魔法と言うもの
内容を編集しました。
興味のある魔法の本を借りてそのまま自室に戻った。安心して楽しく読むのはそこが一番安心出来たから。
図書館にいれば面倒な事に巻き込まれると、目に見えていたから。それに司書さんが借りていいと言ってくれてもいた。
本をベッドの上に置くと、僕は倒れ込んだ。そして、黙々と読み始めた。
魔力とは誰もが持っている物である。血管が全身に血を運ぶように、魔力も全身まで行き渡っている。
だが、魔法は誰もが使える訳ではない。この学園で魔法の使える優等生と、使えない劣等生がいるように。僕も詠唱魔法は初級しか使えないが、無詠唱魔法は得意である。それは何故か。何故、僕しか無詠唱魔法が使えないのだろうか。
気のせいなのかもしないのだったが、今の所は僕の近くに同じ無詠唱魔法を使う人はいない。劣等生と言われる魔法全般または、初級魔法しか使えない者は誰もが無詠唱で何かをしている様子はなかった。古代の書物によると、教会に聖女と呼ばれる人がいると書かれていた。僕はそちらの方の分野について詳しく知らないので、本当かどうかは知らなかった。が、歌を歌う時に数々の奇跡を起こすと書かれていた。
そこが、僕の無詠唱魔法と同じように見えた。が、まだ規模は小さいようだった。たとえば、古代ではそれだけで奇跡と言われた、小さな傷を治す事や気分が悪い人を治す事だった。でも、それらはほんの気休めのおまじない見たいなものだった。誰も僕のとは、明らかに規模も威力を違った。
少し自分が異質に見えるようになり、僕は気分が悪くなった。
王都と言う都会に出るまでは、さほど気になる事ではなかった。が、やっぱり他者と違うと言う思いは案外重く自分に伸し掛かるのだった。だとしても、ここで諦める気にはならなかった。たとえ未来が何か変わってしまったとしても、挑戦してからでないと後悔さえ出来ないと思った。全てをやり切った後なら、その結末がどうであれ満足出来ると思った。
後はただ怪我と犯罪をしないだけ。そして、巻き込まれたりもしないようにする。しっかり自分が何が出来て、出来ないかは把握しているつもりだった。でないと、自分を最初の頃より成長させる事さえ出来ないはずだった。
一人目に家族。そして、二人目にはアレスがいる。なら、後は何でもなるのだった。たとえ世界の誰もが僕を見捨てる選択を選んだとしても、僕の側にいて応援してくれる人はいる、はず。僕は彼らを信じたかった。だから、誰らには出来るのなら僕を信用して欲しかった。そして、それにさえ適さないのなら見極めて欲しかった。どんな噂話も気にせず、その目で全てを見て欲しい。それから、考えて欲しいのだった。果たして、僕は信頼にあたいするかどうか、を。
あの時、おじさんが僕を信用してくれたように。一切信じてくれない人も、何か切っ掛けがいるのだった。ほんの些細な、小さな事でも。人は切っ掛けがある事で出会い、新たな世界を知る事になるのだった。
「今昼休みだけど。レイ、大丈夫か?」
と、アレスの言葉で僕は顔を上げた。
扉からアレスが不安そうにこちらを見ていたのだった。
「うん、もう大丈夫。ありがとう」
「そう? 何かあったらいつでも言ってね」
だが、僕はただ一言返した。
「ーーこの学校は魔法が全てだから。アレスに聞ける事は少ないかも」
ちなみにここで言う魔法は、ただの詠唱魔法である。だから、無詠唱魔法はカウントされない。逆に嫌われるほどである。
でも、その現実に僕は嘆かない。逆に好機と言える。人々が見下すほど、その真の力に驚く。下に見ているほど、大きな力はより大きく見えるから。
「でも、ありがとう。アレス。君の言葉は嬉しいよ」
キョトンとしていたアレスは、僕を見た。
「よく分からないけど、役に立てたのなら嬉しいよ」