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二人でいれば怖くない

 ジークはケルベロスを睨みながら、言った。


 ケルベロスからすると蟻んこであり、気にする事でもないかもしれない。それで逆上しないだけ、いいのだろう。


「今回はアレスが前衛に挑戦して見てくれ。私は後衛として、後ろからすかさずフォローに入るから…その白の剣も試して見たらどうだ?」


「分かったよ」

 と、アレスが白の剣を手に持った。


 掌サイズだったのが、一気に腰の剣の標準的な長剣の大きさになった。アレスが自分で魔力を纏わせた時より、均等に魔力が巡らされているのが見えた。


 その白の剣を手に持ち、アレスはケルベロスに向かった。


「ブヴォッー」

 アレスの勢いに応えるように、ケルベロスも叫び声を上げた。


 そして、アレスに向かって突進した。棍棒を振り回そうとする、ケルベロスにアレスが剣を振った。白く発光しながら、白の剣が頑丈と思われた棍棒を切り落とした。


「え?」

 と、アレスが呟いた。


 僕も棍棒が剣で切れると思わなかった。そして、白の剣の威力を目の当たりにした。白く清く綺麗な心は、どのようなものも切れる。と言うような理由からだと思った。赤の剣よりかは何倍も使いようがある。


 白の剣を下に向けているアレスに、ジークが叫んだ。

「集中しろ。戦っている最中に手を休めるな」



 再度、襲って来るケルベロスに、ジークは応戦するため急いで準備をした。小級ポーションをポケットから取り出すと、剣に掛けた。

 「最高の切れ味」と、呟きながら。ケルベロスなどの中型を狩るためには、剣が先に折れる可能性があった。白の剣ほどではないとしても、切れる剣は必要だった。だから、自作したのだった。


「よし、すぐ行くぞ」

 と、出来上がった剣を構えたジークが、アレスの元に走り出した。



 アレスの目前に迫ったケルベロスに、ジークは割り込んだ。蝿を追い払うように、ジークはケルベロスに壁までぶっ飛ばされた。


「う。痛っ…」

 と、ジークはお腹を抱えるような姿勢を取った。


 が、すぐに何かに気付いた声をした。

「…ん? あれ、全然痛くない。死にそうな怪我をしたと思ったのに」


 それは僕の魔法の効果で、怪我を受けないようになっていた。だから、痛そうだと思う怪我をしても痛くない。ちゃんと実際には折れていないから、気休めになっている訳ではない。


「あーレイの万能魔法のおかげだな……よし、再度行こう」

 と、納得した顔をしたジークが、起き上がった。


 剣も壊れた様子はなかった。小級ポーションにより、剣の強化もされていた。僕のは無詠唱魔法で万能魔法と言う名前ではない、と心の中で指摘しておいた。彼らからしたら万能過ぎる点から同じようにしか、見えないのかもしれないけど。


 ジークは走りながら、アレスに叫んだ。

「大丈夫か、アレス?」


「大丈夫だよ、何とかっ」

 と、アレスが返事をした。


 丁度、ケルベロスと交戦中だった。少しずつだが、ケルベロスに傷を付ける事に成功していた。全ては白の剣による力と、アレス自身の負けない自信からだった。それを見て、安心したジークはすかさず隣に合流した。



「後は、ケルベロス。こいつだけをどうにかする必要があるのだな?」

 と、ジークが一応アレスに確認を取った。


 アレスはジークに素早く返事をした。だけど、剣による金属音で声はもうすぐ、掻き消えそうになった。


「うん。後、これだけだよ」


「だったら、ひたすら切り続けてくれ。私が魔法などで隙を作るから」


「了解」



「アレス、目を閉じろ。【閃光(フラシ)】」

 と、ジークの魔法で辺りが真っ白になる。


 【閃光の雷(フラシ・ライニン)】も使えたが、近くにいるアレスの安全のために、ケルベロスを暴れさせる事は控えたようだった。


 ケルベロスが怖じけている隙に、アレスが大きく切り掛かった。白の剣が片方の足に、鋭い切り傷を与える。

 痛みでケルベロスが叫んだ。そして、跪く体勢を取る。


「グォー」


「行くぞ」

 と、ジークがアレスに掛け声をした。


 それに気付いたアレスがジークと息を合わせるように、一緒にケルベロスに切り掛かった。


 何もかも切る事が出来るアレスの白の剣と、切りやすいように自作したジークの剣は、ケルベロスを最後まで追い詰めた。大きな音を立てながら、ケルベロスは後ろに倒れた。




 僕は手を叩きながら、彼らに近付いた。そうしないと、彼らは僕をまだ認識出来ない様子だったから。


「お見事。いやいや、出来るとは思わなかったよ」

 と、僕はいつも通りの顔で笑い掛けた。


「死にそうだったのだぞっ」

 ジークは怒り顔で、僕にその剣を投げて来た。


 僕が顔を横にずらした事で顔のすれすれを剣は通り、ダンジョンの壁に突き刺さった。


「おっと。怖いね、ジーク……まぁ。元気そうで何よりだよ」


「ははは。本当にいつもらしいレイだね」

 と、アレスがこの雰囲気の中、笑い出した。


 彼も大きく変わったようだった。




 僕はジークにまだ喚かれている中、落ちていたポーションをすかさず収納した。

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