悪戯顔の委員長
ジークが僕に微笑んで来た。少し悪戯顔でありそうな、そう言う顔だった。
「レイ。約束を忘れてないか?」
と、更に近付いては、顔を横に傾けた。
僕は少し考えて、すぐに何の事か理解した。特別委員会の委員として教えて欲しい、と僕が言っていた事を思い出した。
「あぁ。そんな事を言っていましたね…どうか、よろしくお願いします」
僕の言葉にジークは嬉しそうに頷いた。彼は僕にそう言われたかったのかもしれない。
「それでいい。まず、特別委員会は何をする委員会だと思う?」
「学園での取り締まりなど…?」
ジークは頷いた。
「そう、たったそれだけ。なら、それを行うには何がいる?」
僕はそれだけなのか、と思ってしまった。
「…力。だから、魔法が使える人」
と、気付いた。
ジークが瞳を輝かせた。
「そうだ。よし、今からチャレンジだ。レイの初任務、開始」
と、ハイなテンションでジークが言った。
「え? 今からか…」
僕の反応に、ジークはただ頷いた。
アレスも驚いた顔をしていたが、何となく理解しているようだった。
僕は仕方ないとして、頷き返した。今はジークが上司、委員長である。
その悪戯顔はどうにかして欲しい。
学園を歩いていると、ジークが囁いて来た。
「あそこは、どうだ?」
僕はジークが言う方を見ると、劣等生達と、優等生達が衝突し掛けていた。何とも嫌な場面である。劣等生のリーダー、ザックもいた。ジークの顔を見ると、何を考えているのかが分からない。こう言う時だけ何とも嫌な男だ。
「言ったらいいのだろ…」
と、僕は呟いた。
ジークは嬉しそうな頷いた。
「そうそう」
本当に嫌らしい、目だ。
僕は仕方なく、そちらの方向に足を運んだ。
「特別委員会だ。どうした」
と、僕はわざと無愛想に接した。
どちらの集団も今は僕の味方ではないから。何とも行動しにくい。だからと言って、以前まで仲間だったザックの方と仲良くする訳にもいかない。
どちらの集団からも、僕が注目される。優等生の方はムカついているようで、ザックらは気不味い様子だった。
「何だ、劣等生か。今噂になっている、ジーク様を打ち負かせていい気になっている奴だな」
と、優等生の一人が吐き捨てた。
何とも心に突き刺さる、一言だった。
「あぁ。レイか…」
と、ザックが視線を下げた。
優等生が最後に言った。
「お前の居場所などない、立ち去れ」
僕は委員として、去る訳にはいかないので言い返した。
「特別委員会の委員だから、それは出来ない」
「生意気だぞ、この劣等生。劣等のレイが」
と、優等生が一人が僕に襲い掛かって来た。
上級生である優等生は杖を取り出すと、僕に向けて来た。反対側にいるザックは、何も出来ずに立ち止まっていた。ここで横に入れば、重傷を負う可能性がある。劣等生は優等生と対等にまだ戦えないから。だから、僕は彼の行動に何も思わなかった。それが普通である。
「【我を邪魔する者を跪けさせろ。魔法の土】」
その詠唱で、地面から魔力の腕が現れた。僕は何も言わずに、無詠唱魔法で地面に盾を生み出した。僕の盾で腕は、押し潰された。
「何!?」
と、彼はいい反応をした。
ザック達も見た事ない僕の力に驚いていた。
「詠唱してないのに、あの力…」
「まあまあ。問題は起こすな」
と、何ともいいタイミングでジークが現れた。
それにより、優等生達は引き下がった。
「いい気になるなよ、劣等のレイ!」
完全に僕が悪いと思いながら、散って行った。
それに気付いたザックがこちらを見た。
「何をしたか知らないけど、まだ信用していない……行くぞ」
と、引き下がって行った。
「あー。言っちゃった」
と、ジークが呑気そうに呟いた。
僕にはその言葉がよく届いた。




