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トラップ多めの宝箱

 第五層のケルベロスを倒した事で、ダンジョンの奥に宝箱が現れた。それは天から光で照らされているように、光を発して僕らを引き付けていた。


 少し不安そうにジークが口を開いた。

「あれが五層ごとに登場する、宝箱と言う物か? あの明らかに怪しそうなやつだ」


 普通ならここで嬉しそうに、飛び付くのかもしれない。だけど、僕らはトラップの危険性をよく知っていた。実際に経験した事はまだないとしても。


「そうだね。トラップ多めで、宝も多めの宝箱。どちらがいいのか分からないよ…」

 と、アレスが呟いた。


 その目はやっぱり不安そうである。それは初めて体験する、ダンジョンの宝箱だからかもしれない。


 僕は彼らを安心させる言葉を掛ける事にした。

「それは分かるよ……だから、こそ、アレス。行っといで」


 突然指名されて、アレスは唖然とした。

「え? だからこそって何だよ、レイ…」


「そうだ、レイ。私でも嫌だよ。そんな事言われたら」

 と、ジークも同じような反応を見せた。


 僕は理解しない彼らに言った。自分でも結構無理な考え方であると、認める。

「だって、どの道死ぬ事はないのだよ。怪我をする事も、魔法を受ける事も…なら、怖いものは何もないだろう?」


 アレスは僕を見た。その瞳は何とも言えない。見下しても、冷たい目でもない。ただ困り果てているようだった。

「言いたい事は分かるよ。だけど、怖いのだよ…幾ら無敵になったとしても、その恐怖は払拭出来ない」

 と、自分の中の思いを、アレスは言葉にした。


「なら、それも魔法で消せるよ。回復魔法を使えば、いかなる場でも冷静さを維持出来る」


「いやいや、それは自分の心に嘘を付いているだろう? 表では治っているとしても、奥はまだ怖がっているまま。下手をすると、悪化すると思わないのか、レイ?」

 と、ジークが反論した。


 僕はその気持ちさえ、自然に治す時間がなかった。何故なら、狩りをしないと家族が死ぬかもしれないから。だから、彼らの言いたい事は分かるとしても、僕とは違う点があるようだった。


「そう? 僕は回復魔法で精神面を治しながら、魔法と剣を使って、魔物を狩っていた。それは自分達のご飯だった。だから、休む時間さえなかったよ…」



 僕がいきなり告白した事で、彼らはただ僕を見つめていた。もしかしたら、それは彼らには信じがたい事なのかもしれない。


「レイがそんな状況だったとは、知らなかったよ。家族は今はもう大丈夫なの?」

 と、アレスが家族の心配をしてくれた。


 僕は笑みを浮かべながら、返事をした。

「うん。家の近くのダンジョンを完全に攻略した事で、家計が危機的な状況にならなくなった。だから、家族も少しは贅沢が出来るようになったのだよ」



 あの時は大変だったな、と僕は当時の事を思い出していた。あれは大変だった。それと比べて、ここはまだやりやすい場所だった。


「そこは何ともレイらしいな」

 と、ジークが笑い出した。



 わざわざ攻略してしまう人は中々いないからだろう。


 しようと思っても出来ない人が多いから。



 でも、攻略しても僕を「劣等のレイ」と呼ぶ人はまだいた。僕の事を知ろうとせずに、ただ下にい続けて欲しいと思う人々は。




 自信を持った僕らは、三人で宝箱に向かった。

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