表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/133

賢者と委員長

 アレスは競技場に行くまで、僕に愚痴を言っていた。彼にはそのような事を言う、雰囲気がないので面白かった。提案したのが僕なので、僕は最後まで聞き続けたけど。


「本当にレイ。何で僕にジークと戦わせるの? したい事は分かるけど、何で僕なのさっ。もう、嫌だよ。対人戦なんてやった事ない上で、特別委員会の委員長と戦うなんて…僕をわざわざ名指しすると言う事は、何かしたい事があるのでしょ。いいよ、レイ。もう分かった。友達として戦う。だから、負けたら後は頼むよ」

 と、泣きそうな目でアレスは両腕を振った。


 彼は今にも叫びたいのだと、僕は分かった。


 何と返せばいいか分からず、空笑いをした。

「ははは。本当にごめん。でも、最初から負けると思うなんて、そこはアレスらしくないよ」


 アレスは僕を真っ直ぐ見た。

「レイは僕がジークに勝てると思うの。そんなの無理だよっ…」

 と、アレスはいつまでも弱音を言っていた。


 だから、僕はアレスの両肩を手で握った。

「大丈夫。だって、アレスだよ。僕の友達が負ける訳がないよ。僕がジークに勝てたと言う事は、アレスも勝てると言う事」



 アレスは顔を横に向けた。少し不機嫌そうだった。

「それはレイが特技を持っていたからだよ……僕は何も出来ない。上級生で一番成績のいいジークに、勝てる隙など」


「いいや、それは違う。アレスはまだ隠された力が秘めていると僕は信じるよ」


 僕の言葉にアレスが笑った。

「秘められた力なんて、そこはレイらしいよ…仕方ないな、そこまで言われたらするしかないじゃん。分かったよ、レイのためにも」


 やる気が出たアレスに僕は一つ言った。

「…魔法の詠唱は出来る限り、縮めて見て」


「え? 何で、レイ?」


「ただ、それをすればアレスの勝利は確実なものだよ」

 と、だけ僕は呟いた。



 ジークとの決闘から詠唱魔法は、飾り付けが多いと気付いた。だから、長さを縮めてもする事がはっきりしていれば、魔法は発動されると思った。


 僕自身の魔法も、詠唱は一言で短いから。それで僕は魔力の節約を行えていた。長い詠唱をしていたジークは、魔力を必要以上に消費しているようだった。

 だから、その一つだけでもアレスの戦いは更に変わる。と、僕は確信していた。





 委員長のジークと、賢者のアレスの戦いは言葉を何も言う事なく、始められた。特別な二人が戦うと言う事もあり、観客は沢山集まっていた。


「【対象へ、火球(フレマ・ボル)】」

 と、アレスは僕の言ったように短い詠唱を行っていた。


 アレスが僕の友達と言う事もあり、ジークはその事にさほど驚きは見せなかった。が、一瞬だけ眉を上げるのが見えた。


「ほう。 レイと同じように不思議な事をしている。だが、私も二度負ける訳にもいかない」


 ジークは感心しながら、杖を取り出すと意識を集中させた。

「【我が前に現れよ、大きく力強い水の槍よ。あの者の魔法を撃ち落とせ。その力を見せるように】」

 と、アレスの魔法に対抗する水の槍を生み出した。


 ジークの水の槍は、アレスの火球を見事に狙い撃った。


 が、撃ち落とす事にはならず、まだ火球がジークに向かっていた。


 そこでジークは慌てて新たな魔法を発動させた。

「【我が身を守り、その力を見せよ。全ての者に。魔法の壁(ア・ブロク)】」


 ジークは魔力で壁を作る事で、アレスの攻撃を防いだ。そこは上級生として、彼が戦いなれているからでもあった。




 遠方からの攻撃が通用しないと知った、アレスは何を考えたのか突然走り出した。


 ジークに向けていただ一直線に。


 その時に気付いたジークは、アレスに向かって攻撃を放った。が、素早く左右に動く事でアレスは攻撃を避けた。彼は直感的に、攻撃が自分の事ではなく座標を目標としていると思ったのだった。

 そこだけでも、アレスの観察力がよく分かる場面だった。


 ジークがその事に慌てている中、アレスはもうジークの近くまで辿り着いていた。そして、一つの魔法を発動させた。


「【魔法の剣(ア・ソド)】」

 と、魔力で作った一本の剣が現れた。


 魔力による煌めきを発する、その剣を手に取るとアレスはジークの首筋に当てた。


 剣を首に突き付けられたジークは、両手を上げた。

「…負けた」



 だが、その顔は全てを出し切った様子だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ