休憩は忘れずに
「お菓子いる?」
と、僕は笑いながら彼らに聞いた。
「いや、いいよ。吐きそうだから…」
と、アレスが口を押さえるフリをしながら、言った。
それには、ジークも同じような顔をしていた。
やっぱる狩った後は、食欲がないのだろう。なら、ゴブリン狩りの祝いに何を上げようかな、と思った。
僕は彼らに聞いてみた。
「ゴブリン狩りに成功した事だし、何を祝いに上げたらいい?」
「何だ、それを気にしていたの? 僕らはその想いだけでもいいよ」
「そうだな。ここまで教えてくれる人はいないから」
と、彼らは何とも遠慮がちだった。
「分かった。なら、今日はどこまで進むたい?」
「どこまで行けるの?」
と、逆にアレスが聞いて来た。
「二層。だから、第五層に行くと宝箱があるよ」
ダンジョンには五層ごとに、宝箱が設置されていた。それは挑戦者を楽しませるためにも、あるのかもしれない。最後にはダンジョンのボスがいて、それを倒すと一番豪華な宝箱か、ドロップ品が落ちている。
「最後まで行けたら行きたいけど、やっぱる大変だよなぁ…」
と、ジークが呟いた。
「それをしたら、夕飯までに帰れない。それに生きて帰れる可能性は低くなるよ」
僕の言葉を聞いた二人は、目を閉じて考えた。
「それなら、今日は一旦終わろうかな。疲れてきた事もあるから、万全な状態で明日にでも、挑む?」
と、アレスが提案した。
僕らはその意見にすぐに同意した。まだ体力や魔力があるとしても、知らない所で体への負担があった。
僕も同意した。
「それが一番いいね」
「よし、帰ろう……と、思ったけどどうやったら帰れるのだ?」
と、ジークがいい所に気づいた。
「全ては僕に任せたらいいよ」
僕は転移魔法を発動させた。瞬く間に、ダンジョンの入口付近に現れる。これが使えない人は、攻略している所から自力で戻る必要がある。僕は故郷でこれを使って、狩りをぎりぎりまでしてはすぐに家に帰っていた。
「おっと、一瞬で帰ってきたな。これもレイの魔法だなぁ」
と、ジークが周りを見ながら、呟いた。
「おう、終わったか…」
僕らを見つけた、衛兵が声を掛けて来た。その顔は安全そうな僕らを見て、安心したようだった。
その様子から、今度も転移魔法はダンジョン内だけで使うと思った。もし、何かあった時に助けを呼んでくれる人がいる。ソロで怖いもの知らずな、もの以外は。
「はい。心配をお掛けしました。次は気を付けたいです」
と、僕は言った。
すると、衛兵は頭を左右に振った。
「いやいや、大丈夫だ。学生だとしても、やっぱりダンジョンで安全かは気になるからな。ベテランでも怪我をするものを見ていると、やっぱりな…心配してしまうのかもしれない。お前達は強いようだな」
「まだまだ、です。だから、これからもよろしくお願いします」
と、アレスが衛兵に小型ポーションを渡した。
衛兵は受け取ると、嬉しそうな顔をした。
「ありがとうな。これだけでも、お前達には大切な物だと思う。だから、大切に取っとくよ」
と、ポケットにそっと入れた。
「今後も頑張れ。一応、先輩として応援しとくよ」
衛兵は、僕らに手を振ってくれた。彼は衛兵として、ダンジョンに来る人との付き合い方をよく知っているようだった。
「今日はありがとうな、レイ」
と、ジークが言って来た。
僕はジークに聞いて見た。
「また、明日に会おうな……ジークは家がどこかにあるのか? 寮じゃないようだったから」
ジークは頷いた。
「うん。家なんだ。だから、逆に寮生活は羨ましいけど。アレスもレイと同じで寮なのか?」
と、アレスを見た。
「そうなんだ。レイとは隣人。僕の家は学園から遠いから、寮に住む事になった感じ」
そうか、とジークは少し憧れるような目をしていた。
僕らはまた明日会う事を約束した。万全の体調で、さらに強敵と挑もうと言う事になった。
やっぱり、ゴブリンはちょっとやり過ぎたかもしれないのだった。




