入学式 2
「俺達の代でも、奇跡を起こせるかもしれない」
「きっと楽しい学園生活が待っているのだ」
と、周りの少年達は、学園長の挨拶に感激したようだった。
だが、僕は学園長の挨拶をすぐに受け流した。そして、アレスもそこに参加している様子はなかった。
僕からすると公平などと言う言葉を入れている時点で、学校内の問題を把握していないのでは、と聞きたくなった。だから、何も知らずに周りに影響されて、拍手を送り続ける人々は見るに耐えなかった。自分自身が本能的に彼らを嫌っていた。
「…レイ、大丈夫?」
と、僕の顔の異変に気付いたアレスが言った。
僕は彼らが憎い。そして、理解出来ないし、しようとも思わない、などと言える訳がなかった。
素早く表情を柔らかくさせてから、僕はアレスを安心させた。
「ごめんごめん。ちょっと気分が悪かったから。けど、今は大丈夫だよ」
と、何とか言い逃れた。
僕はこちらを見ているアレスと、少年の視線を無視した。
その後、王様のご挨拶や教員紹介の後、眼鏡を掛けた少年が台に立った。
腕に巻かれた黒色の腕章に、白い三叉槍が描かれている。
決して平和そうではなく、少し物騒な気もした。
「ご入学おめでとうございます、新入生の皆様。大半の人々は私が何者かが分からず、不安であると思います。が、学園生活を通して、この腕章を付けた生徒をこれから、何度も見る事になると思います」
と、少年は自分の腕の腕章を指した。
彼は全員を一度眺めてから、話し続けた。
「私はジーク・アーネスト。特別委員会の委員長を務めています。特別委員会とは、学内の風紀や治安を取り締まる役目のある、人々の事です。新入生の数人とはお会いする機会があるかもしれません。が、私としてはお会いしない事を願っています」
ジークは次会う時は、取り締まる事になるでしょうと暗に言っていた。それ以外の事で会うなど、考えられないから。
僕は特殊で謎に包まれた特別委員会を知るためにも、無詠唱魔法で彼の心の声を聞いた。
その時、彼の瞳が一度変化したのを感じた。
ジークは何かが起きたと思ったが、勘違いしたと処理していた。
最初の台詞を本心に言い換えると、
『また新たに遊べる者達が入って来た。この中で何人が楽しませてくれるのだろうか。学園生活ではこのジークを拝んで、小さく震える事だな』
と、彼の中身がだだ漏れであった。
ここまで変わるのかと思うと恐ろしい。彼は自分が好き過ぎて、自信があり過ぎる者のようだった。
次に二つ目を聞いて見た。
『我が名はかの名家アーネストのジークと言う者。偉大なるこの特別委員会の委員長を、先生方から信頼されているから、任せられている。俺の意見と合わないやつなど、全員滅んでしまえ。精々黙ってその日まで、待っている事だな』
僕は怖っとしか、述べられない。
それ以上に相応しい言葉と言えば、小悪魔や、破滅の委員長としか言えない。
こう言う者ほど、破壊する時を見届けたくなる。正直言えば、不可能だけど。僕としてはまずは認められるだけで良かった。全てはそこから始まるから。
ジークは拍手の嵐の下、台を降りて席に戻った。
そこから入学式が最後まで行われると、魔法の実力試験へと移る事になった。
この結果一つでその後の人生が大きく変わると言える。