衛兵と冒険者ギルド
近くで巡回していた衛兵はこちらを見ると、すぐに回れ右をした。そして、すぐに冒険者ギルドから職員を引き連れて来た。
王都では冒険者ギルドは衛兵と、同盟関係とも呼べるほど仲のいい関係を維持していた。ダンジョンとは時に王都、そして国の存続にも関わる。だから、ここでは対等な関係を維持していた。でも、地方に行けばそこまでではない事もあった。特に貴族とは結構冒険者ギルドは仲が悪いのだった。
「どうしたのだ?」
と、男性職員が近付き、素早い手付きで冒険者を回収した。
冒険者ギルドの職員は必ず、ベテランの冒険者であった人が採用されていた。ギルド内で面倒事が起きる事もあるので、そのためには必要な処置だった。それに自衛のためにも必要だった。だから、大抵の魔法と剣は扱える人達である。
「離せっ。離せっ。無礼だぞ、この俺様に」
冒険者の男性は、自分の事を貴族か何かと勘違いしているようだった。でも、下っ腹の冒険者より職員の方が権力があった。それとAやS級になると、それ以上になる。
僕をじっと見た男性職員が口を開いた。
「そこにいるのは、S級冒険者だぞ。無礼を働いたとして、切り捨てられても可笑しくないのだ」
男性職員の言う通り、僕のようなS級冒険者には特権があった。それが無礼者に対する制裁を加えれる事だった。でも、僕は余り表立って何かをして来た事はないので、これを使った事になかった。
貴族や王様には曖昧な関係である。だが、彼らが僕に命令は出来ない状態であった。S級冒険者の自由さから、なったと言う事もある。
「何、S級冒険者だと? この小僧がっ。馬鹿な、俺を惑わせるな。そんな事がある訳ないだろう」
と、僕を睨んだ。
だが、男性職員に捕まった様子ではその怖さもなかった。
「お前がどう思うかは、気にしない。重要なのは、お前がした事だ。全てはギルドマスターに一任されるが、これでランクが下がっても自分の行為に反省する事だ」
男性職員が、僕と目を合わせた。
「彼が済みませんでした、レインフォード様。どうか、これからも冒険者ギルドとよろしくお願いします」
と、途中から頭を下げ始めた。
いきなりの事に僕は驚きながら、男性職員をなんとか止めさせた。
「大丈夫です。冒険者ギルドとの関係は続けます。これだけの事で解消される事はないです」
「本当にありがとうございます」
と、男性職員は再度お辞儀をした。
そして、問題の人を冒険者ギルドに引っ張って行った。それを眺めていた僕は、どこから誰かが見ている事に気付いた。
後ろに振り向くと、アレスとジークの二人が僕をじっと見ていた。
僕は力なく、片手を上げた。
彼らに僕が近付くと、ジークが同じように片手を上げてくれた。
「レイの事だから、まぁ…そう言う事もあると思っていた。だけど、S級とは知らなかったが……これまでの実力を考えると、うん…やっぱりあり得るな、全てはレイだから」
「そうだね、レイ…だからね」
と、レイも同じように頷いていた。
拒絶されるよりかはいいけど、そこまで頷かれるのも中々慣れない。僕は彼らの思いを受け取りながら、話の話題を変えた。
「ありがとう……なら、今からでも買い物に言ってもいい? 折角行きたかった所に行けない事になってしまったから」
「うん。いいよ」
と、アレスが頷いてくれた。
「先程は何も出来なくて、ごめんな」
ジークの小さな謝罪を僕は後ろで聞いた。
でも、彼は何一つ悪くないのだった。僕としてもただ、沢山の人が被害を被るのが嫌いだった。
僕は弟が好きそうな王都さらではのお菓子を買うと、故郷まで配達を頼んだ。魔法で一瞬で運べるかもしれないけど、それだと余り味がないと思った。弟のためにもわざわざ王都から運ばれて来た方が、面白いはずだから。
途中で二人も少し買っては、味見をしていた。やっぱり、お菓子が好きな所は僕ら三人、同じようである。
他の学生ならもっと違う所に寄るかもしれない。例えば、服屋さんなどの自分のお金持ちさだけを見せる、買い物をする人も多かった。なので、僕らのようなただ好きな事のために買い物に行く人は、極めて稀とも言えた。僕らはこう言うタイプの人だったから、お金を無駄にする事もなかった。
王立魔法学園は言わば、国民の血税で成り立っている。国からの支援はあるとしても、学園生活は無駄をする訳にはいかない。だから、学生として恥じる事のない姿ではある必要がある。馬車代を入学祝いで払ってくれた、親のためにも自分が出来る事はやり切らないといけない。
幸い、ダンジョンや僕が貯めていたお金があるので、何かに困る事はない。親には冒険者をしているとは言っていないので、辛い中で馬車代を払ってもらう事となった。次からはそんな事がないように気を付けたい。
弟が自慢出来る、兄にもなりたい、と言う僕の思いもあった。




