自分を信じる者達
再度、競技場に顔を出すと沢山人が集まっていた。
ジークの事だから、部下がわざわざファンを呼んだのだろう。僕を笑う人が多ければ、面白いと言う事もあり。そして、僕の事を応援する人はいない。と思ったけど、よく見ると食堂のイーシアさんと司書であるマークスさんもいた。こう言う一大イベントの時は、抜けてもいいのかもしれない。
僕の隣にいたアレスが、肩を置いて来た。
「頑張れ、レイ。僕は大丈夫だと思う。先程のクラスの事もあるから、何となく安心出来る」
流石、隣人で友達である、アレスは僕をもう信じてくれていた。いつの間にか、彼とは太い絆で結ばれていたのだった。
「それに、レイなら色々得意技を持っているようだから」
と、アレスは付け加えた。
一人で孤独な戦いが始まると思っていた僕は、嬉しくなった。
それを察したアレスが、僕に笑い掛けた。
「だから、応援しているよ。レイ」
本当にそれは僕が聞きたかった言葉であった。僕の友人のポストは、もうアレスしかいないだろう。故郷では両親が耐えるのよ、としか言わなかったから。僕はいつの間にか、我慢する事しか知らなかったのだろう。そして、それが普通の事だと思っていた。
今なら、よく分かる。異質な人で誰からも嫌われるとしても、自分の事を理解してくれる人は必ずいる。誰かが常に陰から見守り、応援してくれていたのだった。何で気付いていなかったのだろう、と僕は少し考えた。
「ありがとう、アレス。僕の勝利を見届けて欲しい」
「任せてくれよ。それは友達としての役目だから」
と、僕らは軽くハイタッチをした。
今度は背後を振り返る事はなかった。もう、一人で前に進む事が出来た。
僕が立ち位置に着くと、ジークが笑った。
「逃げ出さないだけ、お利口じゃないか? 劣等のレイ。新入生の劣等生よ」
と、最初から僕を劣等生と言う。
特別委員会の関係者は全員そう言う集団なのだろう。何とも悪趣味な奴らで、学園。そして、社会の魔法技術を極度に下げている者達だ。自分の事に酔っていて、相手をどこまでも見下す。親が権力者で何をしても、怒られる事がない。
「それはありがとうございます。特別委員会の委員長である、ジーク様にお褒め頂けるとは、何とも光栄です」
と、僕は無難な事を言った。
爪が手に食い込むほど、ジークは拳を握った。余程侮辱的だったと、よく理解出来た。自分の部下でもない、逆に見下している相手から、ここまで言われたからだろう。
深呼吸をしたジークは、次に無敵な笑みを浮かべた。弱点を何としてでも見せないのは、彼のプライドからだろう。
「それは、ありがたいな。余程、お前は死にたがりやのようだ……何ともこの決闘が楽しそうだな」
「はい。そうですね」
ジークはまた耐えれなさそうな、顔をした。こう言う気分になる事は、本当に久しぶりなのだろう。感情の解放の仕方を、分かっていない。
「早く、始めようではないか?」
と、僕に笑い掛けた。
それは先程とは変わらないように見えるが、僕は違うとよく分かった。彼が動揺していると、目を見て分かった。
それに、目の奥には隠せない怒りが立ち籠る。
「分かりました」




