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敗北者と勝利者

 ジークは負けた事に唖然としていた。彼の性格が負けを認められないようだった。だが、負けた事は目の前の様子から、理解していた。


「そんな、ジーク様が負けるなんて……きっと違う。このような事があっていいはずがない」

 と、誰かが言った。


 だが、ジークは圧倒的な敗北に何も言えないようであった。しばらく辺りを静寂が覆った。


「…負けたっ。ジーク・アーネストはレイに負けたのだ」

 拳を握りながら、ジークは言い放った。


 これだけでも彼には、何とも侮辱的なのだろう。でも、彼のもう一つの自分が、言わないと許さない気がしたのかもしれない。喧嘩を吹っ掛けた身として、負けたのなら潔く負けを認める。それが、彼ならではの正しい戦い方なのだろう。


「そんな訳がないです! その劣等生が全て悪いのです」

 と、その誰かが反論した。


 それに釣られて、周りも口々に好き勝手言い出した。だけど、ジークは一言で止めさせた。


「アーネスト家の名を掛けて、私が言っているのだ。負けたものは負けたのだ…だから、これは私と彼の戦いだ。他は邪魔をするな」


 折角見つけた自分の獲物を取られたくなのかも、しれない。が、負けた今は部外者を関わらそうとしなかった。その点だけ、正しい事を理解している。他が入っても、卑怯でしかならないから。周りはまだ騒いでいたが、もうジークは耳に入れていなかった。


 ジークは僕を見た。

「それでだ、レイ。お前を特別委員会の委員に命じる。これは特別委員会の委員長、ジーク・アーネストの名においてだ」

 と、厄介な役職を振られる。




 僕は恐る恐るジークを見た。更に面倒な事になるのは嫌なので。だけど、聞かない訳にはいかないので、聞くのだが。


「拒否権は?」


「お前は劣等生のくせに、ジーク様の判断を拒否する気なのか?」

 と、誰かが叫んだ。


 耳に響く声で、僕は頭が痛くなりそうになった。彼らも僕が委員になるのは嫌だけど、ジークの決定なので嫌と言えない。だから、いい気をしている僕に喧嘩を売るのだろう。


 隣で笑い声が聞こえて来た。その場にいたジークが、何故か笑い出していた。


「面白い。ここまで言って来る、劣等生などいなかったぞ。初めて、私の()が出来たな。レイ。お前には残念かもしれないが、断る事は不可能だ」


 これまた物騒な事をジークは言った。僕を彼の敵認定されたら、今まで以上の厄介事に巻き込まれるだろう。本当に少し力を見せるだけで、これなんて先を考えるのが嫌になる。


「…分かりました」




 これで僕も半ば優等生(彼ら)の仲間入りである。


 折角仲間になった劣等生(彼ら)とすぐに別れてしまう事になるとは、何とも寂しい。

 でも、自分の目標のためだから仕方ない事と言えるかもしれない。


 いつの間にか僕は友達や仲間と言うものの、大切さをこんな学校でも学んだらしい。全てはアレスが変えてくれたのだろう。


 だから、彼に()()があるとは言わない。

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