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委員長と劣等生の委員

 再度ジークと戦うと言う事もあり、僕としては余り嬉しい話ではなかった。

 ただ厄介な事が増えて、背中が重くなる一方である。だが、自分で言ったからにはその約束は守る必要がある。


 そう思いながらも僕は違う事が気になった。だから、目前で待ち構えているジークに聞いた。

「そんなに戦って、時間は大丈夫なのか?」


 魔力の有無より、その時間の方が気になった。特別委員会は入学式でも見た。それに普段からよく校内を歩き回っている。それ以外の事はどう賄ってるのか。どうしても気になるものである。


 だが、ジークは特に驚いた様子さえ見せなかった。顔色、表情さえ一つ変えない。それがあたかも普通であるかのように。


「真剣に聞いて来たと思ったら、それなのか? そんなの、全て免除されるのだ。でないと、活動が出来ないだろう」

 と、言い放った。



 僕はジークの言葉に不安になった。本当にそれで大丈夫あのだろうか、と。


「勉強はどうするのだ?」


「最初からもう卒業出来るほどの、才能がある人が選ばれるのだ。だけど、レイ。お前は少し異例である…」

 と、ジークは言葉を一度切った。


 僕はそんな事より、あの気持ち悪いほどのジークの信者(部下)が、そこまで賢い事に驚愕した。

 それは、魔法の才能はここでの常識からすると、あるかもしれない。けど、やっぱり信じられない気がした。


 性格が悪過ぎても、才能があれば選ばれるなんて何とも悪い制度だった。そんな者達と同じ輪に入って仕舞った事に、今更気付かされた。

 幸い、免除されるのなら僕がもう嫌な授業に出る事はない。



 突然、ジークが大きな声で笑った。僕の意識は一気に現実に戻される。


「何せ、劣等生であるにも関わらず、特別委員会の委員長を負かせたのだ。私は劣等生である事に今はもう、気にしない。だけどそれは学園で一番才能があると、認められた事と同じである。だから、レイでも同じように免除される。いや、されないとしても私が自分のプライドのために、何としてでもさせるだろう」


 そこで僕は自分が仕出かした、事の大きさを知った。なるほど、本来ならこのような事など起こり得るはずのない、事だった。

 だけど、僕はそれをしてしまった。だから、仕方ないとしても特別委員会に迎える事になった、と。



「武闘祭には出ないといけないのか?」

 武闘祭は授業とは違うので、どうなるのか気になった。


「本当ならお前に参加をさせたいよ。どのように試合をぐちゃぐちゃにするかが、今でも想像出来る…だけど、無理だ。委員は全員警備に当たる必要がある。王様が来られるからな」

 と、少し残念そうにジークは言った。


 ここだけ、本当の本当に残念そうな表情を作っていた。


 王様が来られる。それは学園に取ったら一大イベントだろう。そこで何かあれば当然、物理的にトップの首を飛ばされる。だから、近衛兵がいるとしても学園側に最大限警戒体制を敷かないと、いけない。

 そのために、普段から学園で取り締まりをしている、特別委員会が駆り出される。

 たとえ、劣等生であると使える者は、最後まで使われる。全てそう言う事だ。



「そうか…」


 そう僕が言うと、ジークがこちらを見た。

「お前は授業に出たかったのか?」


 僕は頭を横に振った。

「いや。あんなもの出ても、面白くない。どうせ、虐げられるだけだ。ただ、する事が分からない。特別委員会の委員として」


「なら、このけっと…いや、訓練が終われば教えて回ろう」

 と、思ってもいなかった言葉をジークは述べた。


 僕は特別委員会の彼として大丈夫なのか、気になった。が、対等に接してくれるジーク以外だと、ろくな事を教えてもらえないかもしれない。だから、僕はそれを頼もうと思った。訓練を決闘と言おうとした事は、今回無視する。


「分かった。でも先にする事がある」


「そうだな。何よりもする事が先にあるな」

 と、ジークが笑みを浮かべた。


 やっぱり、彼はただの魔法馬鹿と認定してもいいかもしれない。よく性格がころころ変わる、人だ。





 戦う直前、ジークは小さな声で呟いた来た。観客は聞こえないように、わざとその大きさにしてくれているのだろう。


「おい、レイ。ため口になっているぞ」

 と、上級生らしく忠告して来た。


 が、その顔は何とも遊んでいるようだった。


 僕は更に口調を崩した。

「それがどうしたのだ? 嫌か?」


 ジークは笑った。

「それでいい。()はこれまでそのような仲間がいなかったのだ。だから、嬉しい」

 と、ジークは彼らしくない口調で言った。


 僕は一瞬唖然とした。どこまで彼は変わるのだろうか。それに本当のジークはどれなのだろうか。もしかしたら、彼は色んな自分を演じる事で本当の自分が分からなくなったのかもしれない。



 ジークはそんな僕に更に、言葉を付け加えた。

「それに()は、何か別の力を持っているようだ」

 と、僕を直視しながら言った。


 ジークが僕の様子を全て見通している、目をしていた。何ともいい観察眼を持っている。僕は動揺しながら、それだけ考えた。だが、本来はこう言う事が起きると、僕は理解していたはずだ。でも、実際に経験すると予想を遥かに超えていた。


 何も返さない僕に、ジークは続けた。

「何故、と思った? それは入学式の時と、授業の時とで君の使った魔法が違ったからだ。同じ詠唱をしたにも関わらず。だから、そこには何か別の()が加わったとしか、思えない」

 と、何とも論理的な考え方だった。


 特別委員会には情報が素早く伝わるのだろう。それか最初から監視対象として、見られていたのかもしれない。


 だが、僕に何をしたいのかが分からない。ジークは僕を動揺させたいのか。それても、ただ僕を見るのが面白いのか。

 僕は警戒しながら、聞いた。


「何をしたい?」


「そんなに警戒する必要はない。ただそれを教えて欲しいのだ」



 僕はジークが理解出来なかった。


 が、彼の協力がないと、この学園では居場所を完全に失う。

 だから、出来る限りまで、手伝う。

 でも、悪事には絶対に加担しない。ジークなら悪事でも、自分が関わった証拠は一つも残さないだろう。


「いいよ。だけど、まずは部外者を遠ざけてくれ」


「それは絶対にする」

 と、ジークはすぐに委員に観客を、追い出させた。

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