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冒険者の扉

 冒険者ギルドは学園からさほど遠くない所にあった。


 非常事態に駆け付けれるように、ダンジョンがある森の側に建てられていた。学園のようにお金があるイメージは持たせない、木で出来ていた。だけど、それが逆に庶民的に感じさせ、比較的入りやすいオーラを放っていた。


 始めての場所にアレスとジークの二人は、軽く見上げていた。子供が広い空の雲を見続けているように。だけど、表情を隠すのが上手な彼らは何事もなかったかのように、視線をいつもの所に戻していた。


 扉には冒険者ギルドのマークである、剣が交差していた。


 昔にそれを酷く憧れていた記憶が自然と思い出された。僕はそれを振り払うように、軽く頭を振った。ただ一枚の扉で、世界が分けられている。冒険をする者と、しない者に。


「行こうか」

 と、僕は二人に語り掛けた。


 うん、とアレスが不安そうな目ではあるが、力強く返事をした。


 ジークは再度見上げてから、足を一歩前に出した。





 冒険者ギルドの中は、まだ人で混雑していた。土日と言う事もあり、そこまで冒険や狩りに熱心ではない人も、来ていたからだった。そんな中、僕らは沢山の視線に晒されていた。明らかにどこか場違いに映るのかもしれない。


 ジークは正統な貴族と呼ばれる一人のはずであり、何から何まで高位な印象を与える。アレスはそこまで裕福ではない貴族だとしても、貴族であるのは変わりない。だから、そのオーラは維持されている。


 僕は平民だとしても、学園に入るために多少は服に気遣っている。人からすればそれが平民用の最高服と分かるだろう。


 血が多い冒険者ギルドでは典型的に嫌われるタイプが、僕らだった。彼らは貴族の者はただ平民に命令だけを行い、後は遊び呆けているイメージがある。だから、ここにこれば徹底的に虐められる。もしくは嫌味を言われまくる。でも、この二人なら大丈夫だと思った。彼らは冒険者からも認められるはずの、力を持っている。自分だけの力を。



「おいおい、貴族さまかよ。こんな時間に暇なのだなぁ」

 と、大剣を背負う男性冒険者が近付いて来た。


 二人はそれに軽く、視線だけ動かした。

「おいおい、へ。無視かよ。それが出来ると本気で思うのか?」


 その男性はジークにちょっかいを掛けようと、手を伸ばした。が、ジーク本人に払われた。


「貴様は、アーネスト家に喧嘩を売る気か?」

 と、ジークの冷たい声が部屋中に響いた。


 いつの間にか辺りは静かになっていた。数名ジークの言葉に笑う人がいた。子供のくせに生意気だ、と。だけど、それ以外はジークの家名に恐れをなしているようだった。


「あのアーネスト家って、王家とも関わりのある一族だろ?」

 誰かが囁くのが聞こえた。


 僕はよく知らなかったが、それを聞いて少し納得した。ジークならではのオーラの説明が付く。


 だが、喧嘩を売った冒険者は引く様子がなかった。

「ふん。それがどうしたと言うのだ?」


 それが痩せ我慢であると、大半の人は気付いていた。もしかしたら、その冒険者はもう後ろに引けないと思ったのかもしれない。


「なら、死ね」

 と、ジークが腰の剣の柄を握った。


 凄く迫力があった。

 が、僕から見るとまだ彼が演技をしているのだと理解した。彼の悪戯顔は、印象的だから。





「待て、お前ら。この場で喧嘩など許すはずがない」

 と、一人の大男が現れた。


 何とも怖そうな印象で、ギルドマスターのようだった。


 彼は両方を冷たく見下ろしていた。お互いを止めるように。

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