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委員長の思い

 アレスは僕の関係者と言う事で、残る事が出来た。


 だから、僕はアレスを近くに呼んだ。僕の意図が分からないアレスが躊躇おうとしていたので、僕は仕方なく声を掛けた。


「そんなに気にするな、アレス。ジークは僕達の仲間と言えるよ。それにアレスが必要だから」


「何だ、レイ。()を教えないのか?」

 と、ジークが言った。


 それで僕はジークがアレスの前でも、信用している事を知った。まだ、口調がさっきのままだった。


 その事に気付いたアレスが首を傾げた。

「僕?」


「あ…」

 と、アレスに言い忘れていた事をジークは気付いたようだった。


 だから、僕は短くアレスに教えた。

「彼は信用出来ると、断言するよ」


 そう僕が言うと、アレスは納得する顔をした。

「レイの事は正しいと思う」


「え、それだけで信用出来るのか?」

 と、さらっと信用されて一切疑われない事に、ジークは驚いていた。


「ジークは疑われたいのか? そんな事にいい事はないよ」


「それは分かるけど、いいのか?」

 と、何故かジークの方がこちらを心配していた。



 僕はジークに一つ聞いた。

「なら、何故力を求める? 何故、僕に協力して欲しい?」


 聞かれないと思っていたようで、ジークが今度は酷く動揺した。

「…大した理由ではない。それは魔物から人々を守るための力が欲しい。だけど、このままでは勝てそうにない。だから、レイに協力して欲しい」

 と、案外ジークらしい理由だった。


 それが決して復讐のためなどではなく、ただ人々を守りたい。守る側は守られる側より、力が必要である。

 その事は彼はちゃんと理解しているようだった。そこまで言われたら、付き合わない理由はない。それは彼がどれほど真剣か、は顔を見たら分かる。

 それを打ち明けてくれただけでも、彼の決意は分かった。


「分かった。アレスもいい?」


 アレスは頷いた。

「僕もそのためならいいと思うよ」



 ジークを見ると、僕は言った。

「ジークは僕の力を望んでいるようだった。だけど、僕の力は無詠唱魔法。ここでは魔法と呼ばれる、詠唱魔法が得意なジークを教えるのは出来ない」


 突然の告白にジークは慌てた。隣のアレスも驚いていたが、その顔は何となく理解しているようだった。


 僕はまだ言うつもりではなかった。けど、向こうが教えてくれたからには、こちらも言える事は言った方がいい。それに大きな秘密と言うほどでもない。ただ打ち明けるタイミングを図っていた。


「無詠唱魔法? でも、それは余り使えない力なのではないか」

 と、ジークが指摘した。


 それが、一般常識である。だけど、僕の力にはそれが余り通用しない。言葉で説明しても分かりにくから、僕は実際に見せる事にした。




 無詠唱魔法の身体強化を発動させた。


 すると、瞬く間に僕はジークの後ろまで回った。そして、肩を優しく叩いた。力強くすると、相手が驚き過ぎるかもしれないから。


「わっ…」

 と、いきなり背後に現れた僕に、ジークが悲鳴を上げた。


「これが僕の力。でも、詠唱魔法の使えるジークやアレスは相性が悪いと思う」


 復活したジークが言って来た。

「って言うか、本当の力を隠していたのか?」


「これを使ったら、決闘にならないからな。一瞬で戦いが終われば、ジークのプライドはずたずただろ?」



 その事に気付いたジークが、下を向いた。

「あぁ。そうか、それを忘れていた……でも、アレスがいきなり新しい技を使っただろ? あれはどう説明するのだ?」


「何も大きな事ではないよ。ただ、ジークらが使う詠唱魔法には、無駄が多いと思ったのだ」


「無駄?」

 と、怒るより知らない事に対して、ただジークは疑問を述べた。


「そう。だから、詠唱魔法は省略出来ると考えた訳。それを実際にアレスが実行した。それに、魔物と戦っている時に、長い詠唱をしていたらどうなると思う?」




 考えるより先に、ジークは答えた。


「死ぬ」



「うん。だから、いらないものはいらないと言う訳。ジークでも工夫すれば使えるようになるよ。だから、僕はアレスを呼んだのだ。自分よりいい先生になれるから」


 ジークはアレスを見ると、頭を下げた。

「よろしくお願いします、先生」


 突然、頭を下げられてアレスは困り果てていた。

「え? あっちょっと待って下さい。そんな先生と言われるほどではないです」



「いやいや、僕に取ったら先生です」

 と、ジークは言い続けた。

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