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魔法科のコセール先生

 魔法科の扉を開けると先生方は疎らだった。まだお昼時でもある事から、どこかに行っている先生が多かった。部屋は先生ごとに机が区切られて、各自のスペースが完全に設けられていた。彼らがお互いを干渉しない、と言う意味もありそうだった。


「少年。どうしたのだい?」

 と、一人の女性教員が声を掛けて来た。


 僕は受けた事がないけど、先生の一人なのだろう。先生を示す黒いローブで体を覆っていた。魔女のような帽子も被り、肩か足元に黒猫がいれば完璧だな、と考えた。


 だが、それもすぐに打ち消した。


「コセール先生はいますか?」


「あぁ。コセールね。奥にいるよ」


 と、その女性は奥を指差した。


 その姿から先生間の仲は、案外いいのかなと思った。




 僕が奥に進むと本や書類に塗れた、コセール先生がいた。何かを真剣に読んでいるようで、僕を見ると一回目をぱちぱちさせた。余程、真剣に読み込んでいたのだろう。一瞬、その仕草が面白かった。コセール先生も少し反応が遅れていた。


「…あぁ。レイか。どうしたのだ?」

 と、コセール先生は僕を劣等生として、見下す事を言わなかった。


 僕は何かを言うより先に、鞄からマークスさんから渡された本を取り出した。

「マークスさんからコセール先生に、と言われました」


「マークスか。私が頼んでいた、魔法書だな。うむ、ありがとう」

 と、僕に普通に感謝を述べて来た。



 僕はコセール先生の機嫌がよさそうなので、質問を聞いて見た。

「コセール先生は、マークスさんと同級生なのですか?」


「あぁ。そうだ。あいつとは、魔法専門学院で同じだったのだ」


 ーー魔法専門学院。大学院のようなイメージがある。


「魔法専門学院とは、どのような学校なのですか?」


 コセール先生が僕を見た。

「知らないのか? この王立魔法学園の後に、もっと専門的に学びたい人が行く所が、魔法専門学院だ。アレスなどなら、行けるかもしれない。が、レイは分からないな」

 と、知らない事を聞く事が出来た。


「魔法専門学院ですか…どうしたら行けるようになるのですか?」


「魔法の腕に自信がない者は、ダンジョンで自分の腕を磨くのだ。私も学院では、よく遊びに行っていた」


 ダンジョン。

 魔物狩りで楽しむのは、面白い娯楽である。


 僕は教師の面からどう思うか知りたいので、聞いて見た。

「ダンジョンは危なくないですか?」


「いや、ダンジョンにはフロアがあるから、自分のあったのを選ぶのだ。ちゃんと外にも非常時に駆け付けてくれる、ダンジョン専属の衛兵がいる」


 僕は面白い話を聞いた後、コセール先生に感謝してその場を早々と去った。彼がまた態度を変える前に。何故か終始、反応があまりなかったけど。




「あれ? 私は何をしていたのだ?…」

 と、コセールが辺りを見回した。


 自分が何かをしていたのか、分かっていないようだった。

 欠伸をするとコセールは、肩を回した。手元に一冊の本があった。


「うん? マークスからいつの間にか、本が届いていたのか…気付かないとは、疲れ始めているのか」

 と、窓の外を眺めた。


 コセールの足元には、ダンジョンについてのガイドブックが落ちていた。




「ジーク様まで()()させる、劣等生には()()を与えよ」

 と、陰から誰かが囁いていた。



 だが、誰かの耳に届く事は決してなかった。

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