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冒険者登録

「お前らは誰だ?」

 と、ギルドマスターがこちらを睨んだ。


 いや、正確には見たのだが怖過ぎる顔が、睨んでいるように思わせた。どのような諍い事をも止めるために、その場を制す力が求められる。きっと元は最強と呼ばれた冒険者である可能性が高い。


「ジーク・アーネストだ。こっちがアレス・フェッツで、そっちがレイだ」

 ジークは僕らを交互に指差した。


 ギルドマスターは軽く頷いた後、またこちら見た。

「王立魔法学園の学生がどのような用事だ? 今はその時期ではないと考えるが…」


 流石に観察眼が鋭いギルドマスターは、僕らがどこからやって来たのか当てて見せた。


 ジークも同じように相手を観察しているようだった。

「冒険者登録は、ここで合っているのだろ?」

 と、問い掛けた。


 すると、背後で笑い声が聞こえて来た。お遊びのようにしか、見えないのだろう。


 ギルドマスターは煩い奴らを目で黙らせた。

「まぁ。いいだろう。一度ぐらいは聞いてやる。後を突いて来い」


 僕らはギルドマスターの方を付いて行った。特別な応用室への階段は、入り口から見えた玄関近くにあった。





 ギルドマスターは扉が閉まったかを確認した後、僕らの前に座った。机に頭を打ち付けながら。

「先程は済まなかった。どうか、不敬罪で切り捨てないでくれ……ギルドマスターとして彼らから、舐められる訳にはいかないのだ。だから、分かっていたとしても丁寧な対応が出来なかった」


 一瞬驚いた様子のジークだったが、流石に隠すのは上手なようだった。


「もう、何も気にしない。私は何も見ていないし、聞いていない。だから、お前が何に謝っているかさえ、分からないな」

 と、両手でその気持ちを更に表現した。


 下を向いていたギルドマスターが頭を一気に上げた。

「ありがとう。ありがとう、君達」


 彼はジークに握手をしようとしていたが、応じる様子がないのでアレスが代わりに受けていた。


「でだ、私達は冒険者登録が出来るのか?」

 その様子は早くしたいと、よく表していた。


「いつでも出来るぞ。何か買い取る事を出来るが、登録した方が色々楽だ。三人でいいか?」

 と、ギルドマスターが僕らを見た。



 僕は小さく呟いた。

「二人分でいい。僕はもう持っているから」


 案外、部屋に響いたな、と少し考えた。


「なら、二人でするぞ。向こうの部屋で、君はそのギルドカードを見せてくれるか?」


「はい」

 と、僕は頷いた。


 部屋を出るギルドマスターの後を追った。階段を降りると、冒険者達が珍しそうな目で僕を見ていた。


「なら、あっちでお願いな」


 僕はギルドマスターに指差された、総合受付のカウンターに行った。





 事務作業をしていた女性職員が顔を上げた。

「ようこそ、冒険者ギルドへ。どのような御用でしょうか?」

 と、花丸の笑顔を向けて来た。


 僕は落ち着いた状態で、ただ用件を言った。

「ギルドマスターから言われて、持っている冒険者ギルドの提示をしたい」


 女性職員は頷いた。

「分かりました。カードをお願いします」


 僕は収納魔法でカウンター上に置いた。突然の出来事に彼女は、何かを言い出しそうだった。が、すぐに抑えたようだった。


「…収納魔法。いや、何でもないです。ありがとうございます……え?」



 僕のギルドカードを目にした、女性職員が驚きを露わにした。


「済みませんが、一度ギルドマスターに問い合わせます。暫しの間、お待ちください」


 ギルドカードは不正をされないように、確認をされる事がある。だから、特に可笑しくはない。




 小走りでやって来たギルドマスターは、何とも言えない顔をしていた。僕の側にやって来ると、耳元で囁いた。


「レインフォード様。我々の冒険者が申し訳ありませんでした。噂はここまでも届いています。貴方は我々一同の剣であり、盾でもあられる存在です。これからもどうか、この冒険者ギルドをご利用くださるのならば、光栄です。彼らには最大限のおもてなしをしたと思います」


 いきなり口調を丁寧にした、ギルドマスターが僕のギルドカードを返してくれた。左上には「S」の文字が彫られている。一見は分かりにくいが、それは冒険者の最高ランクを指す言葉だった。ーーS級冒険者。


 一人だけで最難関なダンジョンを完全攻略出来る、存在。一人だけで街を魔物から守り抜ける、存在。見切られた冒険者ギルドは地獄まで落ち、好まれる冒険者ギルドは天国まで届く。その剣と力は誰もが憧れて、誰もの英雄とも言える。


 ただのお金稼ぎのために始めた、ダンジョン攻略や魔物狩りはいつの間にか凄い所まで行ってしまっていた。幸い、その人物が誰かと言う所までバレないため、迷惑を掛けられる事はなかった。逆に伝説級であるため、誰もが命令をする事も出来ないのだった。

 証明するのはたった一枚のギルドカード。だが、その力さえも立証するものとなっていた。



 レインフォード。それが僕の本名である。


 だけど、長いからずっと愛称で通していた。それが、レイ。レイならどこにでもある名前だからだった。


 これでずっと雲隠れしていたとも言える。だから、突然現れた存在に彼らはきっと驚いたはずだ。



 僕は彼らに小さく笑い掛けた。

「あの彼らには、何も教えないでくれ」


 すると、当然のように力強く頷いてくれた。

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