レベル上げ 2
僕はまだ酔いに醒めない様子の彼らに言った。
「レベル上げはまだ始まったばかりだよ。ここだけで満足していたら、他の冒険者から舐められる可能性がある……僕はそれを一番危惧している」
彼らを仕事が載っている掲示板まで、案内した。そこには壁一面に付箋とも言える、紙が沢山貼られている。子猫を探すような依頼から、巨大な魔物を狩って欲しいなど。たまには家庭教師や、買い物の手伝いまでもが載っていた。
ただ素材の買取をするより、こう言う依頼に沿った何かをした方が、何倍もランク上げに影響していた。冒険者ギルドは国家に属さず、その周りの影響を大きく受ける。所謂、地域型でもあった。
だから、こう言う依頼をやると、向こうも喜ぶ。そして、自分にも利点がある。
「こんなに依頼のあるのだな。これがなくなる事はないのか?」
と、上を見ながらジークが呟いた。
「ないな…あるとしたら、戦争などの時かもしれない。だけど、今は当分ないと思う」
戦争になれば、こう言う依頼もなくなるかもしれない。残るのは、大抵が兵士の募集ぐらいである。でも、冒険者ギルドだからもしかしたら、戦時中になっても続けるかもしれない。それが欠かせない人は、近くに沢山存在するから。
「こんなのがあるとは、知らなかったー」
こちらはアレスの声だった。
心の底から、驚きを露にしている。純粋な様子は見ていてなんとも落ち着く。きっと周りの人も、同じように思った人が多いと思う。
僕は掲示板を見ながら、一枚を取った。
「これだな」
「それはなんだ?」
と、ジークが頭を差し込もうとして来た。
僕の手元には、中級ポーションを求める依頼があった。小級ポーションは比較的、誰でも手に入れれる。が、中級になるとその難しさはいきなり変わる。だから、中級ポーションは需要が結構あった。
その依頼書を握り締めながら、僕は依頼受付のカウンターに行った。ここでは新規の依頼も受け付ける。それと一方で、冒険者が依頼をする時の事務作業も行っていた。
僕が依頼書を渡すと、女性職員が受け取った。
「中級ポーションの依頼ですね。数に限定はありませんが、何個までご用意出来そうですか?」
「二つなら可能だ」
と、僕はカウンターに二つ置いた。
機械を通した女性職員がこちらを見た。
「はい。依頼は無事達成しました。これでランクを上げる事が出来ます。どうしますか?」
僕らは顔を合わせてから、頷いた。
「お願いします」
これで彼らはすぐに、C級になった。
初心者にならなくなるためには、一日だけで手続きが済むのだった。後は、ベテランになるまで彼らが自ら上げて行く事が必要だ。




