来た。
ジークからすれば、当日に何かが起きれば責任は重大である。ただの気休めの警備かもしれないが、出来る事は最大限したい。それが彼の思いなのだろう。それに、学園にも被害が及ぶ事もあり得る。なら、それが可能な僕の手を借りたいのだろう。
「最初から僕は武闘祭の試合には参加しないだろ、そうジークが前教えてくれた。だから、自動的に警備に着くと思うよ。僕も目前で誰かが殺められるのをただ見る事は出来ない。だから、出来る所まではする。でも、そちらの事情は大丈夫なのか?」
僕はジークに警備の配置場所に付いて、聞いた。
協力するのは、決して忠誠心がある訳でもない。ただ生き残りたいと思う中で、国王と関わる事など一切ないのだった。本来なら出会う事もないかもしれない。だけど、友達である彼の思いを踏み躙るのも好きではなかった。それに、自分がそこまで非道とは思いたくない。
承諾した事で、ジークは嬉しそうな顔をした。
「ありがとう、レイ。警備の方は大丈夫だ。最初からその方で、計画を立てていたから。これまで何もなかったが、裏の勢力が動いているとも言われている。だから、最大限の警戒は必要である」
と、彼は裏の情報を僕らに漏らした。
それは彼が僕らを信頼しているからだった。ただ一つの言葉でも、ジークに取って、危険を犯している場合もある。
だから、嬉しかった。ここまで信用してくれていると、言う事だった。
アレスはまだ心配しているようだった。だから、僕は彼をなんとも安心させた。
「ーー大丈夫。任せて」




